不祥事のたびに企業体質の抜本的な改善を誓ってきたのは、いったい何だったのか。

 三菱自動車で、主力である軽自動車の燃費を実際よりよく見せようと、試験データを改ざんする不正が何年にもわたって行われていた。

 2000年と04年には大規模なリコール隠しが発覚し、経営危機に陥って三菱グループの支援を仰いだ。にもかかわらず、それ以降もさまざまなほころびが生じている。過去の教訓が生かされず、法令順守の意識を欠いているというしかない。

 同社は有識者委員会を設けて調査を進める。経営責任は免れないが、まずは不正の実態と原因の徹底解明である。

 改ざんは、新車の性能を確かめる実験部門で行われた。目標とする数値が達成できなければ、開発・設計部門で対策を考えるのが当然の対応だろう。

 なぜデータをごまかす方向へと走り、それを見抜けなかったのか。一部門の独断だったのか、経営陣からの圧力はなかったのか。

 提携先の日産自動車からの指摘で不正の端緒を得たのは昨年11月だった。それを確認するのに5カ月を要したことにも不信が募る。立ち入り検査に踏み切った国土交通省は1週間で詳細に報告するよう求めたが、三菱自の経営陣はスピード感を忘れずに対応してほしい。

 日産への供給分を含めた62万5千台のユーザーには謝罪と補償をするというが、問題は顧客への対応にとどまらない。

 データ改ざんが行われた4車種はエコカー減税の対象だった。実際の燃費は公表値より5~10%低いと見られ、車種によっては減税の区分が変わる可能性もある。本来なら国や自治体に納められるはずの税収が得られなかったとすれば、国民全体への背信行為にも等しい。

 4車種はすでに生産や登録を中止したが、軽自動車以外の試験でも国内で定められた方法とは異なるやり方をとっていたことが判明している。不正の対象が広がれば、部品メーカーや販売会社にも深刻な打撃となりかねない。

 自動車業界では、エアバッグ大手、タカタの欠陥製品への対応の鈍さが問題になり、独フォルクスワーゲンは排ガス規制を逃れる偽装を施していた。

 安全面や、燃費を含む環境対策は、いまや自動車業界の競争の主戦場だ。そこで不正が相次ぐようでは、業界全体への信頼が失われかねない。三菱自以外の各社にも、改めて経営のチェックを求めたい。