2016年1月8日の午後、NHK-FMの音楽番組放送中に地震津波警報機能搭載のラジオが誤作動を起こした件を記事にしましたが、この記事へのアクセス数が非常に多い他、ネット上の掲示板やSNSでも当日の誤動作について書き込まれているものをいくつか見かけたので、再度当日の環境を再現して実験してみることにしました。
前回の記事:地震津波警報機 EWR200 の誤動作
まず最初に私が所有している地震津波警報機 ユニデンのEWR200ですが、これは緊急地震速報並びに緊急警報放送に両対応しており、前回までの検証では誤動作時にどちらの信号を受信したかは確認できませんでした。
ネット上ではアイリスオーヤマから発売されている緊急地震速報対応ラジオも誤動作しているとの情報があったため、同社の製品では緊急地震速報だけに対応していることから、今回の検証では緊急警報放送は除外できることが分かりました。
また楽曲についてもAAAの「恋音と雨空」を中心に検証していましたが、その後の調査により豊崎愛生「春風 SHUN PU」の比較的後半部分に該当することも判明したため、下記のような環境を構築して簡易的な検証を行いました。
iPhoneで「春風 SHUN PU」を再生→FMトランスミッターでiPhoneの音声を送信→EWR200で受信待機(モニタリング用として市販のラジオ RAD-S800Nでも受信)
前回は音量や感度を調整しながら、所有しているFMトランスミッター PCK-FMBT1BK が対応している3波のうち88.3MHzで送出を行いながら実験しましたが、今回は残り2波(88.1MHz、88.8MHz)も利用して再検証を行いました。
その結果、88.1MHz、88.8MHzを利用した際に、豊崎愛生「春風 SHUN PU」の2分54秒付近でEWR200が自動起動することが判明しました。
簡易検証で誤動作発生の可能性が出てきましたので、FMトランスミッターを変更して次の構成で再度の検証を行いました。
【用意したもの】
- iPhone6(豊崎愛生「春風 SHUN PU」をダウンロード購入)
- FMトランスミッター TP-185 (76.0~90.0MHzの間で0.1MHz単位で送信周波数が指定できる)
- EWR200(FMトランスミッターの送信周波数に合わせて監視モードにて待機)
- RAD-S800N(モニタリング用)
今回の誤動作は、ラジオ聴取人口が多いと推測される首都圏からの報告が無かったため、主に首都圏で受信されているNHK-FMの周波数 82.5MHzに合わせて実験を行いました。これは周波数の違いで、82.5MHzで送信されたものは誤動作を起こさないのかもしれないという切り分けも兼ねています)。
検証の結果、再現率100%では無いのですが、「春風 SHUN PU」の2分54秒付近でEWR200が緊急地震速報受信時と同じ挙動をすることが確認できました。
まるでNHK-FM東京で緊急地震速報が発報されたかのような画面になりました。
実験場所ではNHK-FM東京82.5MHzが充分受信できますので、FMトランスミッターからの送信電波と混信してNHKの放送波も乗ってきましたが、それでも誤動作を再現することが出来ました。
誤動作を起こした直後にiPhoneで再生していた楽曲を一時停止したら2分56秒でした。再現実験の成功・失敗を分けるポイントとして、楽曲を2分30秒あたりから再生した場合は成功する可能性が高く、2分30秒以後から再生した場合はほとんどが失敗しています。
そのため、緊急地震速報のチャイムと誤認する音階が2分30秒~2分54秒あたりにかけて入っているものだと推測出来ます。そこの音階を確認するとボーカルは無く、間奏部分であることが分かりますので、間奏で使われているピアノを緊急地震速報のチャイムと誤認している可能性が高いと判断出来ます。
また76.0MHzから順に0.1MHzごとに再現実験を行いましたが、一度再現に失敗してしまった周波数でも複数回の検証を繰り返すうちに成功しますので、送信周波数による判定結果の違いは無いと判断しています(当初は送信周波数による判定に違いが出るのではないかと考え、FMトランスミッターを追加購入して再検証を行った次第です)。
モニタリング用のRAD-S800Nは、受信状態が数値化されて表示されますので、それを目安に感度を調整しながら進めました。
82.5MHzでの実験ではラジオ放送が混信していますので、他の周波数で実験を行ったものを動画撮影しました。動画中のFMトランスミッター送信周波数は85.6MHzです。実験場所において、この周波数付近に影響を及ぼす放送波が無いため選定しました(最寄りの放送局で85.6MHzを使用しているのは、埼玉県川口市のコミュニティFM局「FM Kawaguchi」ですので群馬県での混信影響はありませんでした)。
これらの検証により、2016年1月8日にNHK-FM受信待機中の地震津波警報機能搭載ラジオが誤動作した原因は、豊崎愛生の楽曲「春風 SHUN PU」に緊急地震速報のチャイムと類似する音源が含まれており、チャイムの発報と誤認したラジオが誤動作(自動起動)したものと断定することが出来ました。