日本原電 廃炉へ米企業と初契約で最終調整

東京電力福島第一原子力発電所の事故後、国内の原発は運転期間が制限されて相次いで廃炉が決まるなど「廃炉の時代」を迎えています。こうしたなか、日本原子力発電は、アメリカの廃炉専門の企業から技術協力を受ける契約を結び、将来的にほかの電力会社の廃炉を共同で請け負う方向で最終的な調整を進めていることが分かりました。
福島第一原発の事故のあと、国内の原発は運転できる期間を原則40年に制限された結果、去年以降、5原発6基の廃炉が決まるなど、日本も「廃炉の時代」を迎えたと言われています。
しかし、膨大な放射性廃棄物をどこにどう処分するか決まっていないのが実情で、このままでは廃炉が滞るおそれがあると懸念する声もあります。
こうしたなか、日本原子力発電が、アメリカの廃炉専門会社「エナジーソリューションズ」と技術協力の契約を結ぶ方向で最終的な調整を進めていることが分かりました。
関係者によりますと、契約では、福井県にある日本原電の敦賀原発1号機の廃炉に向けて技術協力を受けるほか、将来的にはほかの電力会社の廃炉を共同で請け負う方向で長期的な協力態勢を検討するとしています。
「エナジーソリューションズ」はアメリカなどで10基以上の廃炉を手がけていて、特に廃棄物の発生を抑えたり処分したりする技術に強く、電力会社が見積もったコストや期間を大きく下回って廃炉を行った実績もあるということです。
契約は20日にも結ばれる見通しで、日本の電力会社が廃炉の技術協力を巡って海外の専門企業と直接契約を結ぶのは初めてです。
今回の契約が全国で進む廃炉の課題への解決策を示すことができるか、行方が注目されます。

課題は放射性廃棄物の処分

原発の廃炉で大きな課題となるのが、放射性廃棄物の処分です。原発からは、使用済み核燃料を再処理した際に出る高レベル放射性廃棄物とは別に、原子炉や建屋の解体に伴って金属やコンクリートといった低レベル放射性廃棄物も発生します。
その量は、原発の種類にもよりますが1基当たり数千トンから数万トンに上るとみられ、電力各社でつくる電気事業連合会のおおまかな試算によりますと、廃炉作業中のものも含めた全国57基の原発をすべて廃炉にする場合、およそ45万トンの低レベル放射性廃棄物が発生するとされています。
しかし、こうした廃棄物を受け入れる処分場はありません。
また、低レベル放射性廃棄物のうち放射性物質の濃度が比較的高いものについては保管方法や被ばく対策などの基準さえ決まっていないのが実情です。
平成13年から日本で初めてとなる廃炉が進められている日本原子力発電の東海原発では、廃棄物は敷地内に仮置きされていて、去年7月、濃度が最も低いものについては敷地内に埋め立て処分する許可を国に申請しましたが、より濃度の高い廃棄物は処分のめどが立っていません。
こうしたなか、東海原発の廃炉が終わるまでにかかる費用の見通しは、平成13年度の538億円から、平成18年度には885億円に膨らんでいます。

専門家「経験ある国の協力が重要」

放射性廃棄物の処分に詳しい東京大学大学院工学系研究科の斉藤拓巳准教授は、「廃炉の最も大きな課題は廃棄物をどこに処分するのかという問題だ。現状では放射性物質の濃度が比較的高い廃棄物を保管する際のルールが決まっていない。廃炉の工期やコストは処分場がどうなるかで大きく変わる」と指摘しています。そのうえで、「原発を続ける、続けないにかかわらず廃炉の技術は必要だ。日本は廃炉の経験がないので、海外の経験ある国と協力して技術を取り入れ、改良を進めることが重要だ」と話しています。