2016年04月22日

地震の規模を表わすマグニチュードはログスケールなので、小数点以下が少し異なっただけでも発生するエネルギーは何十倍も異なる。実際マグニチュードが1上がると、エネルギーは31.62倍にもなる。このことを理解していないと、地震に対して誤った認識をしてしまうおそれがある。

そこで地震の発生するエネルギーを具体的に把握するために、15ktの広島型原爆を比較対象として代表的な地震のエネルギーを図示してみた(クリックして拡大)。

無題


1945年広島に投下されたリトルボーイの核出力はTNT換算で15kt(6.3×1013J)である。16万人もの死者を出した原爆はこの図で見ると本当に小さな点でしかないことが分かるだろう。

現在米軍が運用しているICBM用の核弾頭W87は300kt、広島型原爆の20個分に相当する。技術進歩により核弾頭は小型・軽量化され、威力を増加されているのだ。

それでもM7.3を記録した阪神・淡路大震災、そして今回の熊本地震には遠く及ばない。これらの地震が発生したエネルギーは5.6×1015J、広島型原爆の90個分。原爆が90個まとめて爆発したようなエネルギーがあの時あの場所で発生したのだ。念のため追記しておくと、このエネルギーはあくまで本震1回分のエネルギーである。何百回も発生している前震・余震を含めると桁が1つ上がるだろう。

1923年に発生した関東大震災はM7.9であった。数値自体はさほど変わらないので、阪神・淡路大震災や熊本地震と同程度の地震かと思いがちだが、エネルギーで言えば4.4×1016J、広島型原爆712個分だ。実はおよそ8倍の差があるのである。

そして人類の業を感じずにはおられないのは、ソ連が1961年に開発した史上最強の水爆ツァーリ・ボンバである。これは単一兵器としては史上最大の威力を誇る水爆であり、1961年ノバヤゼムリヤにて大気圏核実験が行われた。実際の出力は50mt(2.0×1017J)で、なんと広島型原爆の3,300個分に相当する。こんなのが多数実戦配備されていれば地球の将来を悲観したくなるのも道理だ。

だが、それを軽く凌駕するのが2011年に発生した東日本大震災M9.0である。エネルギーは2.0×1018J、広島型原爆の31,792個分に相当する。原爆を30,000発以上もまとめて爆発させたのがあの東日本大震災だったわけだ。実は東日本大震災は阪神・淡路大震災や熊本地震よりも350倍も強力な地震だった。M9.0というのはそれだけ化け物じみた威力であるということだ。

もっとも皆さんご存知のように、地表への影響はマグニチュードではなく震度によって決まる。熊本地震はマグニチュードこそ東日本大震災と比べて極めて小さいが、震源が浅かったこともあり、震度は最大の7を記録、建物に多くの被害を出している。一方で震源が海底でなく、津波が発生しなかったことは不幸中の幸いといえるだろう。

プレートが衝突する日本列島近郊においては、莫大なエネルギーが日々蓄積されており、解放される時を待っている状態だ。この莫大なエネルギーをずっと地下に蓄え続けることは不可能であり、いつの日か必ずこのエネルギーが開放される日が来る。開放されるエネルギーは原爆が可愛く見えるほどの量であり、人が制御するなど烏滸がましいとしか言いようが無い。できることといえばそのエネルギーの解放が、我々の生命を脅かさないところで起こる事を願うのみだ。


lunarmodule7 at 10:00│Comments(0)TrackBack(0)

トラックバックURL

コメントする

名前
URL
 
  絵文字