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【首都スポ】

筑波大3年徳田新之介 ハンドボール界の暴れん坊になる

2016年4月19日 紙面から

青空の下、シュート練習をする筑波大ハンドボール部の徳田新之介=茨城県つくば市の筑波大学で(七森祐也撮影)

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 日本ハンドボール界の暴れん坊になる−。2020年東京五輪へ新たなスタートを切ったハンドボール男子代表。その第一歩となった1月のアジア選手権(バーレーン)で代表デビューを果たし、26年ぶりの韓国戦勝利と3位表彰台、17年世界選手権(フランス)出場権獲得に貢献したのが、筑波大の徳田新之介(3年・岩国工)だ。次代を担うエース候補が日本ハンドボールの歴史を切り開く。 (川村庸介)

 徳田新之介−。テレビドラマでおなじみの「暴れん坊将軍」こと、八代吉宗が町火消“め組”の居候として世を忍ぶ仮の名前(徳田新之助)と1字違いの男が、日本ハンドボール界の新星として堂々と、アジアでも確かな足跡を残した。徳田は時代劇にちなんで付けられたという自身の名前について「名前負けしないように、世界で暴れたい。(暴れん坊将軍を)テレビで見たことはないけど、覚えてもらえるのですごく好き」と屈託なく笑う。

 1月のアジア選手権で代表デビュー。「驚いたのが一番。学生の中でも活躍できていないのに、自分でいいのかと思った」と招集当時を振り返る。178センチ、78キロの体格は今回の日本代表では最も小さい。だが「スピードの緩急や速いタイミングのクイックシュートは得意」と、自信があったというスピードを評価されての選出だった。いざ臨んだ大会では予選リーグ初戦の韓国戦で3得点と26年ぶりの勝利に貢献すると、バーレーンに敗れた準決勝までの5試合と3位決定戦(サウジアラビア)の計6試合で、17得点と暴れ回った。

 もっとも徳田本人の自己評価は「出場時間もそんなに長くなかったし、得点という部分では少しは貢献できたけど、1つ1つのプレーの確実性がまだまだ足りていない」と控えめ。韓国戦の歴史的勝利についても「その場にいられたことはうれしかった。ずっと勝てていないのは知っていたし、そのための準備をしてきた」と振り返りながらも「韓国は世代交代もあって若くなっていたのも勝利の一因。このままトレーニングを積んでいるだけじゃまた負けてしまう。戦術とかを徹底して日本がずっと勝てるようにしないと」と危機感ものぞかせる。

 ハンドボールを始めたのは小学校2年生の時。かつて実業団のオムロンでプレーしていた母、尚子さん(旧姓横田)の影響だった。当時は野球も並行していたが「単純に点を決めるのが野球よりハンドボールの方が楽しかった」と、山口・岩国市立平田中入学と同時に本格的にハンドボールに専念。岩国工では全国高校総体(インターハイ)優勝、年代別の日本代表にも選ばれるなど順調にキャリアを積み重ねてきた。その一方で、ハンドボールがマイナー競技であるが故の悔しさも味わってきたという。

 「高校の時は自分たちのインターハイ優勝と岩国商の甲子園出場はメディアの取り上げ方も甲子園に出る方が上だった。結果を残してもこうなるのかと悔しかった」。小学校時代、スポーツ少年団で野球をプレーしていたチームメートが甲子園の土を踏んだのを見たときは「もしかしたら、自分も行けたかも」という思いも頭をよぎったと言う。全国優勝しても、そして日本代表で歴史的快挙を成し遂げても注目を浴びることができない。ハンドボールならではの宿命だった。

 だからこそ日本代表、そしてハンドボール界の未来へ、言葉も熱を帯びる。「攻守の切り替えが速く、シュートのバリエーションもいろいろあるところがすごく面白い」とハンドボールの魅力を訴える。小柄だが「海外の選手は小さいからこそ守りにくいので、小ささを生かしていきたい。海外でプレーしてみたい気持ちもすごくある」とコンプレックスにすることもなく、ハンドボールの本場ヨーロッパで大男たちに挑戦する目標も掲げる。

 何よりも2020年東京五輪。現在20歳の徳田は順調にいけば当然代表の主力としても期待がかかる。「継続して世界選手権に出るのも大事だし、次のオリンピックでは結果を残さないと。今のままでは精神的にも技術的にもまだまだ足りない。継続して代表に残るのと、学生の中では圧倒的な成績を残したい」と目標を掲げる。

 自身が描く理想の選手像とは−。徳田はこう答える。「ディフェンスでもチームに貢献できるようになることと、チームが苦しいときに点を取れる選手になりたい。東京五輪の成功はメダル獲得だと思う」。言葉通り4年後の東京で徳田が攻守の中心としてメダル獲得に貢献し日本のハンドボールを救う存在になったとき、その顔を見忘れる者はいないはずだ。

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

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