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■認知症の国際会議・取材日記@ブダペスト

 世界各地の研究機関や民間団体が、自分たちの取り組みを紹介するポスター展示が、22日から始まりました。

 にぎやかに声が飛び交う展示会場につくと、奥の方から日本語が聞こえてきました。迎えてくれたのは、カナダのバンクーバー地域にあるNPO団体「日系シニアズ・ヘルスケア&住宅協会」で理事を務める日系2世の船橋敬子さん(35)。ポスターの内容は、日系人に向けたデイサービスについてでした。

 バンクーバーには多くの日系人が住んでいます。船橋さんたちは2013年から、近隣の二つの日系人団体と協力し、文化的な背景を踏まえてサービスを作る「いきいきプログラム」に取り組んでいるそうです。

 「一口に日系と言っても、日本で育った人もいれば、カナダで生まれた人もいる。育って来た文化的な背景は全然違うんです」

 プログラムで共通しているサービスは、おしゃべりの時間と和食のお昼、そして運動だけ。その他は利用者の好みに合わせて、ゲームをするときには、お手玉をしたり、「カナダらしい」というテーブルでのボウリングをしたりするそうです。

 利用者のなかには認知症が進み、バイリンガルだったのに、幼い頃に覚えた日本語だけで話すようになる人もいるそうです。船橋さんは「だから、同じ文化を持つ人たちが集うコミュニティーが必要なんです」と話していました。

 すると、今度は隣から「私たちの取り組みは、日本のアイデアを参考にしたのよ」と、会話に加わったのが英国のフィリッパ・ツリーさん(29)。胸につけた「認知症フレンド」のバッジを見せながら、カバンから取り出したのは日本のオレンジリングでした。

 英国で広がっている「認知症フレンド」は、日本の認知症サポーター制度を参考にしたもので、たくさんの共通点があるのだと説明してくれました。

 ツリーさんの祖父は、認知症を患っていたそうです。「祖母が大変そうにしている様子を見て、負担を減らすことができないかと、介護への関心が高まりました」

 その上で「認知症フレンド」などの取り組みについて、「多くの人が認知症への理解を深めれば、自然と人のつながりも生まれてくる」と話していました。

 住む場所や文化が違っても、それぞれの課題や取り組みに違いはあっても、ケアの根底にある「人を思う気持ち」は変わらない。遠くに感じていたカナダと英国が、少し身近になったように感じました。(浜田知宏)