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 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先とされる名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事に対し、国土交通相が撤回を求めた是正指示の適法性を審査している国の第三者機関「国地方係争処理委員会」は22日、国と県双方から意見を聴取した。県側は翁長氏が出席し、「国の是正指示は自然破壊指示であり、地方自治の破壊そのものだ」と訴えた。

 委員会は原則非公開だが、この日の双方の意見陳述は報道公開された。

 翁長氏は移設計画について「米軍基地の過重な負担、被害をさらに将来にわたって沖縄県に固定化することを意味している」と主張。こうした不利益も考えて知事が埋め立ての公共性や必要性を判断するのは「当然のことだ」とし、是正指示は地方自治に対する国の違法な関与だと訴えた。

 また、移設先の大浦湾は5800種以上の生物が確認されている豊かな海だとして、「結果として日米両政府は、環境保全の観点からすると最も問題の大きい場所の一つを選んだというほかない」と指摘。国の環境保全策は不十分だと批判し、「奇跡の海とも言える辺野古・大浦湾海域の埋め立てを強行するなら、人類共通の財産を地球上から消失させた壮大な愚行として後世の人々に語り継がれることになる」と述べた。

 一方、国側は法務省や防衛省の担当者が出席。埋め立て承認が取り消されれば普天間の返還が進まず、日米の信頼関係などが損なわれるとし、「取り消しは翁長氏自身の政治信条や選挙公約を実現する目的で行われたもので、裁量権の乱用だ」と反論した。

 陳述後、翁長氏は記者団に「県民の思いを直接伝えられた。委員は強い関心を持って審査に臨んでいると感じた」と話した。委員会は6月21日までに結論を出す。(上遠野郷)