蹴球探訪
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(3月16日)
【サッカー】J2熊本、リーグ戦新たに3試合中止 9選手まだ車中泊2016年4月22日 紙面から
愛する地元と一緒に、必ず元気を取り戻す−。熊本地震で被災したJ2熊本が21日、熊本市内で選手やスタッフによるミーティングを開き、5月15日のアウェー千葉戦からリーグ戦に復帰する方針を決めた。クラブは、17日と23日に続き、5月7日に組まれた第12節の札幌戦まで新たに3試合の開催中止を発表。活動を休止しているチームは同2日に全体練習を再開。Jリーグ側からは一時的に熊本県外に練習拠点を置く案も提案されたが、元日本代表のFW巻誠一郎(35)ら選手たちは地元に残る考えで一致。熊本県宇城市出身の巻は涙を流しながら、熊本県民とともに復興への道を歩む思いを語った。 あふれ出る涙を、巻は止められなかった。「すみません、感情を抑えて自分の思いを伝えなきゃと思っていたけれど…」。途切れがちな語尾。その目に浮かぶのは被災した地域の仲間、そして様変わりした故郷の光景だった。「本当に熊本が大好きなので、力強く前に進まないといけない」。復帰を目指す「5・15」へ向けた決意を口にした。 16日未明の本震後、選手・スタッフによる全体ミーティングを開いたのは初めて。県外に避難する3選手を除く26選手が集まった。Jリーグの原博実副理事長らからは、早期復帰に向けて県外に拠点を移す案などが出された。しかし、益城町在住のGK畑の自宅が損壊するなど9選手は今も車中泊。避難生活で手いっぱいで、巻も「正直、サッカーで頑張ろうという気持ちにはなりにくかった」という。 それでも傷ついた熊本イレブンを前へ突き動かしたのが、地元と県民に対する愛情だ。チームメートと協力し、19日には益城町の避難場所近くで子どもたちとサッカーボールを追いかけた。「お互いに励まし合い、今まで以上の熊本をみんなの力でつくりたいと思った」。チームは熊本にとどまる考えでまとまった。「熊本に残って、熊本のために何かしたい」と訴える県外出身の選手たちの思いも巻の胸を熱くした。 復帰目標の15日の千葉戦に向けては、チーム活動停止から1カ月後となる。練習場所だけでなく、食事や睡眠も満足に取れず、プロとしてのパフォーマンスを出せるか難しい。しかし、岡本賢明主将は「早く復帰するには休みすぎるのも良くない。(このタイミングが)ぎりぎりだった」と説明する。25日から自主練習を始め、5月2日から全体練習を再開するため、クラブは急ピッチで練習場所の確保に動く。 復帰戦で対戦する千葉は、巻にとって2003〜10年夏に在籍した古巣だ。千葉サポーターからは物資の支援も届いている。「特別な感情はある。僕も熊本も元気だと千葉、全国のみなさんに発信するためにも、チーム一丸となって前に進む」。不屈の熊本が立ち上がる。 (末継智章) ◆5・22ホーム戦微妙 池谷社長が見通し熊本の池谷社長は復帰後最初のホームゲームとなる5月22日の水戸戦の地元開催については厳しい見通しを示した。本拠地のうまかな・よかなスタジアムは支援物資の拠点になっており「いつから使えるか(所有者の)熊本県に相談するのもためらっているのが現状」という。事態の好転を望みつつ「アウェーで先に行うか、中立地で開催する可能性もある」と示唆した。 ◆清武 避難所回り激励鳥栖から期限付きで移籍しているMF清武も熊本への思いを口にした。16日未明に実家のある大分市が震度5弱の地震に見舞われたが、家族の無事を確認。「(自分でも)できることがある」と熊本にとどまることを決意。チームメートとともに避難所を回ってサッカーを通じて子どもたちを励ましてきた。5月15日に向けては「やらなきゃいけない危機感と、県民を元気にするという責任感がある」と重い立場をあらためて自覚した。 PR情報
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