エズラ・ヴォーゲル『ジャパン・アズ・ナンバーワン』以降の系譜
「礼賛」から「非難」「無視」、そして「手本」へ 欧米の「日本論」はどう変化してきたか
(SAPIO 2016年5月号掲載) 2016年4月21日(木)配信
文=本誌編集部
欧米人による本格的な日本論が登場したのは戦後間もない1946年。米国の文化人類学者、ルース・ベネディクトが著した『菊と刀』は、日本と激しい戦火を交えた米国民の好奇心を掻き立てた。戦後の奇跡的な復興、経済大国化、バブル崩壊後の日本の衰退を、欧米の人々はどのように捉え論じてきたのか。「日本論」の変遷を辿る。
敗戦から立ち直り、高度経済成長を迎えた日本。米国の社会学者、エズラ・F・ヴォーゲルは『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(1979)で、日本の経済的成功は「勤勉」「克己心」など昔ながらの美徳によるものではなく、《日本独特の組織力、政策、計画によって意図的にもたらされた》と分析。「長期的利益の重視」「年功序列・終身雇用」「従業員の会社への忠誠心」などを特徴とする日本的経営を礼賛した。同書は日本で70万部超のベストセラーになった。
日本の経済成長は通産省の貢献によると分析したのは、元CIA顧問チャーマーズ・ジョンソンの『通産省と日本の奇跡』(1982)。経済官僚が民間と協力して目標達成をめざす日本を「発展志向型国家」と分類し、市場を重視する「規制志向型国家」の米国などとは異なる国として対比させた。
『欧米メディア・知日派の日本論』(光文社刊)の著者でKDDI総研の小林雅一・リサーチフェローは、この2冊の延長線上に「日本異質論」(*)が登場したと見る。
*日本の経済・政治・社会構造は特殊で、基本的に欧米諸国と異なるという主張。日本の経済的台頭を警戒するリビジョニストの論拠となった。