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重なる針
ばかげた話だ。
対に俺の元にも『チェーンメール』と言われるものが届いた。
どうやら、今日中に回さないと俺は死ぬらしい。
まぁ、どうせ構ってちゃんの遊びだろう。
だから、こんなものは無視だ。
何人でもいいという指定。
それはただ単に、多くの人に広めてほしいだけだろ?
そんなもんに付き合ってられねぇ。
俺は届いたメールを削除した。
それにしても、水川も馬鹿だなぁ。
死にたくないって言ってもさぁ……信じるか?
まぁ、水川のことだし他の人にも回しているだろうから……途切れることはないだろうな。
それにしても、メールが届いた時刻が十一時五十九分だから本当にギリギリで送ったんだな。
それまで迷うくらいなら送るなよ。
ま、俺にはもう関係ない話だ。
ふぁ~。
くそねみー。
アナログ時計は深夜零時を示す少し前だ。
何時もだったら、こんくらい起きていても睡魔に襲われる事はねぇんだが……今日は無性に眠い。
時計の針が刻一刻と、時を刻んでいく。
カチリ。
短針と長針、秒針が……ぴったりと十二の位置に重なった。
ああ、どうしようもない睡魔が襲うし……寝るかな。
寝室に向かうために後ろを振り返ると見知らぬ女がにこりと微笑んできた。
思わずそれに俺も微笑み返す。
「初めまして。私が誰かわかる?」
「は?」
俺はようやく思考回路の鈍りに気づいた。
「はぁ!? お前、誰だよ!!」
「私……死神よ」
「死神ぃ!?」
「えぇ。日付が変わってしまったから…裁き与えにきたのよ」
「なんのことだよ」
死神とか……何の冗談だよ。
確かにさ、真っ黒なドレス着ていかにもって感じはするけどよぉ……。
「私のこと、信じてくれていないのね。いいのよ……どうせ、もう会うことはないのだから」
「信じるも何もないだろ!?」
「そうよ……信じるも何もないから、貴方はこうして殺されかけているわっ!」
死神は命を刈り取る鎌を出現させた。マジかよ……マジでそんなモンを振り回すつもりかよ!
「あなたは『ちぇーんめーる』を皆に回さなかった。だから、あなたが殺されるの……ちゃんと警告したよね? 今日中に回さないと、貴方は死にます確実に……って。守らなかったあなたが悪い」
彼女は舌をぺろりと出して、ごめんねっと笑う。
「死んじゃって☆」
深夜にカチカチッとダブルクリックする音が部屋に響く。
パソコンから新たに『ちぇーんめーる』が広められる。
死神はクスリッと笑った。
「みーんな、死んじゃえ☆」
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