「たまたま被災者になりましたけど、逆に被災地まで出向く時間をかけず、発生直後から動き出せました」。雲仙・普賢岳の噴火以来、阪神・淡路大震災、東日本大震災など、全国の被災地で通算8万7000杯のラーメンの炊き出しを続けてきた益城町のNPO法人「九州ラーメン党」代表浜田龍郎さん(71)は19日、スープの仕込みをしながら笑顔で言った。

 14日夜の前震、16日未明の本震で、益城町は壊滅的な被害を受けている。浜田さんの自宅もメチャクチャだ。それでも18日から、ラーメンの炊き出しを始めた。地震発生以来、近所の住民たちに200食のラーメンを振る舞った。「みんな食べていない。避難所では家族にパン1個とか冷たいおにぎり1個。温かい食事で喜んでもらえました」。

 麺は冷凍麺を常備しており、スープや、わかめ、キクラゲなどの乾物は、いつでも被災地に飛べるように用意してある。水は、良質な湧き水がある。浜田さんが炊き出しを始めると、近所の知人たちが、次々に食材を持ち寄ってくれた。植木町からラーメン店の友人は麺を、近所の農家の友人はネギやトマトを持ち寄ってくれている。

 11年の東日本大震災では、南三陸町、石巻、気仙沼、いわきなど、宮城、福島両県の避難所約20カ所で炊き出しを行った。12年以降も毎年、仮設住宅などで炊き出しを続けている。今年の3月11日にも東北を炊き出しで回り、帰宅した直後の地震だった。「ありがたいのは、東北からすごいエールがあること」。浜田さんのラーメンを食べた東北の被災者たちから「生きてるか」「何が必要だ」と連絡が入った。すでに、東北の被災者有志が「困った時はおたがいさま」と支援金を募り始めているという。全国の被災地での1杯のラーメンの縁が、熊本に集まっている。

 「だからこのラーメンは、東北の被災者のみなさんからの炊き出しです」。復旧、復興へは長丁場になりそうだが「体力が続く限り、ラーメン作ります」と話した。【清水優】