子どもたちの学力を点検する仕組みを、本格的につくり直すべきだ。

 文部科学省が今年も小6、中3の全員を対象にした全国学力調査を行った。07年から10年目の実施である。

 調査によって、客観的なデータを重んじる姿勢が教育行政に広がった。知識を覚えるだけでなく、活用する力が大切だということを、教育委員会や学校に知らせる効果もあった。

 その半面、この調査があまりに多くの課題を抱えていることは明らかである。

 調査が全員参加方式で行われるため、自治体や学校のランキングづくりが可能になり、序列化を生んでいる。実施や採点などで数十億円ものコストがかかることも問題だ。

 年ごとに設問の難易度が違い、学力が上がったかどうかわからないこともアキレス腱(けん)になっている。

 調査が始まるきっかけの一つは、ゆとり教育を批判された文科省が、学力が低下しているかどうかのデータを持っていなかったことだった。その課題は、なお解決できていない。

 学校では、指導に生かすという名目で、調査の前に過去の問題を解かせる対策が広がっている。これでは素顔の学力をつかめない。

 調査のねらいの一つである、教育政策の検証そのものも立ち遅れている。

 そのため、文科省は政府の経済財政諮問会議から、データを踏まえた予算要求をするよう求められ、今年から新たに教育政策の実証研究を始めなければならなくなった。

 いま見直すべきは、この調査のあり方だけではない。

 小学校から高校までの子どもたちの学力を点検するために、どんな目的でどんな調査をするかを改めて検討することだ。

 欠かせないのは、学力の変化を継続的に追いかける調査である。家庭の豊かさの学力への影響や、指導方法と成績の関係といった具体的なテーマの調査も要る。

 いずれも全数調査ではなく、サンプル調査で十分だ。

 高校生の基礎学力の定着度合いをみる「高等学校基礎学力テスト」が19年に始まる。

 このテストとの関係も考え、調査を組み合わせて全体の設計図を描くことが求められる。

 教育政策が、実態をふまえた議論をきちんと尽くさないまま印象論で決まり、学校に丸投げされる。

 そんな現状を変えるためにも文科省の果たす役割は大きい。