今年で15年目を迎える日本未来科学館が、4月20日、常設展を大幅にリニューアルしました。リニューアル記念として、24日まで無料で入館できます。
6ヶ所に設置された新しい展示は、従来の情報提供型や体験型の展示のように、科学を「伝える」のではなく、科学を通じて、来館者に「考えてもらう」ことをコンセプトにした「思考型」の展示。来館者自ら「問い」、それを「考え」、実際に「行動する」。新しい展示は、この三つのポイントを軸に企画されています。今回は、中でも考えさせるなと感じた2つの展示を中心に紹介します。
子孫に贈りたい地球の姿を考える「未来逆算思考」
この展示は、「50年後に暮らす子孫たちにどのような地球を贈ることができるのか」という問いから生まれたものです。私たちが生きる地球には、地球温暖化、エネルギー不足、貧困、食糧不足など様々な課題があります。それらを乗り越え、理想の地球を実現するためには何が必要なのかを考えていくというもの。
ここまでだけ聞くと、なんだかとてもシビアな展示に思えますが「未来逆算思考」は、ゲーム形式になっているのがポイント。ゲームなので、わくわく楽しみながらこうしたテーマを考えることができるのです。
参加者はまず、「温暖化がストップした地球」や「いつまでもきれいな水が飲める地球」など、自分の理想に近い条件となる地球を選び、その地球を全長10メートルを超す巨大なゲーム盤上で未来に「贈り」ます。地球は、さまざまなイベントで変化していきます。そうした変化を、ゲーム盤の横を歩きながら確認していく......という進行です。
今回は「不平等や貧困のない地球」を選んで送りました。この地球は果たしてどうなるのでしょうか。
私の地球はさまざまな障害にぶつかってしまい、8年後となる2024年でストップ。50年後の子孫に届けることができませんでした。
残念な結果でしたが、この企画を通じて、現代の視点からではなく、50年後という未来の視点から「今地球に対して何ができるか」を考えることができました。
身近に潜むハザードを大型模型で可視化する「100億人でサバイバル」
科学技術が進歩した現在ですが、地球には感染症、異常気象、原発事故など、解決すべき災害がたくさんあります。この展示は、このような災害が起こる仕組みを理解し、「21世紀にくらす私たちがなにをすべきか」を考えることを促しています。
展示には、こうしたテーマでよく見られる災害が起こる仕組みをパネルで紹介するコーナーもありますが、もちろんそれだけではありません。注目すべき箇所の一つが、地球のシステムと人間社会を模した、直径6.7メートルの大きな模型。
その中で、普段の生活の中では見えにくいハザード(危険)が赤い玉で表現されています。こうした危険が意外と身近なものである点が、視覚を通じて私たちにより身近な問題として迫ってくるという仕組みです。
このように新しい展示は、科学とは何か?人間とは何か?未来とは何か?という人間の根本的な問題を触発するような展示が多く見られました。
他にも注目は、地球と自分の繋がりが体感できる「ジオ・プリズム」。未来館を象徴する地球型ディスプレイ「ジオ・コスモス」に対して、データやシミュレーションを重ねて表示できるシステムです。ジオ・コスモスは従来からあった展示ですが、今回のリニューアルでパワーアップしました。
「ジオ・プリズム」をコントロールするのが「ジオ・コックピット」。こちらもなかなか面白いデザインとなっています。
ロボット「ASIMO」の実演もあります。「ロボットとくらし」がテーマに置かれ、人間とロボットの共生可能性を探れます。
科学技術の進歩は、地球や環境に害を与えるだけではありません。むしろ、私たちは科学を通じてこそ、地球に対する人間のあり方を思考でき、共に持続可能な未来を考えることができるのです。新しい日本科学未来館の展示は、このことをより強く来館者に伝える、そして伝え続けられるものだと思いました。
そして未来館の展示は、これ以外にも多数あり、記事だけではすべてをお伝えできません。新しく始まった公式アプリ「Miraikan ノート」をダウンロードして、ぜひ週末やGWにお出かけください。入館料は大人が620円、18歳以下は210円ですが、4月20日から24日は、リニューアル記念として無料となっています。
リニューアルの様子をさらに知りたい方は、是非発表時の記事や動画もご覧ください。
科学未来館が4月20日に「開館以来最大」リニューアル、24日まで入場無料。6種の新常設展追加やドームシアター新作映像も - Engadget Japanese
【動画】 大幅刷新!日本科学未来館はこうなった。考えを日常に持ち帰る体験を「未来逆算思考」「100億人でサバイバル」など - Engadget Japanese