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【社説】

衆院選挙制度 改革の名に値しない

 国会議員を選ぶ際、「一票の不平等」をなくす努力をすることは当然だが、「死に票」の多い小選挙区制を制度の基本とする限り、一時しのぎでしかない。とても「選挙制度改革」の名に値しない。

 与党と民進党が十五日、衆院小選挙区の「一票の不平等」を是正するための法案をそれぞれ国会に提出した。大島理森衆院議長の下での一本化調整を断念し、別々に法案を提出することになった。

 両案は現行方式よりも議席配分に、人口比をより正確に反映できるとされる「アダムズ方式」を導入することでは同じだ。

 違うのは導入時期。与党案が二〇二〇年の国勢調査後とし、当面は小選挙区で「〇増六減」、比例代表で「〇増四減」の定数是正を行うのに対し、民進党案は一〇年の同調査に基づいて直ちに小選挙区で「七増十三減」、比例代表で「一増五減」の是正を行うとしている。

 アダムズ方式導入は、衆院に置かれた諮問機関の答申に基づく。

 最高裁の「違憲状態」判断を受けて各党が是正策を協議したが結論が得られず、検討を委ねた経緯があり、答申内容を直ちに実行に移すのが、筋といえば筋である。その点、導入を先送りする与党案は批判されても仕方があるまい。

 ただ、アダムズ方式で議席配分しても二倍近くの「一票の格差」は残る。導入時期は違っても小選挙区制を柱に据える以上、不平等是正には限界がある。

 国会議員は地域の代表でなく、全国民の代表だ。なぜ小選挙区制に固執する必要があったのか。

 両案は二十二日の衆院本会議で提案理由説明が行われ、審議入りするが、両院で多数を占める与党案の方が今国会で成立する見通しだという。

 とはいえ小選挙区の区割り見直しに一年程度かかる。その間、安倍晋三首相が衆院解散に踏み切れば、「違憲状態」と指摘された現行制度のまま衆院選が行われることになる。憲法や司法を軽視した政権の傲慢(ごうまん)との誹(そし)りは免れまい。

 衆院に小選挙区比例代表並立制が導入されて二十年がたとうとしている。政権交代を可能にした半面、議員の質の劣化も指摘されるようになった。参院の一票の不平等拡大も看過できない。

 衆参両院の役割分担やそれぞれの院にふさわしい議員の選び方に踏み込んで抜本改革を検討すべき時期にきているのではないか。その場しのぎの定数是正や制度の手直しでは、もう限界だ。

 

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