日本IBM「クビにしたい会社vs残りたい社員」裁判〜法廷の大バトルを完全再現「できない社員」のクビを切るのは許されるのか?

2016年04月15日(金) 週刊現代

週刊現代賢者の知恵

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会議室へ向かうと、その上司が座っていたのですが、その後すぐに部長クラスと若い人事担当者が入ってきて、上司は出て行きました。

すると、部長クラスの社員が何の前置きもなく、『あなたは機会を与えられたにもかかわらず、業績が改善せず、会社としてこれ以上見過ごすことができなくなりました。就業規則に基づき、あなたを解雇します。本日をもって出社を禁じます』と読み上げ始めたんです。

デスクに戻ると、段ボールが積まれていて、付いて来たさっきの人事担当者が『パソコンはどこにありますか? 置いていってください』と言ってきました。私は解雇を受け入れるつもりはなかったので、そのまま会社を出たのですが、その時も2人が後ろにくっついて、会社の玄関を出るまで監視されました。

私が外へ出ると、若い人事担当者が『ご苦労様でした』とだけ言って、戻っていきました」

会社側の言い分

まさしく、「ロックアウト(締め出し)」するようにして、具体的な理由も示されないまま、一方的にクビを言い渡される。日本IBMでは、このようにして解雇された社員の数が、これまでに50人に達しているという。

「解雇通告の社内マニュアルがあって、その通りにやっている。社員の側には、会社を出て行く選択しかありません。1週間の猶予期間中に『自主退職します』と申し出れば上乗せで退職金が出ますが、何も言わなければそのままクビになり、退職金ももらえない。カネが欲しければ自主退職しろ、というやり方です」(前出の原告)

原告側の意見陳述書によれば、この裁判の大きな論点は、次の2つだ。

○会社が主張する解雇の理由は抽象的で、その裏付けも、PBCなど上司による恣意的な評価にすぎない。

○日本IBMは、会社側が低評価を付けた社員を自由に「追い出し解雇」できるという前例を作ろうとしている。

確かに「他の社員よりも評価が低いと、ある日突然呼び出されてクビにされるかもしれない」という状況は、社員にとっては、恐怖以外の何物でもないだろう。

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