モノのインターネット化(Internet of Things)の加速が止まらない。家電や自動車、時計など、ほんの数年前までインターネットと無縁だったモノたちが、次々にネットワークにつながっているためだ。そして今、現実世界とサイバー世界が連動することで生み出される価値に多くの企業が注目している。
そんなIoTへの取り組みをいち早く始めたのがGE(ゼネラル・エレクトリック)だ。2012年に業界に先駆けて“インダストリアル・インターネット”のビジョンを掲げ、産業機器から得られる稼働状況データの収集、分析を行うソリューションの提供を始めた。
「以前から製造業がITを活用しきれていない、という問題意識はありました。昨今はソフトウェアやデジタル技術を核としたIT企業が急速に伸びており、うかうかしていると、製造業の価値を生み出す源泉を彼らに持っていかれてしまうのではないか――インダストリアル・インターネットという概念は、そういった危機感から生まれました」
こう話すのは、GEデジタルでインダストリアル・インターネット推進本部長を務める新野昭夫氏だ。同社は「IoT」という巨大なビジネスチャンスのどこに可能性を感じ、どのようにアプローチしていくのだろうか。
ハードウェアに加えて、ソフトウェアやデータ分析で付加価値を提供できれば、非常に強い存在になれるはず――。そう考えたGEは、2011年11月にカリフォルニア州サンラモン(シリコンバレー)にソフトウェアの拠点を設立。1000人超のエンジニアやデータサイエンティストを集め、ソフトウェアの開発を行ってきた。
その後も、産業機器から集めたデータを蓄積するデータセンターを準備したり、IoTソリューションやソフトウェアを開発するための共通プラットフォーム「Predix」を提供したりと、ビジネスモデルの変化に対して多額の投資を行ってきた。さらに2015年にはクラウドサービス事業にも参入している。
「ハードとソフトをセットで提供し、サービスとして価値を提供することを考えたとき、自然とプラットフォームはクラウドへと移っていきました。継続して利用することが必要なモデルであれば、売り切り型のライセンスモデルとは合致しません。センサーの価格も下がったことで、初期投資が抑えられる点も大きなメリットになりますし、産業向けのクラウドもいけるのではないかと考えたのです」(新野氏)
日本においては、LIXILが2015年12月にPredixプラットフォームを活用したIoTソリューションを導入することを発表しており、今後は日本でもGEのプラットフォームを使う企業が増えていくことが予想される。
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