いまの鍼灸治療院で使われている針は、ほとんどがステンレス製の使い捨て針です。しかし昔は針の使い回しなんか当たり前で、針が劣化によって折れてしまい、体内に埋没する折針事故なんていうものがありました。
また、埋没針という意図的に金の針を体に埋め込む手法もあります。
身体に埋まった針のほとんどは無害
埋没針や折針事故について研究された論文があります。
折針の移動に関する実験的研究(針灸文献データベース)
25kgのシェパードに7本の針を埋没した。
- 前足、後ろ足太ももの針はあまり移動しなかったが、肩に刺したものは最も大きく移動した。
- 腰に埋めた針の一部は脊髄内に入り込んだ。
- 首に埋めた針は不明。おそらく抜けた。
また、実験結果では無いものの、「うなじ」の部位で埋没針や折針事故があった例も取り上げられており、
頭痛や吐き気、脳脊髄液に血液が混入することもあり、可能性関節炎、腹膜や臓器の損傷、神経麻痺、頑固な神経痛を起こす。
とも書かれています。
首や背骨周辺以外の部位で埋没針をしても、それほど大きな事故につながる可能性は低いのかもしれません。
嘘ついて針を飲んでも平気な場合がある
論文の最後の方で「自殺目的の縫い針やヘアピンを飲んだ人」の話もあり、その針は「皮下および便中に出てきた」という話しが紹介されています。
もし、誰かと約束したり指切りしたときに「嘘ついたから針千本飲ます!」って本気で迫られたとき、数か月に分けて飲んでいけば案外助かるかもしれません。
ただ、便中はともかくとして、皮下に出てきたということは、体内のどこかから内臓や筋肉の動きによって出てきているわけですから、大事な臓器を傷つける可能性も大いにあります。
このへんは「安易な約束をしない」「言葉をそのまま本気にする人に気を付ける」というのが大事かもしれません。なるべく針を飲む環境に身を置かないことが大切です。
埋没針をする先生への気遣い
最も気になったのが、最後の文章
意図的に治療目的で折針を行う埋没針は、治療効果を期待できる場合があるとしても、以上のような観点から安全上問題があるので行うべきではないと考える。
この論文を書いた人の最後の文。この文章の素晴らしいところは、埋没針を行う鍼灸師に気を使い、一方で「埋没針なんて危ないばっかりで効くとは思えないよ」という鍼灸師にも配慮してます。きっと、この一文を書くために相当長い時間考え抜いたのではないでしょうか。
ブログを書いていると、誰かの記事に賛成ではない意見を書きたくなることがあります。普通に書いてしまうと相手を傷つける場合があり、そこをどう「言いたいことを伝えつつも攻撃してるわけじゃないですよ」という文章にするか。これに頭を悩ませることがあります。伝え方が悪いと「余計なお世話だ!」とかなってしまいますからね。