2016年4月23日00時00分
■特派員リポート 金成隆一(ニューヨーク支局)
「おれ、やっぱりトランプに投票したよ」。米大統領選について、3カ月前までトランプ人気を懸念していた友人が電話口でつぶやいた。いったい彼に何が起きたのか。じっくり理由を説明してくれると言うので会いに行くと、「トランプ王国」が広がっていた。
ニューヨーク・マンハッタンから西へ700キロ、車で8時間ほど。アパラチア山脈を越え、オハイオ州ヤングスタウンに着いた。主力の製鉄業などが衰退した工業地帯「ラストベルト」の代表的な街として知られる。1970年代以降、製鉄所の閉鎖で雇用がなくなり、人口は60年代の16万人超から6万5千人に減った。
この街の予備選でトランプ氏は50%以上(マホニング郡)を獲得し、圧倒的な強さを示した。地元のケーシック知事も立候補しているのに、なぜ、ここまでトランプ氏に支持が集まったのか? 支持者たちの思いを聞いてみた。
待ち合わせ場所のレストランで、友人のビクター・ヘルナンデスさん(49)は仲間2人と大統領選の話に夢中になっていた。仲間2人は民主党から共和党支持への「転向組み」で、記者に紹介するために連れてきてくれたという。
政治に詳しいことで仲間から一目置かれる元保安官代理のデイビッド・エイさん(52)が言った。「共和党で2位のクルーズの妻はゴールドマン・サックスという大投資銀行の元幹部だ。この会社はヒラリー・クリントンに3回の講演料として計67万5千ドル(7400万円)を払っていたんだ」
あまりに金額が大きくピンと来ない。隣でオムレツを食べていた家具職人カート・エンスリーさん(53)はそんな表情を浮かべた後、こう首をかしげた。「オレにはわかんねえな。だってクルーズは共和党で、ヒラリーは民主党の候補者だろ? その会社はどっちの支持なんだ?」
記者の友人ヘルナンデスさんは「そういう話じゃねーだろ。大企業には政党なんてどっちでもいい。偉くなりそうなヤツにカネを払う。『影響力を買う』ってことだろ? クルーズもヒラリーも、どっちもエスタブリッシュメント(既成勢力)ってことだよ」
最近の米国の選挙戦では、とにかくこの「エスタブリッシュメント」への風当たりが強い。3人は「クルーズは信用できない」との意見で一致し、「やっぱり次はトランプ大統領だ」と盛り上がった。
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朝日新聞国際報道部
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