東京大学社会科学研究所と株式会社ベネッセホールディングス社内シンクタンク「ベネッセ教育総合研究所」は、 2014年に「子どもの生活と学び」の実態を明らかにする共同研究プロジェクトをスタート。子どもの生活や学習の状況、保護者の子育ての様子を複数年にわたって調査し、それらが子どもの成長とともに、どのように変化するのかを明らかにすることを目指している。
今回報告する「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」は、その第1回調査(Wave1)であり、小学1年生から高校3年生の親子約1万6000組のデータを分析。12学年にわたる親子の実態を捉えることができる大規模調査は、国内では類を見ないものであり、子どもの成長・発達、子育て・教育のあり方を考えるうえでの貴重なデータとなる。
第1回の調査では、小学1年生から高校3年生までの親子について、「生活」をはじめ、「学習」「人間関係」「親子のかかわり」などを調査し、社会で活躍するためのベースとなる「自立」の基礎が、どの成長段階でどのくらい身についているのか、その実態や課題を分析した。
子どもが自立する上では、学習面で成果を上げるだけでなく、自分で生活する力を高めることや精神的に大人になっていくことも必要。本プロジェクトでは、毎年調査を重ねることで、親子の「成長・発達」のプロセス(因果関係)や「自立」を促す要因を明らかにしていく。調査の主な結果は以下の通り。
■半数の保護者が「子どもが大人になったとき自立できるか不安である」と回答。とくに、男子の保護者で不安が高い
保護者に「お子様の教育について、次のことはどれくらいあてはまりますか」と尋ねたところ、小1~高3生のいずれの学年でも、約半数の保護者が「子どもの将来の自立への不安」と回答。その理由には、生活習慣の自立が十分でないこと、友だち関係や将来の進路に対する悩みや気がかりが多いことなど、さまざまな要因が影響していると考えられる。とくに男子の保護者では、それが強くあらわれている。
■保護者の悩み・気がかりのナンバー1は「整理整頓・片づけ」。小学生の保護者は「友だちとのかかわり」、中・高校生では「学校の成績」「進路・学校選び」や「携帯電話やスマートフォンの使い方」に悩む保護者が増える
保護者に「あなたは、お子様やあなたご自身のことについて、次のような『悩みや気がかり』がありますか」と尋ねたところ、全学年でトップになったのが「整理整頓・片づけ」(57.1%)。ただ調査結果から、子どもの成長段階によって保護者の回答傾向が異なることもわかった。
具体的には、小学生の保護者では「友だちとのかかわり」が第2位(47.5%/小1〜3生、42.3%/小4〜6生)と子どもの成長や人間関係を気にしている様子。一方、中・高校生の保護者は「学校の成績」(45.7%/中学生、35.7%/高校生)、「進路・学校選び」(43.6%/中学生、51.5%/高校生)、「携帯電話やスマートフォンの使い方」(35.5%/中学生、52.0%/高校生)が目立つ。中・高校生の保護者は子どもの進路、子どもの遊びやメディア利用に悩んでいるのが目立つ。■「将来の目標がはっきりしている」を肯定する子どもは半数程度。中学生がもっとも低く、高校3年生で6割になる
子どもに「あなた自身のことについて、次のようなこと(「将来の目標がはっきりしている」/「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」/「自分でできることは自分でする」)はどれくらいあてはまりますか」と尋ねた。「将来の目標がはっきりしている」かどうかについては、およそ5割(50.1%)が「あてはまる」と回答(「あてはまる」=「とてもあてはまる」+「まああてはまる」の計。以下同)。全学年にわたり、男子より女子の方が「あてはまる」と回答している割合が高いのが特徴的だ。
「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」かどうかについては、全学年で58.3%が「あてはまる」と回答。成長段階別にみると、小4〜6生で65.3%、中学生で56.2%、高校生で53.4%と、50〜60%台で推移している。
「自分でできることは自分でする」かどうかについては、全学年だけでなく、小4〜6生、中学生、高校生すべてで80%以上が「あてはまる」と回答。ここでも全学年にわたり、男子より女子の方が「あてはまる」と回答している割合が高いのが特徴的だ。
■保護者から「励まし・応援」を受けている子どもは、将来の目標や行動力を持っている傾向が強い
子どもに「あなた自身のことについて、次のようなこと(子どもの将来の目標・行動力などの有無[中学生、保護者のかかわり別]/子どもの将来の目標・行動力などの有無[中学生、保護者のふだんの活動別])はどれくらいあてはまりますか」と尋ねた。まず、保護者が「やりたいことを応援してくれるか」どうか別にみた場合、「とても応援してくれる」保護者の方が、子どもが「将来の目標がはっきりしている」「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」「自分でできることは自分でする」「一度決めたことは最後までやり遂げる」で「あてはまる」と回答する割合が高い。
また、保護者が「何にでもすぐに口出しをする」かどうか別にみた場合、「口出しをしない」保護者の方が、子どもが「将来の目標がはっきりしている」「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」「自分でできることは自分でする」「一度決めたことは最後までやり遂げる」で「あてはまる」と回答する割合が高くなった。
そして、保護者が「さまざまな活動を行っているか」どうかの点からみた場合、さまざまな活動を行っている保護者ほど、子どもが「難しいことや新しいことにいつも挑戦したい」「一度決めたことは最後までやり遂げる」で「あてはまる」と回答する割合が高いこともわかった。【補足データ1】子どもの感情面の経験には、性差が大きい
子どもに「この1年くらいの間に、あなたは次のようなこと(「夢中になって時間がたつのを忘れる」/「うれしい思い」「くやしい思い」/「感動して泣く」)を経験しましたか」と尋ねた。特徴的だったのが、いずれも男子より女子の方が選択率が高く、差も大きいこと。小4〜高3生全体で、4〜30ポイント差がみられる。
【補足データ2】子どもは、どの話題についても、父親より母親とよく話している。また、学校段階が上がっても「社会のニュース」について話す比率は高まらない
子どもに「ふだん、お父さんやお母さんと、次のことについてどれくらい話をしますか」と尋ねた。その結果、男子・女子にかかわらず、どの話題についても、父親より母親とよく話していることがわかった。小4~6生では、「学校での出来事」「友だちのこと」「勉強や成績のこと」を話す比率が高いが、中・高校生になるにつれて、「将来や進路のこと」を話す比率が高まる。ただし、「社会のニュース」について話す比率は高まらない。
【調査概要】
調査方法:郵送およびインターネットによる自記式質問紙調査(回答者がどちらかを選択)
調査時期:2015年7~8月
調査対象:全国の小学1年生~高校3年生の子どもとその保護者(小学1~3年生は保護者のみ回答)
配布数:2万1569(子ども1万6065)、
有効回収数:1万6776(子ども1万1982)
有効回収率:77.8%(子ども74.6%)
※本研究プロジェクトの調査モニター対象