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インタビュー 2009/11/13
小山田いく 漫画家デビュー30周年を語る
ポリシーがないからこそ自分を貫ける


特集 小山田いくの世界

青春ラブコメディ『すくらっぷ・ブック』で連載デビューし、2009年に漫画家デビュー30周年を迎えた小山田いくさん。
恋愛青春群像の描き手として知られていますが、1987年発表の『マリオネット師』以降、環境問題をはじめとする社会的テーマををからめた人生劇の描き手として作品を通した鋭い問題提起を続ける“社会派少年漫画家”としての地位も確立されています。

今回は、小山田いくさんご本人にこの30年を振り返っていただき、幼い頃からの思い出から漫画家デビューのきっかけ、自分の作品作りについて明かしていただきました。

小山田いく(おやまだいく)プロフィール 小山田いく(おやまだいく)
1956年6月10日生まれ。長野県小諸市出身、在住。
1979年、田上勝久名義による「五百羅漢」がビッグコミックに掲載され漫画家デビュー。
同年、「12月の唯」にて「『週刊少年チャンピオン』第13回新人漫画賞佳作」を受賞。
代表作に『すくらっぷ・ブック』『ぶるうピーター』『ウッド・ノート』など。弟は同じ漫画家のたがみよしひさ氏。
2009年漫画家デビュー30周年を迎えた。



●いつのまにか漫画家になっていた

――絵を描くのはお好きだったんですか?

小さいころから絵を描くのが大好きで。新聞紙や広告のチラシの裏、父親が持ってきてくれた黄色の上質紙などにクレヨンで描いてました。
あまりマンガを買ってもらった記憶はありませんが、学研の『学習』や『科学』に掲載されていたマンガはよく見ていました。そのうち永井(豪)先生の初期のギャグ作品『目明しポリ吉』『夕日の剣マン』(註1)の虜になって。ずいぶんマネしたと思います。

学校の図書館の蔵書の1/3を読んでしまうくらい本が好きだったので、小学校4年生ごろには、自分で話を作って絵を描いていました。義務とかではなく、好きで毎日絵を描いているうちに漫画家になってしまった感じなので、特に漫画家を目指したり、“将来漫画家になるぞ”と意識したことはありません。いま思うと、人より才能がないから早く始めたんだと思いますね。漫画家としてデビュー(註2)するころには、もう13年近くオリジナルを描いていたわけですから(笑)。

註1……永井豪の手による初期ギャグマンガ。『地獄の剣マン』に2作品とも所収。

註2……小山田いく先生は、第4回小学館新人漫画賞佳作を「菩薩」にて受賞(「菩薩」はページ数が多かったため雑誌には掲載されず、原稿が返却されたため、そのまま廃棄したという)。その後、「五百羅漢」が1979年ビッグコミック増刊に掲載され、商業誌デビューを飾る。しかし、自身の方向性として少年誌が向いていると考え、『週刊少年チャンピオン』に「12月の唯」を応募、第13回新人漫画賞佳作を受賞する。「「菩薩」と「五百羅漢」はアマチュア時代の習作の一つといった印象で、実質的なデビュー作は「12月の唯」です」(小山田いく)


――『週刊少年チャンピオン』に応募されたのは?

少年誌は『チャンピオン』に決めていました。というのも学生時代『ジャンプ』に応募したことがあったのですが、12回ぐらい落とされて(笑)。もう『ジャンプ』はやめておこう、と。『サンデー』は、「五百羅漢」と同じ会社だったので、青年誌の担当の方に気が引けて。

当時『マガジン』は『巨人の星』や『愛と誠』などハードな作品が多かったので、ちょっと自分の作風には合わないかな、と。自分が読んでいて一番面白かったのが『チャンピオン』でした。『マカロニほうれん荘』や『らんぽう』などわりとギャグマンガが多く、これなら(自分の)絵的にもあってるな、と。

それで『チャンピオン』に「12月の唯」(註3)で応募したところ、はじめは最終候補作で佳作に残らなかったのですが、当時副編集長だった方がすごく推してくださって、手塚(治虫)先生やどおくまん先生に再審査していただき(「週刊少年チャンピオン」第13回新人漫画賞)佳作に入賞したんです。

註3……「週刊少年チャンピオン」第13回新人漫画賞受賞作。『スクラップ・ブック』(1)に所収。

――実質的なデビュー作「12月の唯」以来、サリーちゃんの足(註4)が小山田先生の絵柄の特徴といえますが、何かきっかけはあったのでしょうか?

あれはただ単に技術がなかっただけで(笑)。(絵が)下手なんですね。おそらく漫画家のなかでも三流の中ぐらいなんじゃないかと思います。

本当なら普通の足を描きたいところなんですが、普通の足ってなかなかうまく描けないんですよ。描くとバランスが崩れてしまって。「五百羅漢」が精一杯背伸びして描いている絵なわけですが、変に背伸びしているぶんちょっとダメですね。

註4……アニメ『魔法使いサリー』に登場するキャラクターの足を彷彿とさせる造形であったこと。


●小山田いく流 物語構成法

――1話完結のスタイルも、デビュー以来一貫しています。

『すくらっぷ・ブック』の連載を開始した当時、『チャンピオン』でもストーリーマンガが主流になりつつある時代で、編集部から“毎週、毎週完結する漫画を描く人間がいなくなったなあ”と聞かされていたんです。

その後、秋田書店のパーティで石井いさみ先生にお会いする機会があり、「もう1話完結をやっているのは、俺とお前くらいだから、それだけは守ろうな」とおっしゃられて。“そうか1話完結って、『750ライダー』と『すくらっぷ・ブック』くらいなんだ”とすごく光栄に思いました。以来、1話完結を守っています(笑)。慣れると連続ものよりも描きやすいんじゃないかな、と思います。

10ページ分の話を20ページに広げるのは連続ものの作り方だから、20ページもらったら、30ページ分の話を考えてそれを縮めるように、石井先生から教わって。あるとき、「小山田の漫画は台詞が多い」と僕を推してくれた副編の方に言われ、「台詞を削りたいんだけど一つ台詞を削ると、全部削らなきゃならない。だから削れないんだ!!」と怒られたことがあります。それ以来、極力、台詞は削るようにしていますね。


――『すくらっぷ・ブック』では、現実の時間と同じ時間軸で物語が進行しています。

当時、実際の時間軸の流れと同じで描いている漫画はなかったので、『すくらっぷ・ブック』の連載を開始する前段階で、晴たちが卒業する2年くらいでやめようと決めていました。おかげさまですごく人気が出て、編集部からも続編だったり、もっと連載を続けてほしい、という要請もありました。

でも、これ以上続けると『すくらっぷ・ブック』だけで(漫画家生活が)終わってしまうのではないか、という思いがあって。もっといろんな作品を描いてみたかったんです。『ぶるうピーター』を新連載することで、編集部には何とか納得してもらいました。

『すくらっぷ・ブック』は、実は漫画には描かれていない裏設定の部分でクラス全員の顔や性格、座席の位置などを書いた名簿を作っていました。周りを全部固めたうえで描いていたので、良い感じでまとめられたんです。でも『ぶるうピーター』は、準備期間がまったくない状態で始めた連載で、描けば描くほど広がっていくんです。しかも変な方向に。逆にそれが面白いかも、と思った時期もありましたが、そのぶん支離滅裂なものになってしまったのかもしれません。

始める時点で、こういうキャラクターだったらこう動くだろう、と思いながら描き進めていました。キャラクターがどんどん自分で動き始めたのを実感して。救いだったのは亀行道というキャラクターを生み出せたことです。亀がいることで明確に『すくらっぷ・ブック』と差別化でき、その意味でも亀は本当に思い入れのあるキャラクターです(笑)。


――お話をうかがっていると、漫画家としてこれまでにないものを生み出そうと努力されているのがよくわかります。

ポリシーがないのが自分のポリシーなので、そんなに大層な心づもりはありませんが、全体的に素直じゃないんでしょうね(笑)。それまで漫画の主人公というと、スポーツが得意だったり、あるジャンルにズバ抜けているキャラクターが多く、どこにでもいて埋もれてしまうようなキャラクターを主人公にした作品はあまりなかった。

『ぶるうピーター』の一帆なんかもリーダーとしては迷走してばかりで、そういうところが読者の共感を呼んだのかもしれません。


――最後に、これから漫画家や絵の仕事を目指される方にメッセージをお願いします。

何か描きはじめたら、必ず最後まで描くことですね。イラストなら1枚のイラストを完成させる、20ページの漫画なら、20ページを描ききる。途中でこれはダメだなと思っても、投げださずに最後まで完成させる、それが一番重要だと思います。途中まで描いて、そのまま投げ出してしまう方がわりと多いと思うので。
これは自分の経験ですが、漫画を描き始めたころ、うまくできなくても最後まで描くことだけはやっていました。誰に言われたわけでもありませんが、いまにして思うと、結構役に立っているように思います。

本棚本棚
『植物大百科』や『昆虫図鑑』が並ぶ小山田先生の本棚。「通信教育で、樹医の資格を取ったんです。おりにふれ、植物の知識は漫画にも生かせるので、趣味と実益をかねて(笑)」(小山田いく)

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すくらっぷ・ブック
『すくらっぷ・ブック』
小山田いく 各400円(税別)

恋愛、友情、嫉妬、ケンカ、出会い、そして別れ――。小諸のとある中学校を舞台に、晴ボン達が繰り広げる学園青春マンガの決定版!
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