強い地震が相次ぐ熊本県内のごみ焼却場が被災し、ごみの処理が滞っている。避難所や各家庭で山積みになったごみの回収はようやく始まったが、仮置き場は満杯で焼却処分の見通しは立っていない。多くの住民が集まる避難所では衛生面の悪化を懸念する声もあり、国や自治体が対応を急いでいる。
地震で大きな被害を受けた益城町。ごみの仮置き場となった旧小学校のグラウンドにはごみなどがうずたかく積まれ、処理を待っている。同町の公民館に避難する住民の一人は「においがひどいし、感染症などが広がらないか不安だ」と顔をくもらす。
県災害対策本部によると、同町のごみ処理施設「益城クリーンセンター」は震度7を観測した14日の地震で2基ある焼却炉が損傷。建屋にもひびが入るなどして稼働を停止した。
同町内ではごみを処理できない状態となり、避難所にごみ袋が積み重なる事態に陥っている。避難所から仮置き場への搬送がようやく始まったが、処理ができないとごみが滞留し続ける。
熊本市でも2カ所あるごみ焼却場のうち、1日約600トンを処理できる東部環境工場のボイラーが14日の地震で被災し、焼却炉を停止した。家庭や避難所から出る生ごみなど可燃ごみは受け入れているが、工場内の保管場所が満杯になる恐れがあるという。
市の担当者は「焼却場の復旧が遅れると、ごみの持って行き場に困ってしまう」と頭を悩ませている。
名古屋大減災連携研究センターの平山修久准教授(衛生工学)は「ごみ処理が遅れると、においやハエなどで生活環境が悪化する。避難生活が長期化すれば被災者のストレスが増す」と指摘する。簡易トイレの汚物回収が進まなかったり、消毒された水の供給が滞ったりすることが重なると、感染症が発生する懸念もあるという。
平山准教授は「避難所ではごみを分別し、腐敗しやすい生ごみはできるだけ密閉し、生活スペースから離れた位置で保管することが重要。国や他自治体は物資供給と並行し、被災地からのごみ回収を支援すべきだ」と話している。
一方、災害廃棄物問題で環境省は20日までに熊本県庁に現地事務所を設けた。職員を市町村に派遣して処理方法の助言を続ける。被災地では様々なごみが出るが、分別が十分にされないと最終処理が遅れる。現地事務所の担当者は「災害廃棄物の分別処理は初動が肝心だ」と話す。
家屋の屋根や柱などのがれきの処理も今後見込まれる。環境省は有識者による災害廃棄物処理支援チームを21日にも県に派遣する。がれきの発生量や仮置き場の必要面積などを推計し、各自治体のがれき対策に生かす方針だ。