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教室に「デジタル教科書」をまずは導入したうえで、走りながら考える。その姿勢で大丈夫だろうか。
小中高校で使う教科書について、文部科学省がデジタル化を解禁する方針を固めた。
紙の教科書と同じ内容の電子データをデジタル教科書とし、タブレットやパソコンなどの情報端末で学ぶ。
教科書のデジタル化によって文字や写真を拡大できる。音声や動画と一体で学ぶことで英語の発音を聞いたり、算数で図形を動かしたりできる。
2020年度に新しい学習指導要領が始まる。それに間に合わせたいと文科省は急ぐ。
だが教科書は、どの子も毎日使う教材である。乗り越えるべきハードルは多く、かつ高い。
まず気になるのは、体への影響だ。脳の発達や睡眠への影響、長時間使うことによるデジタル依存の問題について指摘する研究者がいる。
文科省は健康への影響が少ない形で始め、導入後に調査研究をするというが、保護者の不安に応えられるだろうか。
学びの効果についても、読む力、書く力にどこまでつながるのかと異論が出ている。
デジタル版は、導入していない現段階では十分な検証が難しいとして、文科省は紙の教科書をいままで通り配る。紙とデジタルを併用することで、それぞれの利点を生かすというが、さらに吟味が必要だろう。
そもそもデジタル版を教科書と銘打つなら、国が子どもに無償で配布するのが筋である。
ところが文科省はデジタル版を当面、無償配布の対象にしない方針だ。実際に導入するかどうかを決めるのは、教育委員会とされる。国として無責任ではないか。
いまでも端末やネットワークの整備では、自治体間で格差が大きい。そこにデジタル教科書を導入するとなると、豊かな自治体と、財政難の自治体とで格差が広がる恐れがある。
自治体が負担しなければ、端末の代金なども含め、保護者が担う可能性がある。だが、憲法は義務教育を無償としている。合意はどこまで得られるのか。
政府は「2010年代中に1人1台の端末による教育の本格展開に向けた方策を整理し、推進する」と言っている。
ならば国は少なくとも希望する自治体や保護者に対し、十分な支援をすべきだが、その仕組みもまだ示せていない。
教科書は教育の機会均等を保障する手段である。その原点を忘れるべきではない。
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