2016年04月19日
4月19日/19:00/吹田SG大阪 1-2... 続きを読む
ACL・4節、タイのブリーラム戦。選手たちは口々に「スタジアムが素晴らしい」と敵地の試合会場を絶賛していた。(C)Getty Images
だが、どうして「なにもつくりたくない」のか、なぜ「平和公園と連結させた祈りの場」が必要なのか、それがわからない。
緑地公園の案は確かに存在するが、今の広島にどうしてそういう場所が必要なのか。それがどういうものを生みだし、広島の活性化にどんな力を発揮するのか(そもそも活性化が必要だと考えているのか)。
具体論も、理念も、主張も見えない。ここまで書き進めた「行政側の意図」も、状況証拠からの推論に過ぎないわけで、議論を戦わせることも難しい。
いずれにしても、久保会長とサンフレッチェ広島が具体的なプランを公表し、資金計画も提示している以上、行政側も自らのプランを明示してほしい。それが、この事態を打開する最初の一歩につながり、スタジアム議論を前向きなものとするための必須事項だと考える。
互いが互いのプランの穴探しをするのではなく、メリットとデメリットを明確に提示しながら、最善手を考えることが、広島にとって最も大切なのではないか。
ACL・4節、タイのブリーラムに遠征した時、選手たちは口々に「スタジアムが素晴らしい」と敵地の試合会場を絶賛していた。佐藤寿人は「正直、羨ましい」とも語った。
コンパクトなサッカースタジアムは、サポーターと選手たちの距離が近く、臨場感は半端なく高い。スタンドは仮設に近く、鉄板が引いてある上に個席が並んでいる。鉄骨も剝き出しで無骨その上ないが、それが魅力を増幅している。中心街からクルマで10分とアクセスもまずまず。バックスタンドとメインスタンドを覆う屋根に反響するサポーターの声援は、嵐のような勢いでピッチに降っていた。
そういう空気感の創造を含め、「羨ましい」という言葉が出る。一方で、カープの本拠地であるマツダスタジアムに対しては、他チームのファンから「羨ましい」というため息がもれているのだ。
広島だって、やればできるはずだ。今のように「なにが問題なのかがわからない」状況が続くことは決してないと、信じたい。
文:中野和也(サンフレッチェ広島オフィシャルマガジン「紫熊倶楽部」編集長)