震災と国会 政治の力集めて支援を
熊本地震が発生してきょうで1週間となる。九州地方では依然として余震が相次ぎ、震災関連死の防止などに政府、自治体が対応を迫られる緊迫した状況が続いている。
国会は参院選を控え与野党対立が強まっている。政策論争は必要だが、震災への対応に政治的な駆け引きが入り込まぬよう、各党は自覚する必要がある。国会審議を通じて政府の対応を点検するとともに、具体的な提案をこころがけてほしい。
熊本地震は国会日程にも直接、間接的に影響を与えている。安倍晋三首相と岡田克也民進党代表らによる党首討論は延期された。後半国会は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の承認案と関連法案の審議が焦点だが、今国会の承認・成立はいっそう困難な状況となった。
TPPは本来、審議日程を十分に確保して問題点や不明点を解明し、国民の理解を広げていくべき課題だ。与党は月内の衆院通過を目指していたが、秋の臨時国会への先送りは現状ではやむを得ないだろう。
震災対応は政府の責任だが、国会が果たす役割も大きい。衆参両院の予算委員会や災害特別委員会などで現地が抱える問題を点検し、今後どんな支援が重要かを議論する必要がある。首相と岡田氏らによる協議も重ねてほしい。
政府は熊本地震に伴う費用を当面は予算の予備費から充当する。だが、与党には復旧事業などを想定し、補正予算編成を求める意見もある。今国会は6月1日に会期末を迎える。参院選を控えた日程の制約もあるが、支援策の中身によっては会期幅も柔軟に対応すべきだろう。
被災地の深刻な事態を受け止め、政治家は発言に十分注意すべきだ。
おおさか維新の会の片山虎之助共同代表は熊本地震が政局や政治日程に与える影響についてふれ「大変、タイミングのいい地震だ」と語ったという。直後に「言葉の使い方が不適切だった」と撤回したが、多くの犠牲や長引く避難に苦しむ人たちの感情を逆なでする発言だ。これでは政治家は結局、被災地のことを真剣に考えていないのではないかと取られかねない。
2011年の東日本大震災の際は当時の菅直人首相(民主党代表)が大連立を念頭に自民党の谷垣禎一総裁に協力を要請したが、唐突だったことなどから大連立は実現せず、逆に混乱を生んだ。しかも、震災対応のさなかに与党の民主党が内紛に揺れ、政治への信頼を損ねてしまった。重い教訓である。
国会は政策を論じ合う場だ。ただし、震災対応をめぐっては幅広く意見を出しあい、一致点を探る姿勢が特に求められる。被災地のため政治の力を集め、支援を急ぐべきだ。