自分がいま住んでいるアパートは、都市ガスではなくプロパンガスである。なので、定期的にボンベ?の交換に業者がやってくる。
先日、出かけようと思って外に出たところ、アパートの駐車場の入口にその業者の車が停めてあり、非常に出にくかった。
空いているスペースの幅を見たところ、まあなんとか通れそうな感じではあったが、ちょっと心配だったので業者の人が来るのをちょっとだけ待った。すぐ物陰から出てきたので、車をちょっと移動してもらおうと話しかけた。
「あのー、ちょっと車出したいんで、すこしこのトラック移動してもらってもいいですか?」
「……」
お、おう、無言か。
その後、何事もなかったかのように物陰にまた消えていってしまった。
一瞬なにが起きたのかわからなかった。なにかすごく失礼なことを言っただろうかと頭のなかでさっきのセリフを反芻する。いや、特にムカつくような言い回しはしていないはずだ。
とはいえ、また業者の人はどこかに行ってしまったので、とりあえず荷物を積んで車を出すことにした。2,3回切り返せば出られるはずだ。ぶつかりは…しないだろう。多分。
荷物を積み終わると、さっきの業者の人がまた現れた。
「あ、車はなんとか出せるんで、やっぱり移動しなくても大丈夫ですよ」
精一杯爽やかに伝えたつもりだった。だが、また返事は帰ってこず。しかも今度はこっちを見もしない。
なんだろう…
自分は、いまの仕事に就く前は東京で外食産業に従事していた。だが、調理作業は最初の1年くらいだけで、その後はほとんど店舗管理と接客がメインの仕事になった。
正直言ってあまり他人とコミュニケーションが得意ではないので、当時から「接客業は向いてないな」と思いながら働いていた。だが、仕事は仕事ということで、元気いっぱい爽やか好青年を演じていた。
その時に上司から口を酸っぱくして言われたのが「接客業の基本は笑顔」だ。
基本は笑顔。お客様を案内するときも、オーダーを取る時も、配膳するときも、そしてクレーム処理をするときも、基本は笑顔で応対しろと言われた。
勿論、クレームでカンカンのお客様を前にしてヘラヘラ笑っているのは良くない。その時は「申し訳無さそうな笑顔」を最初にして、相手の怒り具合を見極めて笑顔率を減らしていくのだ。
サービスを提供する側にいたせいで、逆にむっつりした対応の時は気になってしまったり、あまりに混雑しすぎて回ってないお店でご飯を食べたりするときは気の毒に思ってしまったりするが、これは一種の職業病のようなものだ。いや、元職業病か。
なので、今回のプロパンガスの業者の応対というか無視も、とてもビックリした。
あっちは、ただボンベを変えに来ただけの下請けか何かで、「サービスを提供している」とは思っていなかったかもしれない。というより多分そうなんだろう。だが、こちからすれば、あの人はガス会社の人のようなものだ。必然的にそのガス会社に対してのイメージがダウンする。
まあ、そこまで考えなくても、話しかけられて2回も無視するというのはただごとではない。接客業であってもなくても、それはさすがにないだろうと思ってしまうのだ。
名指しはしないけど、ガス会社の人にはこう言いたい。せめて下請けの業者の人でも、話しかけられたら応えるくらいのことはして欲しいと。笑顔で挨拶してくれとは言わないからさぁ。
高望みし過ぎだろうか?