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2016-04-21

有田芳生氏が過去に「自閉症」とテレビやネットを論じた著作が、実にトンデモに見える件

| 有田芳生氏が過去に「自閉症」とテレビやネットを論じた著作が、実にトンデモに見える件を含むブックマーク 有田芳生氏が過去に「自閉症」とテレビやネットを論じた著作が、実にトンデモに見える件のブックマークコメント

蔵書整理をしてたら、唐突に本が出てきたシリーズ。

内容(「BOOK」データベースより)

深刻なイジメやあいつぐ少年事件。その背景には、過去10年余りの間に、劇的に発展したメディアの影響があった。オウム真理教による一連の事件が人々の記憶から風化していくなかで、当時繰り返し流されたニュース映像を見続けた子どもたちの心は、大人が気づかない間に蝕まれていた。インターネット携帯電話など、個人に向けて発信されるメディアからの情報が氾濫する現代、親はわが子をどう守っていけばいいのか?TVでは言えなかったメディアの危険性に対する警告。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

有田/芳生

1952年、京都府生まれ。出版社勤務を経て、フリーとなり、「朝日ジャーナル」で霊感商法批判キャンペーンに参加。「週刊文春」などで統一教会報道都はるみテレサ・テンなどの人物ノンフィクションを執筆。テレビ番組コメンテーターを続けた後、2007年参議院選挙では新党日本から立候補する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


この本は、2012年にこのブログで紹介したあと、どっかに見つからなくなってしまったのが、今回の蔵書整理で再発見された。

そいで、パラパラと読み直したのだが。


・・・・・・・その期間に流行って、その間に批判書も出て注目を浴びた「江戸しぐさ」とダブって見えてしまったりもした。

2012年は穏当な表現にとどめたのだが、もう少し具体的に再紹介したほうがいいと思い、再度記事にする(手抜きでブログのネタを再利用、という面もなくはない(笑)



では、過去の文章を少し天才使用。

現在活躍している、国会議員の著作にあるのだが・・・

いろんな人にインタビューしてコメント引用しつつ、自分の考えも述べる形式の文章だが・・・小見出し

テレビを消して想像力を取り戻せ!!」

とある。

ルナ子ども相談所所長の岩佐京子さんは「テレビを消せ」という指導を、30年以上前から行っている。

保健所で3歳児の心理相談をしていたとき、子どもたちの異変に気がついたのです。しゃべらない、理解力が低い、落ち着かない。多くは自閉症だと診断されるのですが、私が見てきた限りではそう単純ではなかった。

岩佐さんが行った指導とは、テレビビデオをともかく見せるな、というものだった。

異変のある子どもたちの生活は、とにかくテレビ漬けでした。しかしテレビを消すことで症状が緩和される子どもがたしかにいるのです。必然的に親の目が子どもに向かうというメリットも見逃せない」

自閉症が報告されるようになった昭和30年代が、テレビの普及率の高まりと重なっていることにも岩佐さんは注目している。

・・・(略)川崎医科大学の片岡直樹教授は警告する。

小児科医を30年近くやっていて痛感するのは、生まれて3、4カ月したらずっとテレビを見ている子どもが増えていることです、こういう子どもたちはテレビを切ると泣き、つけると泣きやむ。多動や言葉が出なくなる原因はここにもある(略)」

い、い、いいのかなあこれ。

少なくとも著者は、これらの意見を批判的に検討するとかではなく、全体的に賛同肯定的な文脈で取り上げていることは間違いない。少なくとも直接的な疑念の表明はない。

これと似たりよったりのアレではないかなあ?

維新の会「わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できる」

http://www.tokuteishimasuta.com/archives/6177381.html

 

維新の会に続く“発達障害”誤解発言、議員連盟「予防は簡単」

http://www.ikuji-support.com/news_UXHcwS1FS.html



というか、さっき引用した本の著者(その後国会議員になった)は、アメリカの小児学会1999年に「子どもテレビ氏長時間が1日に1−2時間を越えないように指導するのは、小児科医の役割である。とくに2歳未満の子どもにはテレビを見せるべきではない」と勧告し、その理由として「暴力や性描写のシーンが子どもの行動を歪めるだけでなく、2歳未満では脳の発達に問題が生じる」とした例についてこう述べている。

この勧告に対して科学的な実証性に乏しいとの批判が出された。

科学的実証は必要だ。しかし子どもたちを育てている両親や教育関係者にとっては、そこに「きざし」があれば対策を求めるのは当然のことだ。特定の子どもたちに問題シーン満載のテレビを長時間見せ続け、数年後に「問題あり」との結論が出たならば、誰が責任を取るというのだろうか。神戸少年事件が社会を震撼させていたとき、著名な精神科医が「こういう事件は10年に1度くらい起きるんです」と私の横で語ったことを思い出す。日々子どもと接しているものが知りたいのは、統計的事実ではなく、「わが子(孫)」ができるだけ問題行動を起こさずにすくすくと育つ道筋なのだ。「100人の死は悲劇だが100万人の死は統計だ」と述べたのはナチズムを支えたアイヒマンだ。人間を巻き込む事件を統計的に捉えるところからは、問題解決への方向は見えてこない

・・・こういうふうに主張しているから、やはり岩佐氏の自閉症テレビの関連付けにかんしても、似たスタンスなのではないかと思われる。

い、い、いいのかなあ。


敢えて好意的にみるなら

まあ「疫学的論議(仮説)」はある程度の”不謹慎”や”不都合な真実政治的に正しくない)”を感じても、それで萎縮するよりはとりあえず提示し、検証を待つべきだ・・・という話も分からないではないのですよ。

麦飯とかっけ予防の関係、医者や看護婦の手洗いと患者の死亡率だって最初は鼻で笑われていただろうし。

また「実証性っていっても、こどもを実際に2標本に分けて、片方に俗悪テレビを見せて比較するわけにはいかないじゃないか」というのも、確かに社会学のある弱点をついてはいる、のだが・・・・

さすがにそれ(仮説)にしたって、ピンからキリまであるんじゃないか?とは思うのだが。

自閉症が報告されるようになった昭和30年代が、テレビの普及率の高まりと重なっている」というのも偽の相関じゃないかなあ・・・


アリバイも作りたいことであるし、「でもぼくは、自閉症(と診断される症状)はテレビ視聴とは関係ない、肉体的な病気だと思いますよ」、とは言っておきたい。小児科一筋30年、とか、昔保健所勤務、いま「子ども相談所所長」の人より、実例を見る数は少ないけれども。

いや、再紹介ではもう少し言葉をつよくして言うけど、これ「トンデモ」じゃないかしら

いまや小学生からパソコンを手にする時代。テレビと同じく精神への浸透はストレートだ。かりにゲーム感覚であってもそこで詳細な会話が成り立てば、ディスプレイに組み込んだ画像少年(※いわゆる神戸事件の「少年A」)にとっての「バモイドオキ神」のような「架空」の「神」となることは十分ありうる。こうした時代に子どもたちは生きている。(p29)

テレビのない時代に情報想像力を通して自分のものとなっていった。大正時代の子供たちが忍者ごっこをするときは…想像力を働かせて、それぞれの猿飛佐助霧隠才蔵を作り上げた。身体を通して想像した忍者増は、それほど飛躍した行為を誘発しない。とことが……テレビ映画などの映像は人間の認識にストレートに入り込み、その行動にまで影響を与えるのである。(P45-46 )

トルコでこんな事件が起きている。4歳から7歳の子供たちが高い建物から飛び降りて大けがをしたのだ。…原因は日本から輸出された人気アニメポケモン」だった。テレビを見ているうちに自分にも「超人的な能力」があると信じ込んだ上での行動だった。よく指摘されるバーチャルリアリティという問題だ。

(P46)

…(教育用)ビデオ否定的影響は、時を経た最近になって明らかになってきたようだ。かつて有名早期教育エリートだった子どもなかにも「ひきこもり」などのケースが生まれていることがわかってきた(P66)

テレビの世界から離れて親がせいいっぱいかわいがってあげることです」―筑波学院大学の門脇厚司学長はそうアドバイスする。「0歳から6歳まではひたすらかまい、かわいがる。なんでもいいのです(後略)」(P79)


いやあ、なんちゅうかね…やっぱり「江戸しぐさ」とか、そのへんの話と親和性があるわ。

テレビ自閉症の関係とか

科学的実証性は必要だが、「きざし」があれば… という議論も含めて。


この本は2008年に出版されたのだが、やはり内容的には、かなり乱暴だと思うのであります。


余談 こんな一節もあった。

f:id:gryphon:20160421082142j:image:w640

いや、これは本題から外れるけど、モー娘。に関する発言に、なにがあったというんですか、いったい(笑)

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