面白くなりきれない。多くの欠点を抱えた話題作『ポケモンコマスター』レビュー
- カード・ボードゲーム
- 2016年04月22日
ついに、スマホに完全オリジナルのポケモンゲームがやってきた。
ポケモンの駒を動かし、ボード上で陣取り合戦を繰り広げる『ポケモンコマスター』だ。
だが、正直に言おう。このゲームは期待外れだった。
『ポケモンコマスター』は、部分的には面白い。が、それ以上に問題を抱えていて、面白さを体験する前にあきらめが来てしまうであろう、残念な作りになっている。
まず、ゲームシステムを見ていこう。
本作は、ボード上にポケモンのコマを出して戦わせ、敵の本陣を落とす陣取りボードゲーム。
ボードの画面下がプレイヤーの陣地、画面上が敵の陣地。交互にポケモンを移動させ、先に敵陣の「ゴール」マスを占領したプレイヤーの勝利となる。
◎印のマスは、ポケモンを出撃させる「エントリーポイント」で、自分の手番にデッキに登録した6体のポケモンから好きなポケモンを出撃させられる。
エントリーポイントは攻防の要でもある。エントリーポイント上にポケモンを配置すると、そこから新たなポケモンは出撃できない。ゴールを落とす前に、敵のエントリーポイントを押さえ、行動を制限することも有効な戦術となる。
ボードが狭いため、障害がなければ移動力の高いポケモンは最短2手で敵エントリーポイントに、3手でゴールまで到達できる。
そのため、1手でもミスするとエントリーポイントが、2手ミスすればゴールが犯されるピンチにもなり、序盤から気が抜けない展開が続く。
この位置取りの駆け引きは、かなり面白い。
敵のポケモンがいるマスは通り抜けできないが、移動後に隣接しているポケモンが居れば、バトルを仕掛けることもできる。
各ポケモンには、ワザが複数設定されており、バトル時にどのワザを出すかはルーレットでランダムに決まる。
ルーレットを回してワザの攻撃力を比べ、上回っている側が勝利し、負けた側はボードから消えてポケモンセンターに移動する。
なお、ポケモンセンターに行ったポケモンは出撃できなくなるが、他に2体のポケモンがポケモンセンターに送られると押し出され、再び出撃できるようになる。
攻撃ではなく特殊な効果を持つ色つきのワザもある。
色つきのワザは、「青(防御ワザ)>紫(状態異常、移動ワザ)>白(通常攻撃)」の順に優先して効果を発揮し、優先順序が低いワザは一方的に無効化される。
だから、要所は青の防御ワザで守り、敵を崩すときは紫の特殊ワザを使ったりすると効果的だ。
しかし、どんなに青ワザのポケモンで固めても、攻撃の強いポケモンをそろえても、バトルの結果はすべて運次第。
プレイヤーは6体のポケモンと、1回だけポケモンを補助する「プレート」をゲームに持ち込めるが、敵と相性の良いポケモンを選んで立ち向かい、プレートを使ったとしても、負けるときは負ける。
▲プレートは、ポケモンを移動させる前に使える補助アイテム。しかし、1回使うとそのゲーム中はもう使えない切り札。
頑張って有利な状況を作っても負けることもあり、圧倒的に不利でも勝つことがある運ゲーだ。
一応、敵を味方ポケモンで挟み、移動できなくするとバトルなしにポケモンセンター送りにできるが、そんな位置関係を作るためにもバトルが必要になる。
良い書き方をすると、「勝率の高い戦術をとって運をコントロールするゲーム」とも言えるが、先ほど「1手、2手のミスでピンチになる」と書いたように、本作では1回のバトルの影響がとても大きい。
ルーレット運が悪いと連続でバトルに敗北して負けることも多く、AppStoreでも「運ゲー」というマイナス評価が目立つ。
▲運ゲー化代表、オニスズメ。「飛ぶ」で相手を飛び越え、最短2手で敵のゴールを占領する。対策を知らないと即死。
ただ、ゲームに慣れて勝負の勘所が分かってくると、1手でピンチになるような移動を控え、要所を固めて睨み合い、プレートで要所をジワジワと攻める面白い展開になることも多い。
なので、極めようとすれば対人戦では「運が重要な戦術ゲー」として結構楽しめる。
だが、それを持って『ポケモンコマスター』をお勧めすることはできない。最初に書いた通り、このゲームには大きな欠点が存在するからだ。
1つは、コンセプトの崩壊。
本作には、AIがプレイヤーのポケモンを動かす機能が存在する。本作のAIを担当したHEROZという会社は強力な将棋AIに定評のある会社で、そんな頭の良いAIの手を見てプレイヤーが学習したり、要所でAIを使って対戦に勝つゲームであるとされていた。
が、1人用のときはAIの使用回数が無制限だが頭が悪く、参考にならない。敵のゴールががら空きでもそれを無視して意味のない行動を取るのだ。
対人戦では課金アイテムを消費して「スーパーAI」を使えるが、AIがポケモンの移動だけしか行わないため、「プレートとポケモンを使ったAIの超コンボを学習する」ようなことができない。
となると、移動だけでは目の覚める手を見ることもできず、課金アイテムのくせに物足りない。
2つめは、課金しないとゲームが面白くないこと。
初期の手持ちポケモンが少なく、クエストで手に入る確率も低い。ガチャチケットなどもあまり配布されないため、ゲームを遊んでいてもポケモンが増えない。
▲確率2倍キャンペーン中でドロップ率20%程度。
ポケモンが増えないから戦術の幅が増えず、戦術ゲームなのに同じパターンを繰り返すだけ。
例えるなら、歩兵しかいない『ファミコンウォーズ』や、カードの増えない『カルドセプト』を遊んでいるような虚しさがある。
しかも、敵が強かろうが運が良ければなんとなく勝てるので達成感も低い。
また、人間は悪いシーンが印象に残るものなので、ランダム要素が強いゲームを遊んでいるとき、CPUが運で勝つといかさまをしているように思え、ストレスが大きい(モノポリーでCPUがいかさまをしているように見える現象)。
ストーリーも、特別に面白いわけではない。
▲キャラは悪くないけど。
1人用が面白くないから、確率の低いドロップを待つまで気力が持たないのだ。
ガチャを引いてポケモンを増やせば戦術の幅が広がるし、その上で対人戦をすれば楽しいが、そこまで行き着くプレイヤーは題材が「ポケモン」でなければ多くないだろう。
▲App Storeのレビューを見ると「ガチャが渋い」という評判はあるが、本作はレア度に関わらずどのポケモンも十分戦力になる。出たポケモンのレア度にかかわらず、10回~20回程度のガチャでかなり楽しくなるはずだ。「EX(最高レア)がないと戦えない」ゲームではない。
さらに、ガチャを引いてもランク戦に報酬がない(=課金しないと戦術の幅が増えない)ので、ずっと続けているうちにだんだんと飽きてくる。
ポケモンのグラフィックや、操作の手触りはさすがポケモンといったところだが、ゲーム部分はかなり穴だらけ。
良い点もあるが、それを生かすことができていない。また、面白いと言っても「運が重要な戦術ゲー」の域を出られない。
今の『ポケモンコマスター』は、ポケモンの看板にふさわしいクオリティと思えない。
ただ、オンラインゲームは、アップデートで改善できる。どうにか欠点を改良し、面白くなって欲しいとも思う。
ポケモンが手に入る仕組みなら、もっと面白くなるかもしれない。
運の要素がもう少しコントロールできたら、新しいマップがあれば、さらに面白くなるかもしれない。
立てピカチュー。おまえは、倒れたままで終わるヤツじゃないはずだ。
評価:5(楽しめる)
課金について
ダイヤ(ガチャ、AI使用、プレート購入などに使用。ないと面白くない)
おすすめポイント
気になるポイント
(バージョン1.0、ゲームキャスト トシ)
アプリリンク:
ポケモンコマスター (itunes 基本無料 iPhone/iPad対応)
コメント一覧
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- 2016年04月22日 02:00
- cpu戦のAIはかなり参考になりますよ。
ポジション取りは参考になるし、ゴールしないなんてことは自分はなかったです。タワーのレベルによるのかな?
ただアイテム使わないのでAI任せにできないし、現状レベル上げがきつく、cpuを圧倒する爽快感が無いのがダメですね。
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- 2016年04月22日 08:05
- いや、モノポリーのcpuは明らかにイカサマしてるだろ。
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- 2016年04月22日 08:07
- 俺的にハラハラドキドキする運ゲーは好きなのでやり込ん出るけど、確かにポケモンが集まりにくかったり、AIがカスいのは気になる。的確なレビューに感謝
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- 2016年04月22日 08:36
- 戦闘面に関しては面白いですね。運が作用するけど運ゲーというほどシビアなレベルではないです。
敵AIの動きで定石を覚える必要があり、そこを覚えていかないと運だけでは中盤以降の敵は倒せないですね。
そこよりも、基本無料モデルで出したことがNGですね。
ゲームキャストさんが仰るように、初期の手持ちポケモンが少なくポケモンが増える要素が少ない。
この部分を絞ってしまっているので、特に序盤は寄せ集めのポケモンで戦略性の無い戦いばかりになってしまっているのが問題かなと思います。
微妙に気になってたんですよね...
何だかイマイチぽいですな