あらすじ
春。主人公の涼は学園三年生になった。
朝起きて、幼馴染のメメを迎えにいく。
他愛もない会話をしながら、学園に向かう。
いつもと変わらないはずだった日常に、変化が訪れる。
メメと親友の誠は別のクラスとなり、離れ離れになってしまう。
一人だけあぶれた寂しさを感じつつも、隣の席の桔梗と打ち解けていく。
一見、強く凛々しく見えた桔梗にも悩みがあると知る。
柔道のことで行き詰っていると知り、相談に乗るうちに少しずつ桔梗に惹かれていく。
そんなとき、涼はメメの様子がおかしくなっていく事に気づく。
メメと誠は涼のクラスに来なくなり、昼食も別々に取るようになった。
涼が二人の居るクラスに様子を見にいくと、メメと誠が親しそうに接している。
もやもやを感じながらも、その答えを見つけられずにいた涼の元に、メメが現れる。
「大事な話があるから、今日の夜、メメの部屋に来てね」
今夜は、両親が帰ってこないと付け足して。
こうして誘われるのは、初めてのことではなかったが、男女の関係に発展したことはない。
それ以前に、恋人でもない。メメとは、ただの幼馴染。
妙にツヤっぽく、どきどきしながらメメの背中を見送った涼の元に、桔梗が訪れる。
桔梗と下校中、涼は桔梗から告白をされる。
涼が承諾しようと口を開きかけたとき、脳裏に過ぎったのはメメのことだった。
涼は桔梗の告白を断り、心のもやもやの正体と、メメが自分にとってかけがえのない存在だと気づく。
夜、メメの家に向かい、部屋を訪ねると、メメと誠のセクロスを見てしまう。
戸惑う涼だったが、メメと誠が付き合うことになったと聞かされる。
消沈しながらも部屋を去ろうとする涼を、メメが止める。
「何のために涼くんを呼んだと思ってるの?」
メメは、涼の親友だった誠を身体を使って誘惑し、交際を始めていた。
誠と何度も身体を重ねたあと、メメは誠に黙って涼を呼び出していた。
涼と同じく、誠も困惑していた。
涼を傷つけるためだけに利用されたと知る誠だったが、メメの誘惑に屈してしまう。
「……メメの魅力、見せてあげるね
逃げたら、涼くんの家の前でセックスするから」
涼は脅しじゃないと知り、メメと誠のセックスを見せつけられる。
涼は耐え切れずに失意のまま逃げ出してしまうが、帰り道で車に轢かれて意識を失う。
涼が目覚めた時、最初にみた光景は心配する桔梗の顔だった。
元々、治療中だった足の骨折が、事故により悪化。
完治するまでには年単位の治療が必要だと涼に伝え、泣き崩れる桔梗。
涼は何も語らず、ぼんやりと天井のシミを数えるだけだった。
寝取られによって受けた心の傷は深く、目を瞑るたびに、あの光景が甦る。
やがて疲れ果て、無意識のうちに眠っていた涼は、扉越しに響く大声で目を覚ます。
静かに立ち上がって扉の隙間から涼が覗きこむとメメと誠、桔梗の姿が見えた。
涼に魅力を見せつける、今ならどこにも逃げられないと無邪気に笑うメメ。
顔面蒼白で、震えている誠。メメの話を聞いて激怒する桔梗。
あの光景をまた見せつけられる……怯えていた涼だったが、桔梗の恫喝で二人は去っていった。
桔梗は何も言わず、涼を支え続けた。涼が再び、立ち上がってくれると信じて。
だが、涼はそんな桔梗の優しさに溺れていった。
傷の舐め合いだと理解しながらも、幸せだと思ってきた桔梗は、あるとき気づいてしまう。
このままでは、涼はメメのようになってしまう。なんとしてでも、阻止しなければならなかった。
解決の糸口を掴めない桔梗の元に、誠が現れる。
欲望に溺れ、涼を傷つけてしまったことを謝罪する誠に苛立つ桔梗だったが、
何でもするという言葉を聞いて、ある妙案が浮かぶ。
「あなたには、涼を壊した責任を取ってもらうわ。
ある人と付き合って欲しいの。大丈夫……とっても、良い子だから」
桔梗の後輩……二成・千穂(ふたなりちほ)と誠が付き合い初めて、桔梗の計画は始まった。
メメが涼にしたように、同じ方法を使ってメメから誠を奪う。
全ては、涼のために。今度こそ、立ち上がってくれると信じて。
早朝、誠は千穂を連れて涼の家を訪れる。
拒絶する涼に、誠と千穂は土下座し、昼になっても、雨が降り出しても謝罪の言葉を述べ続けた。
夜、誠と千穂の土下座に心を折られた涼は、誠を許したいと感じるようになっていた。
「傘、貸してやる。貸すだけだ。
必ず……返しにこい。約束だからな……」
それからしばらくして、涼は桔梗に連れられて外に出ていた。
途中で目と耳を塞がれ、困惑する涼だったが、桔梗を信じることにした。
目隠しを外された涼が見た光景は、メメの部屋だった。
誠と後輩が情事に及ぶところを、メメに見せつけていた。
怒り狂うメメを、桔梗が取り押さえる。
「目を開けろ!! 鹿目メメ!!
顔を上げて、前を見ろ!! これがお前のした事だ!!」
桔梗の恫喝の果てに、涼は桔梗の意図に気づく。
桔梗がこの舞台を作ったのは、復讐のためじゃない。
自分のした行動は、自分に返ってくる。それを教えるためだった。
桔梗が作った舞台は、『メメが子供から成長するための最後のチャンス』
涼が許してしまえば、メメは何も変わらない。また際限なく甘えてくるだけだ。
泣きながら口先だけの謝罪をするメメに、涼は覚悟を決める。
メメが成長してくれることを願いながら、メメを拒絶した。
数年後、足の治療を終えて帰国した涼は、慣れ親しんだ道を歩いていた。
何一つ変わってないように思えたが、記憶にない裏路地を見つける。
そこで見たのは、三人の男とメメが交わっている姿だった。
メメは変わらないと理解した涼は、その場を去り、桔梗が待つ我が家へと歩き出した。
終わり
- 最終更新:2013-10-05 21:48:43