震災ボランティア ニーズに合わせ息長く
熊本地震の被災地で一般ボランティアの受け入れが徐々に始まっている。被災自治体の人手不足は深刻で支援活動へのニーズや期待は高い。ボランティアへの参加を希望している人は全国各地にいるはずだ。
ただし、今回は強い余震や土砂災害の恐れがある中での活動となる。行政側がボランティアの受け入れ態勢をどう整備していくのか、課題は多い。同時に参加する側も慎重な対応と準備が必要となる。
地震発生から1週間余。今も多くの人たちが先行きの見えない避難所生活を送っている。行政の支援は指定避難所が中心で、指定されていない避難所は実情の把握さえ遅れ、食事や生活用品が回らない「避難所格差」が顕著になっている。一方、生活インフラの復旧状況も市町村によって差が出始めている。
こうした中で、行政の手が届かない場所に支援物資を届けたり、お年寄りや子供たちの世話をしたり、危険でない場所で被災家屋の片づけを手伝ったり−−とボランティア活動への期待は大きい。
既に全国の医療や介護などを専門とするチームが地震発生直後から現地入りして活動を続けている。神戸市の畳店主らが東日本大震災をきっかけに作ったボランティア団体が、大きな被害を出した熊本県益城町の避難所をトラックで訪れ、畳約320枚を届けて喜ばれた事例もある。
重要なのは今、何が足りないか、何をするのが有効か、ニーズを細かく把握することだ。そして、そのニーズは刻々と変わっていくのを認識することである。
災害ボランティアセンターを開設して支援活動を調整するなど運営の中心となるのは地元の社会福祉協議会だ。しかし、協議会自体が被災した地域が多く、人手不足も加わって、今もなお受け入れ態勢が十分とは言いがたい。ボランティア参加を問い合わせる電話にも応じ切れていないところがあるのが実情だ。
災害支援の経験が豊富な民間団体は全国にいくつもある。行政と民間団体が情報を共有し、緊密に連携していくことが大切だ。また、ボランティア団体相互の連携や活動内容の調整も大事になってくるだろう。
現状では募集に際して「自宅から通える人」「食料や宿泊施設は自分で確保を」などと呼びかけている被災自治体もある。参加する側にも注意が要る。実際に参加しなくても、義援金を送ったり、支援活動をしているNPOなどに寄付したりするのも有効な支援の方法である。
「ボランティア元年」と呼ばれた阪神大震災から21年。「支え合う社会風土」をより定着させたい。そのためにも息の長い支援が必要だ。