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なっログ!

ファッション、映画、マンガ、グルメとかを浅く広く書いてく雑記ブログ!「なっとく」は全てに優先するぜッ!

『映画クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃』観たので感想書く。

映画 映画-感想
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最近いい夢見てますか?

映画クレヨンしんちゃん最新作『爆睡!ユメミーワールド大突撃』を観てきたので感想書きます。

 

[:contents] 

 

www.shinchan-movie.com

 

あらすじ

ある日、春日部市民は全員揃って「ユメミーワールド」という世界に迷い込むという夢を見るようになる。ユメミーワールドでは誰もが持っている夢玉の力で見たい夢が自由に見られるということで市民たちは毎晩楽しい夢を満喫していく。それから数日が経ち、春日部に貫庭玉サキとその父親が引っ越してくる。そして時を同じくして夢に大きな異変が起きる。楽しい夢を奪われ、ユメミーワールドの外にある悪夢の世界で恐ろしい事態に巻き込まれてゆく市民たち。次第に悪夢しか見れなくなる人が増え、その影響で現実世界も混乱に陥る。(クレヨンしんちゃん 爆睡!ユメミーワールド大突撃 - Wikipediaより)

 

予告編

 

感想(ネタバレなし)

子どもから親まで楽しめる傑作でした。個人的には全クレしん映画の中で5指に入る面白さだと思います。

まず笑い。昔のクレしんを彷彿とさせるひねったものから分かりやすい王道のものまで、幅広いギャグが連発されます。笑いどころは違えど、老若男女問わず笑えるのはすごい。

次にテーマ。クレしん映画には”深いテーマ”がつきものですが、作品によっては演出が薄っぺらかったり押し付けがましかったりしてイマイチ伝わらないことが多かった。従来通り、本作にも複数のテーマがあります。しかも今までのものと比べて”深い”というより”重い”くらいのものですが、しっかりと表現されていたしすごく伝わった。それほど脚本、演出のクオリティが高かったです。

最後に、小さい頃クレヨンしんちゃんを観て育ってきた人はめっちゃ楽しめると思います。昔のクレしんにあった、いろんなものが戻ってきました。その1つ1つがとても懐かしかったし嬉しかったです。

 

お子さんのいる方はぜひ一緒に観てほしい。ガチなホラー要素などもあるので全編通して子ども向けではないのですが、むしろそこが将来「子どもの頃に観ておいてよかった」と思えるポイントです。

詳しくはネタバレありの感想に書いていきますね。

 

感想(ネタバレあり)

子どもから大人までみんなが笑える!

クレしんといえば笑い。それも下ネタやブラックジョークなど、一筋縄ではいかない笑いです。昔から「子どもに見せたくないアニメ」の上位に必ず入っているほど。

 

冒頭の野原一家が見る夢からぶっ飛んでます。

父ひろしはスーパーCEOマンに変身。いきなり劇場内の子どもたちを置いていきます。「サラリーマンは頭下げてもパンツは下げるんじゃねぇ」というセリフ、ツボりました。

母みさえの夢は元カリスマホスト城咲仁と密会。ゲス不倫のせいで主題歌変更されたのに…。「元カリスマホスト城咲仁」を連呼するクレしんらしい笑い、懐かしかったです。

巨大化したひまわりは兄を吸い、しんちゃんはアルプスでななこお姉さんに耳掃除され悶えてます。シロは馬のような体型になっててキモい。この冒頭の夢が後々の展開に活かされる脚本は見事でした。

 

今作はかすかべ防衛隊が中心です。「夕日のカスカベボーイズ」以来ですね。メンバーの笑いも盛りだくさん。

ネネちゃんは夢でアイドルに。オタクに囲まれながらグッド・ナイト・ベイビー(アレンジVer.)を歌うとかシュールすぎ。悪夢パートの熱愛発覚(マサオくんと)で「ちがうの!あれはただのお遊戯なの!」とかもうキレッキレ。後でも書きますが今作のMVPはネネちゃんだと思います。

ボーちゃんもギャグ要員。”夢”の映画ということで、夢を食べる架空の動物バクが重要ワードとして出てくるのですが、ボーちゃんが「大和田…」とつぶやいたのを劇場内の何割の客が理解できたのでしょうか。大和田獏自身も登場するのですが、獏がやられたときの劇画ボーちゃんの「獏さぁぁぁぁん!!」というシャウト、瞬間最大風速でした。ラストバトルの「小惑星、イトカワ。」も捨てがたい。

 

極めつけは、あそこの毛がツルツルだから子ども理論。子どもの心がないと夢の世界から追い出される、という設定があるのですが、そのためにひろしがとった行動が剃毛。T字カミソリを手に股間からは強い光が放たれます。絶対怒られるだろこれ。

 

あ、安心してください、わかりやすい笑いも用意されていますよ!

ゲストにとにかく明るい安村が出演するのですが、これがなかなか笑えました。ヘェイ!の汎用性が高い。いつものクレしんゲストはだいたいスベるのに。

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はいているのか?!じゃねぇよw 映画内では穿いてませんでした

 

”深い”というより”重い”テーマ。それを伝える脚本と演出

まず、この映画に散りばめられたテーマは

  1. 親の歪んだ愛情が子どもに与える悪影響
  2. 母の役割と女性の友情
  3. トラウマの克服

の3つです。これだけ読むとクレヨンしんちゃんとは思えないくらい重厚なテーマですね。1つずつ見ていきましょう。

 

親の歪んだ愛情が子どもに与える悪影響

少しボカして書きましたが、「隠れた虐待」と同義のテーマです。重い重い。

春日部に引っ越してきた貫庭玉(ぬばたま)親子。娘サキちゃんはある事件が原因で、寝ると必ず悪夢を見るという体質です。父夢彦はサキちゃんを悪夢から救うために他人の夢を吸い取っている、というのが今作のメインストーリー。

夢彦の娘に対する愛情は本物で「娘のためなら他人がどうなってもいい!」と叫ぶ姿には、文句を言おうとしたみさえ共々圧倒されます。

このため貫庭玉親子は各地を転々としていて、夢彦はサキちゃんに「絶対友達を作るな」と強制します。これも娘を想うがゆえなのですが、サキちゃんにとっては悪影響でしかありません。

それは貫庭玉家の生活にも現われています。ツギバギで汚れた家、朝食は焦げたパンと目玉焼きとポテチ。対照的に、野原家は今までよりやけにキレイな家、美味しそうな朝食、サキちゃんが来たときはみんなでお好み焼きを食べていました。巧みな演出です。

 

現実世界の東南アジアなどでは「物乞いのために子どもの手足を切断する」という事例があります。同情を買うわけですね。僕もタイで直接目にしましたし、子を思うがゆえに親が切断していると知ったときはショックを受けました。これと映画のケースは、程度はまったく違えど本質は同じなのではないかと思います。共通するのは、親の愛情が本物だけど歪んでいること。長い目で見ると子どもには悪影響でしかありません。原因は親が子ども目線に立てないことです。夢の中で子どもになりきるひろしとみさえは「ちゃんと子どもの目線に立てる親である」ということを上手く表現していますね。

夢彦は劇中で「私はサキの現実をも悪夢にしてしまっていたのか…」と自省しますが、わたしたちの周りにも同じようなケースが溢れているような気がしてなりません。

 

母の役割と女性の友情

今作はみさえとネネちゃん、2人の女性がキーマン(ウーマン?)です。

「母が事故死したのは自分のせいで、母は自分を恨んでいる」と思い込んでいることが、サキちゃんの悪夢の原因。この悪夢の演出、ガチホラーでした。

父にできなかった、サキちゃんを悪夢から救う手助けをするのがみさえ。ラスト、悪夢の原因に気づき「サキちゃんに伝えなきゃいけないことがある!」といって夢に入ります。

「お母さんはあんたを恨んでなんかない!」と、母親が子どものことをどう思っているのか、悪夢をはねのけながらサキちゃんに伝えるシーン、めちゃめちゃ熱くてかっこいいです。いなくなってしまったサキちゃんの母の役割を他人であるみさえが演じるのがとてもいい演出ですね。「オタケベ!カスカベ野生王国」ではイマイチでしたが、やっとみさえの名シーンが誕生しました。

 

かすかべ防衛隊の紅一点ネネちゃんもいい仕事をします。自ら孤立するサキちゃんに「ごめんも言えなければ、ありがとうも言えないの!?」と詰め寄り、「そこまでいくと嫌いじゃないわ!」と認めるシーンが印象的。ネネちゃんの精神年齢がすごい。

ネネちゃんのおかげでサキちゃんは少しずつ心を開き始め、かすかべ防衛隊の仲間になれました。「私のこと、嫌いにならないって約束できる?」と聞くサキちゃんの心境を思うとツラい。悪夢の原因がサキちゃんと分かり、築きかけた友情が崩れてしまうシーンはキツかった。終盤やっと謝ることができたサキちゃんに対し「嫌いにならないって約束したでしょ!」と許すネネちゃん。サキちゃんに初めて本当の友達ができた瞬間でした。ネネちゃんマジイケメン。

 

トラウマの克服

上に書いた通り、サキちゃんの悪夢の原因は過去のトラウマ。それをかすかべ防衛隊みんなで倒そうとします。漫画家になったマサオくんはペンをライトセーバーにみたて、ネネちゃんはなぜかカニに、風間くんは飛行機に、しんちゃんは夢を食べるバクに変身。これで解決かと思いきやダメでした。ボーちゃんが隕石になっても悪夢は消えません。

これまた上に書いたみさえの言葉を聞いたサキちゃんは、悪夢を消すのではなく受け入れます。この結末が素晴らしかった。

父夢彦がやったように、トラウマを消そうと拒絶するからより深いトラウマになるわけです。そうではなく、大事なのは向き合うこと。そして「これも私の一部なんだ。」と認めること。それができてはじめてトラウマはトラウマではなくなるのでした。周りに助けられ、サキちゃんが自らこの選択をする結末、お見事というしかありませんでした。

 

昔のクレしんにあった懐かしいもの

しんちゃんのいたずら→げんこつ→コブができる、というクレしんならではの展開、最近では見かけませんよね。理由はわかりませんが、おそらくいたずらや暴力の助長に対するクレームでしょうか?今作では、マイルドながらこの展開が復活します。嬉しかったなぁ。頭ぐりぐりも再登場してました。懐かしい。

 

また、アニメ初期のしんちゃんはよく着ぐるみを着ていました。ゴキブリやカエル、ハエなどのゲテモノが多かったですが…。今作は一瞬ですがイソギンチャクの着ぐるみを着たしんちゃんが見れます。さらに、着ぐるみが進化したなりきり「渡辺篤の建もの探訪」も。クオリテイはイマイチでしたが笑いました。BGMはさすがに流せなかったかぁ。

 

懐かしい面々も登場します。かすかべ幼稚園のバラ組のいじめっ子、チーター河村とひとし(刈り上げ)、てるのぶ(肥満)です。

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今では丸くなったまつざか先生は、初期ではホントに嫌な先生でした。敵キャラだったんです。その手下ポジションがこの3人。マサオくんにガチいじめ→しんちゃんが下品に助ける、という展開がよくあったのですが、劇中この3人から追われるサキちゃんをしんちゃんがケツで助けます。往年のクレしんファンにはたまらない演出です。

 

おわりに(クレしん映画に対する雑感)

クレしん映画の歴史は山あり谷ありでした。今なお歴代2位の興行収入を誇る第1作「アクション仮面VSハイグレ魔王」がスタートダッシュを切り、ファンからの評価が高い名作「ヘンダーランドの大冒険」をはじめとした傑作が続きます。転換点を迎えたのが「オトナ帝国の逆襲」。クレしん=感動路線という実は特殊で難しい構図は、続くヒット作「戦国第合戦」で強固なものとなり、「3分ポッキリ大進撃」あたりから多少の上下はあれど迷走していきます。その評価を覆したのが2014年の「逆襲のロボとーちゃん」でした。2015年の「オラの引越し物語 サボテン大襲撃」は個人的にはイマイチでしたが、新しいクレしん映画の可能性を感じさせました。

そして2016年の「ユメミーワールド大突撃」。マルチな才能を発揮する劇団ひとりの脚本を軸に、「逆襲のロボとーちゃん」の監督高橋渉がクレしん要素を肉付けした今作*1。大当たりの作品でした。

 

「逆襲のロボとーちゃん」は完全に大人向けの作品でしたが、今作はお子さんと一緒に観ていただきたい映画です。なぜなら、子ども向けだけど”子ども向けじゃない演出”が多いから。

初期のクレしん映画はまさにこういう映画でした。大人に「これ何?」と聞きたくなるようなギャグ、トラウマになるレベルのホラー要素、親目線の家族愛。これらはすべて大人になった今も強く印象付けられています。逆に、数多ある子ども向け映画はあまり記憶に残っていません。これはなぜでしょうか?理由は「大人も楽しんで観ていた」からだと思います。個人的な話ですが、僕は小さい頃よく家族で映画を観に行っていました。ポケモンやドラえもんなんかは僕が観たい!と提案したのに対して、クレしんだけは親から観よう!と提案された記憶があります。親が楽しんでいると子も興味を持つものですよね。

 

「ユメミーワールド」では、親が子の目線に立つことの重要さを説いていました。それと同時に「子が親の目線に立てる映画」だと思います。ぜひ劇場でご覧ください。

*1:パンフレット参照