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天才プログラマーのAaron Swartz氏は、電子図書館サービスJSTORから数百万にも及ぶ記事を持ち出した人物として知られている。その行為は、出版社から見ると「窃盗」であり、中立的なジャーナリストであれば「コピー」、そしてハッカーやGoogle社員であれば「解放」といえるだろう。この件で起訴されたSwartz氏は、26歳で自らの命を絶った。
Swartz氏の死に関するネット上の反応については、2014年に公開された同氏のドキュメンタリー映画「The Internet's Own Boy」の予告編(YouTube)が参考になる。この映画や、2013年のSwartz氏の死亡記事によると、同氏は短い人生の中でありえないほど多くの出来事に関わっていたことがわかる。Swartz氏は、RSSやクリエイティブ・コモンズ、オープンソースシステムのSecureDrop、ソーシャルニュースサイトRedditなどの設立に携わったほか、オンライン海賊行為防止法案(SOPA)の反対運動にも参加、またLawrence Lessig氏率いる組織腐敗に関する研究所の主任研究員も務めていた。
このほか、最近出版された「The Boy Who Could Change the World: The Writings of Aaron Swartz」(「世界を変えたかもしれない男:アーロン・スワーツが残した文書」の意)によると、Swartz氏はブログを含めさまざまなところであらゆるトピックに関する文章を執筆していたようだ。
同書は、Swartz氏が主に関心を持っていた分野別に6章に分かれている。その6つの分野とは、フリーカルチャー、コンピュータ、政治、メディア、本と文化、そしてホームスクーリングだ。それぞれの章にはさまざまな長さのエッセイと書評があり、Swartz氏がその文章を書いた日付と当時の年齢が記されているほか、彼の友人だった作家のCory Doctorow氏やメリーランド大学法学部教授のJames Grimmelmann氏、非営利団体Electronic Frontier Foundationのシニアスタッフテクノロジストを務めるSeth Schoen氏といった著名人の前書きがついている。14歳の少年が書いた書評を掲載する文集はあまり多くないが、26歳で1冊の本ができてしまうほど知的な文章を書き綴っていた人物もそう多くはいない。
天才プログラマーとして知られるSwartz氏だが、同書を読むとSwartz氏は政治により深い関心を抱くようになっていたことが伺える。若かりし頃のSwartz氏が書いた書評やホームスクーリングに関する考え、身近なツールとしてコンピュータを利用するアイデアなどは、その後同氏が執筆したアメリカ連邦議会の仕組みや、米国司法制度における憲法修正第1項の著作権に関する盲点、さらには変化を起こす方法といったコンテンツにつながっていく。中でも、オープンデータが透明性につながるわけではない理由について解説したSwartz氏の主張は、今騒がれているこの分野にひや水を浴びせる内容だ。
Swartz氏の起訴で有名になった文書がある。「Guerilla Open Access Manifesto」(学術情報を共有するオープンアクセスの重要性を説いた声明)だ。今回の新書にもこの文書は含まれているが、誰が書いたかは疑わしいとの但し書きがある。この文書は、Swartz氏が自身の運営するサイト上にて公開したもので、のちに削除されたが、政府はこの文書をSwartz氏がJSTORの記事を一般公開するつもりだった証拠ととらえたのだ。
その数年後には、Swartz氏事件の影響もあり、科学の発展においてオープンアクセスは必要だという考えが以前より受け入れられるようになった。2011年、Swartz氏の行為は逮捕につながったが、ロシアの神経科学者Alexandra Elbakyan氏が同じく2011年に立ち上げたSci-Hubに対する現在のメディアの反応はどうだろう。Sci-Hubには、4700万(現在も増加中)もの学術論文が公開されているのだ。
本書の最終章には「遺産」と題するエッセイがあり、当時19歳だったSwartz氏は次のように述べている。人が世界に与えた影響の大きさは、何を達成したかによって決まるのではない。単に運やタイミングが良く、他人から選ばれただけかもしれないためだ。世界への影響の大きさは、もしそれが達成されなかったとしたらどのような世界になるのかによって決めるべきだ、と。われわれが今ヒーローとして崇める人物の中で、この指標をクリアできる人物はあまりいない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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