私の兄弟には、「水子」が一人居ます。水子と言うのは、この世に誕生する事なく、死んでしまった赤ちゃんの事です。
幼い頃から、聞かされていました。
「お兄ちゃんとお姉ちゃんを産んでくれた先妻さんには、水子が居たらしい。生きていたら、お前には、もう一人、お兄ちゃんかお姉ちゃんが居たんだね」
詳しくは母も知りませんでした。私は、「ああ、前の奥さん、流産しちゃったのかな。悲しかったろうなぁ」と幼い頃から考えていました。
精神科医から誤診処方されていた薬を止め、8年半振りに脳が正常に働き出すと、私の中である疑問が生まれました。
「本当に流産だったの?」
先妻さんは、精神病院に入る事になり、幼い兄と姉を育てられなくなったそうです。40年前の話。当時、精神病棟や、精神病患者と言うのは、今とは比べものにならないくらい、冷たい視線を浴びました。
『もしかしたら、その時、堕ろした子では無いのか?』
私は漸っと、父に対し、継続的な感情を抱けそうです。私の兄(姉)を「殺した男」です。
勿論、確認する術はありません。父方の親族とは一切付き合いがありませんし、唯一人生きている姉とて、そんな事は知りません。
しかし、思うのです。
「あの強く高潔な私の母でさえ、父との生活で人格が歪んでいった。並の精神の持ち主なら、過大なストレスで病にもなるだろう」
何故、父は、複数の女性と寝て遊びたかったにも関わらず、一夫一婦制のこの国で、先妻さんと結婚したのでしょう? 何故、護らないのに家庭を築こうとしたのでしょう? 何故、育てないのに子供を産ませたのでしょう。何故、産ませられないのに作ったのでしょう?
堕胎(中絶)そのものを否定はしません。母子共に危険がある場合、母親の命だけでも護ろうとするのは当然の事です。レイプされ妊娠する場合もあるでしょう。その子を産め、等と、私にはとても言えません。罪は男性にあります。DVが余りにも苛烈で、精神を追い詰められ、逃げる事すら叶わない状態で、私はその女性を責められません。
一度、中絶を経験し、深く傷付き、それ以降は行動を改めた方であれば、私にも理解来ます。そういう方なら、ずっとそのお子さんを、手厚く供養して下さるでしょう。
ですが、二度三度と繰り返している方は、申し訳ないですが、理解出来ません。しかも、相手は同じ男性という場合すら。実際の事例です。産婦人科医の手記にありました。
「中学生だから、高校生だから産めない・仕方無い」? 何故、産めないのに妊娠に至る行動を起こしたのでしょうか? 異性と手を繋いだだけで、子は出来ません。自分に子供を育てる人格・経済力があると錯覚していたのでしょうか? どころか、下手をすれば、将来、子供を産めない身体になります。
問題は女性の側だけにあるのではありません。堕胎(中絶)の身体的リスクを負うのは、女性です。男性は、「愛している」と言うなら、どうして「愛する女(ひと)」を危険に晒したのですか?
「愛しているから」等と、嘘を吐かないで下さい。
私は悔しいのです。この世に生を受けても、きちんとご飯を食べさせて貰える子供ばかりではありません。ご飯を食べさせて貰えても、親の八つ当たりの対象としてしか家庭に居場所の無い子供も大勢居ます。
愛さないのに、産んだのですか? 産まないのに、作ったのですか?
私は、その子達を思うと、悔しくて悔しくて、怒りのあまり、涙が零れてくるのです。
2013/03/27 不破 慈
≪追記≫「ハンセン病」をご存知ですか? かつて、病気を理由に隔離・収容され、国策として、有無を言わさず去勢・避妊手術を施され、施設内での婚姻すら禁止された方々が居ます。
「人を愛し、二人の子供を産み、その子も愛し、育む」。
命を、愛を、大切な人を護る。
是非、真剣に考えて下さい。
20130328、不破慈
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