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安保をただす 海自艦寄港 懸念が募る南シナ海派遣

 海上自衛隊の護衛艦が、南シナ海に面するベトナムの軍事要衝カムラン湾の国際港に初めて寄港した。

 安全保障関連法と新日米防衛協力指針(ガイドライン)の下、なし崩しに活動が広がらないか懸念が募る。

 南シナ海問題に対し、日本は軍事的な存在感を高めるよりも、平和的な解決の後押しにこそ力を尽くすべきだ。

 カムラン湾にはベトナム海軍が基地を置いている。領有権争いがある西沙(英語名パラセル)、南沙(英語名スプラトリー)両諸島に比較的近く、どちらの有事にも対応できるとされる。

 海自艦の寄港は、中谷元・防衛相とベトナムの国防相が昨年11月に合意していた。中国をけん制する狙いがある。中谷氏は現地に寄せたメッセージで今後も寄港を続ける意向を表明した。

 南シナ海での中国の行動は確かに見過ごせない。「九段線」と呼ばれる独自の境界線を引き、大半の管轄権を主張している。岩礁を埋め立て、人工島を造成するなど軍事拠点化を進めている。

 だからといって自衛隊が出ていくことには疑問がある。緊張を高めれば、中国に人工島を軍事利用する口実を与えることにもなりかねない。ベトナムは日本との防衛協力に期待している。けん制だけで済むのかも心配になる。

 海自は「友好親善」を目的としてフィリピンの港に護衛艦と潜水艦を寄港させるなど、南シナ海の周辺各国に艦船を相次いで派遣している。このまま海外での活動を当然視することはできない。

 カーター米国防長官は先月、上院公聴会で「日本は米国との訓練や共同監視活動を増やすことを検討している」とし、協力を深める考えを強調した。南シナ海で自衛隊の警戒監視が持ち上がらないか注視しなくてはならない。

 日本は、外交努力で中国に粘り強く自制を迫るべきだ。

 広島での先進7カ国(G7)外相会合は、海洋安保に関する声明をまとめた。名指しは避けながらも南シナ海での一方的行動に強い反対を表明し、国際法に基づく紛争解決を要求している。

 中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が南シナ海での緊張を高める行動の自制を約束した行動宣言の完全な履行も求めた。法的拘束力のある「行動規範」への格上げを含め、実現に向けて各国は協調を強めなくてはならない。

(4月14日)

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