大切な人が亡くなったときに、あなたはどう折り合いをつけますか?『昨夜のカレー、明日のパン』 大切な人の「死」。その痛みを知るからこそ交わせる言葉がある。本屋大賞第2位の感動作をコミカライズ 。
私も30歳を超えまして、”意図せぬ別れ”をまわりで聞くことも多くなり、そうゆう歳になったんだなぁと思うことも増えました。
それを理解しているからこそ、GWは実家に帰ったり、親孝行をしたり、親父とビールを飲んだりするのですが、それでも大切な人との別れが、悲しくなくなるわけではありません。
悲しんで、泣いて、というところまではわかるのですが、実際に大切な人が亡くなったときにはそれだけではうまくいかない。その人がいなくなったということを、自分の中で消化する、折り合いをつける、ということが必要なんだと思います。
この作品は、そんな折り合いのつけ方のお話。
本屋大賞第2位の感動作をコミカライズ
この漫画は、脚本家”木皿泉”原作の小説を漫画家”渡辺ペコ”がコミカライズした作品。本屋大賞で2位というだけでも面白いにきまっているのに、それを渡辺ペコさんが描いたなんて最高じゃん、ということでジャケ買いならぬ、帯買いをしました。渡辺ペコさんといえば、『にこたま』が大好きな作品ですが、今回の作品は本当に渡辺ペコさんの絵がうまくあっています。
漫画のあとがき部分で渡辺ペコ先生が語っているのですが、
原作のある作品の漫画化はもう受けないでおこうと思っていたのですが、まんまと意思を翻してしまいました。胸をお借りするつもりで、そして思い切って挑戦させて頂くつもりで、お引き受けしました。小説を漫画に変換するという仕事をしながら木皿さんの作品とお付き合いする中で、わたしもまたいくつもの言葉をもらいました。作品中のギフやテツコや岩井さんから。そして木皿さんから。それはとても幸運な経験だと思います。
とあるように、原作と作画がうまく重なりあって、実現した作品です。
若くして病気で亡くなってしまった”一樹”と残された”テツコ”
出会って結婚した、“一樹”と“テツコ”。一樹は病気で入院して、亡くなってしまいます。作中では、病気の描写はほとんどなく、後からの回想シーンのように出てくるだけです。
一樹のまわりには、テツコと他の人たちがいました。一樹がいなくなってしまったあとの、それぞれの人の折り合いのつけ方が、複数のストーリーでつながっていきます。
それぞれの折り合いのつけ方、つけられない気持ち
一樹とテツコはギフ(義父)と3人暮らしでした。一樹が亡くなったのだから、ギフと二人暮らしをする必要はありません。でも彼女はギフと二人で暮らし続けます。この生活を続けることが彼女とギフの折り合いのつけ方なのかもしれません。
その後にテツコにも彼氏ができて、彼氏が結婚を迫られますが、テツコは結婚には踏み切れません。
ギフもまた、一樹という息子を亡くしたことと折り合いがつけられず、テツコとまだ二人暮らしをしていることをいけないと思っているが、それをやめられないでいます。
一樹の家のとなりに住む幼馴染のムム。小さいころに一樹と仲が良かったが大人になって離れていて、知らないうちに一樹が亡くなってしまった。彼女は小さいころに一樹に語った将来の夢を思いだし、その気持ちと折り合いをつけようとします。
一樹のいとこのトラオ。一樹よりも年下で、いつも一樹が車にきれいな女性を乗せているのを見ていました。トラオは一樹が亡くなったあとに、その車に乗るようになります。その後、その車を手放さなければいけないときになっても、一樹との思い出があるから手放すことができない。
最後に、一樹。一樹は自身の病気と、人生とどう折り合いをつけたんだろう。この作品の最後のストーリーを読んで、わかったような気がしました。
結局、身近な人の死と折り合いのつけ方のお作法なんて世の中にはなくて、亡くなった人との関係と思い出といろんなものをひっくるめて、考えていくしかないんだろうなと思います。
なんとなく暗そうなテーマではありますが、渡辺ペコさんの絵や木皿さんのストーリーもあって、読後感の良い作品になっています。小説も読みたくなりました。
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