熊本のコンビニで品薄 なぜ

大江麻衣子記者,鈴木啓太記者
今月14日の夜以降、地震が相次いでいる熊本県では、今も水道やガスの供給が止まったままの地域があり、大勢の人たちが避難所などで不自由な生活を余儀なくされています。身近なコンビニは、ほとんどの店舗で営業を再開していますが、暮らしに欠かせない水や食料品などは品薄の状態が続いています。
なぜ、コンビニに十分な商品が届かないのでしょうか。取材班の大江麻衣子記者(福岡放送局)と経済部の鈴木啓太記者の報告です。

弁当やおにぎりに客の列

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熊本市中央区にあるローソン「熊本八王寺町店」が営業を再開した18日。
店の前に配送のトラックが止まっているのを見た人たちが次々と集まり、店内ではすぐに10人ほどの列ができました。中には避難所で生活している人もいました。
届けられた弁当やおにぎりは合わせて130個。店では、多くの人に買ってもらうため、1人5品までに制限しました。列の先頭にいた男性はじっくりと吟味しておにぎりを5つ手に取り、レジに向かいました。ほとんどの人が制限いっぱい購入し、商品は20分ほどで3分の2以上が売れました。
おにぎりや弁当などは通常1日に3回入荷しますが、この日は1回限り。千葉惇貴店長は「商品を手にしたお客さんから、『ようやく買えた』という安どの声をいただきました。商品の確保に全力を挙げたい」と話していました。

在庫があるのに店では品薄

ローソンは、これまでにのべ200人の社員を全国各地から熊本県に派遣しました。東日本大震災の経験を踏まえ、被害状況に応じて店舗を5段階に分け、応援の社員を集中させて店舗の再開を支援しています。20日正午の時点では、熊本県内の141の店舗のうち136店舗が営業しています。
また大手コンビニ3社でみても、20日正午の時点でおよそ97%の店舗が営業を行っているということです。
しかし、これまでに取材などで訪れた熊本市中心部のコンビニでは、弁当やおにぎり、水やカップラーメン、それにレトルト食品などが品薄になっています。こうした状況についてコンビニ各社は、品薄の商品は、物流センターなどに在庫がないわけではないとしています。

運ぶ人が足りない

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では、なぜ商品が行き渡らないのでしょうか。
熊本県内の「ローソン」の店舗に弁当やおにぎりなどを配送しているのは、地震で深刻な被害を受けた熊本県益城町にある物流センターです。
通常は、まずここで商品を店舗ごとに仕分けし、トラックで店に届けます。
しかし、地震で設備の一部が壊れたうえ従業員の多くが被災したため、仕分け業務は一時、福岡県の別のセンターに移され、益城町のセンターは配送業務に専念しました。
仕分け業務は20日から再開されましたが、トラックのドライバーの中には、壊れた自宅の後片付けや体調不良を訴える家族のケアなどで出勤できない人がいて、確保できたドライバーの数はふだんのおよそ3分の2の15人程度だということです。人手が足りず、商品の配送に遅れが出ているのです。

寸断された道路と渋滞も障害

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さらに、道路の寸断とそれに伴う渋滞によって配送が遅れる状況が生まれています。例えば、通常は6時間で行けるルートに倍の12時間かかったり、被害の大きい阿蘇地区に配送に向かったトラックの戻りが、翌々日になったりしたこともあったといいます。
また、今も余震が続いているため、周囲の状況を把握しづらい夜間の配送を控えざるをえない事情もあり、各店舗に十分な商品を届けられず、品薄になっているのです。

対策を進めるも解消のめど立たず

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事態を重くみたローソンは対策に動き出しました。
19日には、九州地方を統括する福岡市の事業所と東京の本社をテレビ電話で結んで対策会議を開きました。
会議では、現場の担当者が「トラックとドライバーの確保をお願いしたい」と強く訴えました。本社の玉塚元一社長は「非日常なのだから、素早く、激しく意思決定をしよう」とげきを飛ばし、対策として、運送会社にドライバーの確保を依頼することが決まりました。
また、熊本県内の各店舗に配送する商品の種類や数を統一することにしました。人手が足りないなか、仕分け作業の負担を減らすためです。さらに、1つでも多くの商品を運ぶためトラックの積み荷に隙間ができないようにしました。

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ローソン九州商品部の岩崎廣幸部長は、「血管がつまったように、商品はあっても店まで届かない状態だ。厳しい状態が続くが、なんとかして被災者に商品を届けたい」と話していました。
20日には熊本空港に1万8000個のパンを空輸するなど、次々に対策を進めていますが、品薄を解消する具体的なめどは立っていないということです。

一刻も早く必要な人に

熊本県内のコンビニは、店によって程度は異なるものの品薄の状態が続いています。一連の地震の影響でふだんどおりの生活ができない熊本県の人たちにとって、手間をかけずに食べられる食品は欠かせないものです。
町のあちらこちらにある身近な存在のコンビニ。必要とする人に行き渡る態勢を一刻も早く作ることが求められます。