「画期的だが高過ぎる」 好調・小野薬品は バブルで終わるか
経済界 / 2016年2月8日 13時12分
実際、小野薬品は、オプジーボの製品化に当たって提携した米ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)と協力しながら、国内外で腎がんや頭頸部がん、胃がん、食道がん、さらにはホジキンリンパ腫などの血液がんに至るまで、実に10種類以上のがんに対する臨床試験を進めている。
小野薬品の今16年3月期の研究開発費は売上高比30%超の460億円に達する見込みだが、ほとんどはオプジーボの適応拡大関連の支出だ。また、免疫チェックポイントにもいろいろな種類があるため、これらの働きを複数の抗体などで抑え込めば、さらに劇的な効果が見込める。現在、売上高1400億円程度の同社だが、オプジーボだけで、現在の事業規模に匹敵する売り上げが見込まれる。
高額薬剤で国が滅ぶ
小野薬品を一気に3千億円規模の会社に引き上げるだけのポテンシャルを秘め、抗がん剤市場の勢力図を塗り替えようとしているオプジーボだが、ここへきてその成長性に疑いが出てきた理由は明白。とにかく値段が高過ぎて、日本の医療費財政では賄いきれないことがはっきりしているからだ。
税金と社会保険料を財源とし、平等性が何よりも尊ばれる日本で、非小細胞肺がんの場合、年間治療費2500万円に上るオプジーボをがん患者がこぞって使えば、国民皆保険制度を破綻させかねない。こうした懸念が昨年から持ち上がり、関連学会や著名ながん専門医などが問題提起するようになった。
25年には、団塊世代が医療費の大半を支出する75歳以上の節目を迎える。こうした危機的状況を迎える中、今年4月の診療報酬改定と同時に実施される関連制度改革は、薬剤費の伸びを抑え込むための仕組みがふんだんに盛り込まれた。一番の目玉は、年間売上高が1千億円を超えた新薬は、薬価を大幅に切り下げるというルールだ。
要件次第だが、「売れ過ぎたら薬価を切り下げる」という乱暴なルールを国が持ち出したのは、超高額薬剤の存在に危機感を持っていることの証左だ。
向こう5年ほど、オプジーボの快進撃は続きそうで、ある市場調査会社の試算によると、20年には全世界で売上高8千億円に到達すると見られている。だが、少なくとも日本では同剤も早晩、薬価を大幅に引き下げられてしまうという見方は、既に証券市場でも支配的だ。
高額薬剤に対する批判的な声はお膝元の日本だけでなく、薬価が自由に決められ、しかも値上げが頻繁に行われる米国もまたしかりだ。今年は大統領選挙の年でもあり、薬価問題は大きな論争を呼んでいる。
こうした世界的な潮流を踏まえると、オプジーボの製品化で一躍脚光を浴びた小野薬品も、実は研究開発力でも販売力でもないところで、大きなリスクを抱えていることが分かる。
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