独VW 排ガス不正対象車買い取りで米当局と合意
- 2016年04月22日
独自動車メーカーのフォルクスワーゲン(VW)は21日、排ガス規制逃れ問題で不正の対象となった車両の買い取りや「かなりの額」の賠償支払いで米当局と暫定合意した。
合意の最終的な内容は6月に発表される予定だが、米連邦地裁のチャールズ・ブライヤー判事は、21日を期限にVWと当局が暫定合意に至るよう命じていた。
補償は「かなりの額」
ブライヤー判事は、合意には排気量2.0リットルエンジン搭載の車両50万台近くの買い取りが含まれると明らかにした。自動車の所有者に対する補償額の詳細は明らかにしなかったものの、判事は米政府や所有者の弁護士らとの合意額が「かなりの額」だと述べた。
同判事はまた、VWが環境関連の基金やエコカー技術の推進に資金を拠出すると明らかにした。
VWは昨年9月に、排ガス規制逃れに伴う費用や当局による罰金への対応として73億ドルを引き当てると発表したが、必要な額はそれを上回る可能性がある。米国の大気浄化法に基づく罰金だけでも、最大200億ドルに上る可能性がある。
ウォーバーグ・リサーチのアナリスト、マルク=ルネ・トン氏は、排ガス規制逃れによるVWの直接的な損失は全世界で323億ドル(約3兆5500億円)に上ると推計している。
トン氏は、米国での合意が欧州で進む交渉にも影響を及ぼすかもしれないと指摘した。「米国の顧客に対する非常に手厚い支払いが、ここ(欧州)でも、欲深さを多少刺激するかもしれない」と言う。
排ガス規制逃れ
米当局は昨年9月、VWが米国で販売している一部車種で、排ガス検査を受ける際に数値を意図的に下げる装置を自社製ディーゼル車に搭載していたと発見。車種によっては、規制値の40倍にもなる窒素酸化物 (NOx)を輩出していた可能性がある。
VW側の弁護士、ロバート・ジュフラ氏は、「フォルクスワーゲンは顧客、ディーラー、規制当局のみならず米国全体の信頼を取り戻す強い決意がある」と述べた上で、今回の合意が「物事を正す行程において重要な一歩」になると付け加えた。
VWは発表文で、「顧客に対する補償を十分行い、ディーゼル燃料の過剰な排気で傷ついた環境を修復する意向」だとしている。
VWは司法省と環境保護庁(EPA)、カリフォルニア州大気資源局(CARB)との間で暫定合意が結ばれたとした上で、「サンフランシスコでの集団訴訟の原告との和解に関する基本的な内容で合意に至った。合意は今後の包括的な和解に組み込まれる」と述べた。
ブライヤー判事は、2リットルエンジンより大きな車両やスポーツ多目的車(SUV)約9万台についても、「迅速に」合意が得られることを期待すると述べた。