ドナルド・トランプ、中国経済、イスラーム国……現在の世界情勢をみると、予測できないことが多発している。はたして、情報もモノも人もグローバルな規模でフラットに行き交う複雑・不可測・不安定な世界を読み解く糸口はあるのだろうか。東京大学名誉教授/新潟県立大学学長の猪口孝氏が3つのポイントで解き明かす。
なぜ予測ははずれるのか
1946年に生物学者、ウォーレン・ウィーバーは科学の発展とともにその分析方法が展開していることを高い予見性をもって書いている。
第一、ニュートン力学が明らかにしたことは、「重量と速度を一定の形で乗じたものが力となる」というだけはなかった。その分析の「単純性」こそが人を魅了したのである。
第二、量子力学が立証したのは、いろいろのヴァリエーションがあったとしても、統計学的に分析すれば、一定の法則が貫徹していることである。それは「非組織的複雑性」とよばれる。
第三、物理学でも統計学でも解明できないものが生命現象であり、「組織的複雑性」とよばれる。最後のものは分析方法がハッキリしにくい。盲目の方がゾウの部分の全体をわからずに、なめまわすようなものであるという。
たしかに、医学などを含む生命科学は政治学にも似ている。とにかく一定の法則を実証するというよりは、規則性の発見をできるだけ正しいと考えられるモデル推定に基づき、経験的データを実験的方法と統計的方法をまぜたような形で試みることが大部分を占める。
ところで、2013年以降の日本経済予測の試みは大体失敗しているという。物価上昇率、経済成長率、為替レート、株式などさまざまな数値が当たりにくくなっている。
では、なぜ予測ははずれるのか――。
経済学は物理学を模範にして発展させたようなところがある。そのモデルがあまり役立たなくなっているのだろう。それではビッグデータを用いれば、将来をうまく予測できるのだろうか。
たとえば、スーパーマーケットでなにを購入するのか、レジに記録されている購買者の属性などからかなり詳細にわかるという。株式の値や為替レートについても大量のビッグデータを使って分析しているが、どこまでうまく予測できるのかわからない。量子力学の統計学的分析のような感じもする。物理的現象だから、統計的分析方法が役立ったのだろう。
やはり最近になって、脳神経科学では、脳神経の動きをMRIなどから、分析していく方法もよく使われる。脳神経は生命科学や生物学の扱うところだが、ウォーレン・ウィーバーが1946年に予想したような段階からちょっとだけ進んだところに留まっているのではないだろうか。
-
佐藤優が斬る! もしトランプが大統領になったら、世界はこう変わる(2016.03.11)
-
「熊本地震は南海トラフ地震の前兆かもしれない」専門家が警告 (2016.04.16)
-
なぜイスラーム国の「過激思想」に吸い寄せられる人が後を絶たないのか(2016.04.01)
-
ウソで固めた「中国経済」大崩壊〜空前の倒産ラッシュ、各地で発生する「報道されない暴動」(2016.03.28)
-
【竹田圭吾が読む2016年の国際情勢】ニッポンよ、世界の難局に手を差し伸べる国となれ(2016.01.11)
- 坂口恭平の熊本脱出記(1) あの日、東京で感じた「予兆」〜そして家族の待つ熊本へ(2016.04.20)
- 現実味を帯びるイギリス「EU離脱」という悪夢のシナリオ(2016.04.20)
- 清原和博を縛った「男は強くなければならない」という呪い(2016.04.20)
- 世界はなぜ「予測不可能」になったのか? トランプ旋風、イスラーム国、中国経済…… (2016.04.20)
- 坂口恭平の熊本脱出記(2) 真夜中の激震〜なぜ僕は「避難所」で鬱になったか(2016.04.20)
- 坂口恭平の熊本脱出記(3) だから僕は、熊本から逃げ出した(2016.04.20)