日本銀行は金融機関が資金を預ける当座預金の一部にマイナス金利を適用しているが、金融機関に対する貸し出しに対しても、マイナス金利を適用することを検討する案が浮上している。

  日銀は成長基盤強化と貸し出し増加に向けた取り組みを支援するため、貸出支援基金を設けて金融機関に対して現在0%で資金供給を行っている。複数の関係者によると、今後、日銀当座預金の一部に適用している0.1%のマイナス金利(政策金利)を拡大する際は、市場金利のさらなる引き下げを狙って、貸出支援基金による貸出金利をマイナスにすることを検討する可能性がある。

  複数の関係者によると、これにより市場金利の一層の低下を促し、経済全体を押し上げる効果が見込まれる。一方で、マイナス金利での貸し出しは金融機関への補助金ではないかという批判を招くリスクがあるほか、金利全般の低下により収益悪化懸念が強まっている金融機関にとっては、企業から一段と低利での貸し出しを求められる可能性もあるため、日銀は導入の是非を慎重に検討する方針という。

6割が追加緩和予想もマイナス金利拡大は困難か

  日銀は27、28日に金融政策決定会合を開く。エコノミスト41人を対象に15-21日実施した調査で、追加緩和予想が23人(56%)と、量的・質的緩和が導入された2013年4月3日会合以降では最も高くなった。手段については、マイナス金利に対する国民の不安感や、日銀の当座預金へのマイナス金利適用でコストを負担する金融機関の反発もあり、マイナス金利の拡大は困難との見方が強い。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは「今会合での追加緩和の有無とは別に、熊本地震を受けて、被災地の金融機関を対象に何らかの支援策が実施される可能性は高い」と指摘。具体的には「復興資金をマイナス金利で供給する、あるいは、実質的に同じことだが、復興資金をゼロ金利で貸し出し、それに見合う分の当座預金に対して0.1%の付利を与えるといった可能性が考えられる」という。

  河野氏は「将来的には、被災地に限らず、貸し出し増加支援策として、こうした政策がとられる可能性もある」とみている。