セックス依存症の苦悩を描くイギリス映画『シェイム(原題)/ Shame』には、「NC-17」という最も厳しいレーティングが付けられた。理由は「いくつかの露骨な性的描写」だ。 しかし、ハリウッドレポーター紙(電子版)によれば、昨今では「NC-17」と判定される映画の数は減っており、年に1、2本程度だという。日本での、いわゆる「成人映画」に相当するレーティングで、17歳以下の鑑賞が全面的に禁止となるため、上映劇場や客層が限定されてしまい、興行成績が受けるダメージは大きい。そのため、一つ制限ランクが甘くなる「R指定」(17歳以下は成人保護者の同伴必須)のレーティングに修正するために、該当箇所をカットする場合も多い。
ウェブサイトEW.comでは、「NC-17を逃れ、R指定となった映画14本」を紹介している。例えば、『アメリカン・パイ』は、主人公ジムがパイを相手に性行為に及ぶシーンで、それを押し付ける回数を削ることでR指定に緩和された。『氷の微笑』では、オーラルセックスを含む激しいラブシーンと暴力的シーンを約1分カットされたという。TVシリーズ「サウスパーク」の劇場版『サウスパーク/無修正映画版』は、そのタイトルに大いに反し、監督のマットとトレイはいくつかのシーンをカットさせられたが、製作のパラマウントがアメリカ映画協会のメンバーの一つだったため、R指定を授かった。ちなみに、彼らの監督作で、宣教師がポルノ映画に出演する『オーガズモ』はNC-17だった。
その他の映画名と該当シーンは以下の通り。
・『BODY/ボディ』マドンナ扮する富豪の愛人の性的シーンを2分カット
・『恋するポルノ・グラフィティ』2か所のセックスシーンに難色を示され、二度もNC-17を言い渡されるが、監督のケヴィン・スミスが「これはコメディ的なセックスだ」と主張しR指定に
・『ボーイズ・ドント・クライ』ヒラリー・スワンク演じる性同一性障害のブランドンが、クロエ・セヴィニー演じるラナを手で導くオーガズムが長すぎると指摘されるも、キンバリー・ピアース監督が「女性が長いオーガズムを感じても誰も傷つかない」と反論しR指定に。
・『ダメージ』ジェレミー・アイアンズとジュリエット・ビノシュが玄関で絡み合うシーンをカット
・『ザ・クーラー(原題)/The Cooler』ヒロインのヘアーとオーガズムシーンをカット
・『マンハッタン恋愛事情』ロバート・ダウニー・Jrとヘザー・グラハムのオーラルセックスシーンを含め10シーンをわずか数秒ずつカット
・『エクスタシーをさがして』女子高校生が水着姿でジャグジーで初オーガズムを試みるシーンが指摘されるが、女性への風当たりが強すぎるという世評を受ける
・『チーム★アメリカ/ワールドポリス』操り人形同士の様々な体位でのセックスシーンをカット
・『クラークス』3秒のオールヌードショットをカット、映画全編にわたる暴言には酌量が与えられR指定に
・『アメリカン・サイコ』クリスチャン・ベイルと二人の娼婦の3Pシーンを数秒カット
・『ブルー・バレンタイン』ライアン・ゴズリングからミシェル・ウィリアムズへの、“男性が女性に与える”オーラルセックスを指摘されるが世評を受けてNC-17を撤回
(鯨岡孝子)