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自治体間の支援 過去の経験を生かそう

 熊本地震の被災地支援で問題になっているのは、避難所の運営や物資の配給などにあたる行政要員の不足だ。災害が起きた場合、自治体の職員も被災者であるケースが多く、解決することが難しい課題となる。

     その課題に対処するひとつの手段が全国の自治体からの支援だ。今回、多くの自治体が物資援助に限らず、要員も含めて幅広い支援活動に自主的に取り組んでいる。東日本大震災の復旧・復興支援などを通じて自治体や職員が蓄積してきたノウハウや、自らの被災経験で得られた教訓を十分に生かすよう求めたい。

     災害時の自治体間協力は東日本大震災を境に活発化した。今回は、大震災で被災した自治体も機敏に反応している。

     仙台市は紙おむつなどの物資を、宮城県石巻市は飲料水や備蓄用パンなどを地震発生から間もなく現地に送った。両市とも、5年前の大震災で熊本県の自治体から支援を受けた恩返しの意味合いをこめている。生活必需品や水、食料が不足した経験から支援を急いだという。

     新潟県中越地震で山古志地域(旧山古志村)などが被災した同県長岡市は避難所でプライバシーの確保が難しかった教訓から、段ボール製の更衣室を送る工夫をした。兵庫県などが阪神大震災の経験がある「関西広域連合」は家屋の被害を認定する要員らをこれまでに派遣している。

     災害を経験した自治体の職員はニーズをより敏感に察知できる。また、政令市の市長会は東日本大震災後に策定した行動計画に基づき約400人の政令市職員を派遣し、熊本市の避難所で活動にあたらせるなど支援は拡充している。

     だが、熊本では、せっかくの物資が県庁など役場に届いても仕分け、分配する人手が不足して滞る事態が起きた。九州、関西の府県職員らが熊本県庁の支援にあたっているが不足は解消されていない。災害の発生直後に送り手の自治体が職員を集中的に派遣することも、今後は必要になってくるのではないか。

     今後の復旧・復興においても、被災した市町村は専門的な事務にあたる要員の不足に直面するおそれがある。東日本大震災で支援活動をした職員はさまざまなノウハウを蓄積している。全国市長会など関係団体は効果的に要員を提供する窓口機能を積極的に果たす必要がある。

     政府の責任も大きい。東日本大震災で被災した自治体が必要とする支援職員の人手も現状では確保できていない。それだけに、このままでは要員不足が一層深刻化しかねない。財政的な援助の拡充も含め、自治体が要員派遣にスムーズに取り組めるような対策を検討すべきだ。

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