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Re:Monster――刺殺から始まる怪物転生記―― 作者:金斬 児狐

第四章 救聖戦線 世界の宿敵放浪編 

19/19

三百五十一日目~三百六十日目

 “三百五十一日目”
 朝の訓練を終え、飯勇と姉妹さん達が作ってくれた竜肉料理を堪能した後、拠点の【鬼哭門】を仲良く潜るミノ吉くんとアス江ちゃんを見送った。

 二鬼がまず【鬼哭門】で向かったのは、豪華客船のような外観の【アンブラッセム・パラベラム号】だ。
 【アンブラッセム・パラベラム号】はまだ大海と接する迷宮都市≪ドゥル・ガ・ヴァライア≫の近くに係留しているので、何かと都合が良かった。
 というか、それくらいしか選択肢が無かったとも言える。

 何せ、獣王国内に【鬼哭門】を使って移動できる場所は現在二つ――【アンブラッセム・パラベラム号】と【鬼神の尊き海鮮食洞】――しかないからだ。
 陸地に近いのは【鬼神の尊き海鮮食洞】の方になるのだが、コチラは出入り口が水中にある。二鬼の肺活量なら余裕かもしれないが、二鬼とも種族的にちょっと水が苦手なので、自然とこうなった次第である。

 そういう事で船上に移動した二鬼は、そこから水上歩行を可能にする靴型のマジックアイテム“水鏡の渡り靴”を装備して陸地に向かい、その後イヤーカフスの分体によるナビに従い、極力目立たないように行動しつつ俺が指定した場所に行く予定になっている。

 もっとも、目立たないようにと言っても二鬼は巨体だ。
 家のような大きさの存在が動けば、余程の虚け者でもなければ認識できるだろう。
 一応、二鬼は大森林での狩りの経験から気配を隠す術は体得しているので普通よりもまだマシだが、それでどうにかなる段階はとっくに過ぎている。

 目立つ目立たないで言えば、非常に目立つと言うしかない。
 そこで目立つ事は仕方ないとして、ミノ吉くんだと分からないように工作している。

 方法は簡単だ。
 二鬼の全身に薄く分体を張り付かせ、その形状を変える事で外見を偽装するだけである。

 そうする事で手間暇いらず、珍しいが居ない事もない巨人種の夫婦として認識されるだろう。これならミノ吉くん達は例え注目されたとしても、ミノ吉くん達だとはばれない。
 ミノ吉くん達と認識されさえしなければ問題ないのだから、後はやる事をやればさっさと帰ってくるだけである。
 もし仮に問題があったとしても、獣王国内で暮らしている巨人と思われるだろうから何とでもなるだろうさ。

 ちなみに、この偽装を看破されるとしたら余程の存在だから、そこまでは考えていない。そんな存在と遭遇する可能性はかなり低いし、そうなった場合はもう仕方ないと諦めるしかないからだ。

 ともかく、そうして偽装した二鬼は目的地に向けて進んで行く訳だ。

 移動には以前立ち上げ、今も順調に業績を伸ばしている迷宮商会≪イルカの尾デネブ・ダルフィム≫の手も貸す事が出来ればもっと簡単なのだが、今後を考えて≪イルカの尾≫には極力俺達と関係がある事を知られない立場にいてもらいたいので、今回は手助けしない事になっている。

 まあ、二鬼とも体力馬鹿といっていいし、その気になれば荒れ地でも森丘でも踏破していくのだから大丈夫だろう。
 そもそも二鬼の敵となる存在も周囲には居ないのだから、あれこれ心配しても杞憂に終わるのがオチだろう。

 一応ミノ吉くんが目的を達成する事を祈りつつ、今日は迷宮化した拠点について頭を悩ませる。

 極力拠点の地下に広がる人造迷宮【ベルベットの隠し宝物殿】は弄らないようにしつつ、≪大農地≫の大地の栄養バランスの調整とか、拠点内の方角ごとに春夏秋冬の特徴が出やすいようにとか、≪外部訓練場≫では団員達の回復力が高まりやすくなるとか、出来る範囲でチマチマと弄ってみる。
 しかし出来る事はやはり少なく、あったらあったでいいのだが、別に無くても問題ない、という具合に効果も今一つ物足りないものばかりだ。
 だがこれも現状は仕方あるまい。

 現在、迷宮化した拠点を運営というか、動かしているエネルギー源は俺の魔力と【神力】の二パターン存在する。

 これまで【迷宮略奪ダンジョン・プランダー・鬼哭異界】によって略奪してきた神代ダンジョンを色々と弄ってきた時は、基本的に蓄えられた【神力】を使っていた。
 なのでエネルギー不足という現在の課題に頭を悩ませた事はない。

 しかしまだ俺が保有する【神力】は迷宮の諸々を設定していくには少ない為、拠点の運営には魔力が主に使われている。
 アビリティによって魔力は簡単に回復できるし、一度にかなりの量を注ぎ込めるものの、効率的に【神力】には遠く及ばないので苦労しているのが現状だ。

 簡単に、かつ大雑把に数値化してみると【神力】一に対し、魔力は一万必要になる、と思えばいいだろうか。
 魔力だけで迷宮を運営するのは、厳しいを通り越して現実的ではない。
 まあここは天然の温泉が湧き出し、その中に色々と有用な成分が混ざっているので、他の場所よりかは遥かに良い条件が整っていたりするのだが、それはさて置き。

 うん、何にしろ時間が解決してくれる問題だ。
 とりあえず焦る必要はないという事で個人的な結論が出た訳だが、先の【聖戦】時に減った【神力】の補給も兼ねて、【神器】を一つ喰う事にした。

 今回選んだのは、数勇を倒して手に入れた【数式神之魂改竄棍アボーガ・ムフェル】である。
 一言で表現するなら三メートル程の長さの白い棍――あるいは白い棒――となるだろうこの【神器】。
 その両端にはまるで赤い果実のような宝玉が埋め込まれ、その周囲にはまるで樹を連想させる特徴的な幾何学模様が刻まれている。
 紋様をよく見れば小さな数字や記号であり、何かしらの数式なのかもしれないが、正直理解する事はできなかった。

 軽く振ってみると宝玉に赤色の光が宿り、その周辺に薄らと数字のような何かが出現した。
 しばらくクルクルと回してみるも、特に何かが起こる訳ではない。

 しばらく使ってみた感覚としては、まるで白い樹のような表面は少しザラザラとしているが握り心地は悪くなく、そこそこの重量とバランスの良さもあって扱いやすい。
 初心者の装備としてもいいし、熟練者の装備としても問題ない、かなり使い勝手がいい【神器】ではないだろうか。

 一通り型をこなしたが、赤い光については分からなかった。
 そこでモノは試してそこら辺にあった岩を軽く叩いてみれば、赤い光は一瞬で岩に浸透、したかと思えば岩はまるで最初からそうだったかのように砂となった。
 『おお』と少し驚きつつ、次は別の岩を叩いてみると、今度はその場から一瞬で消失してしまう。

 正直、意味が分からない。理解できない事ばかりだ。
 まあ、【神器】の能力は大抵そんなモノなので、深く考えるだけ無駄かもしれないが。
 とりあえず、喰う前にもう少し色々と試してみる事にした。

 ちなみに【道具上位鑑定オール・アプレーザル・マジックアイテム】を使ってその性能を確認すると、以下のようになる。


 ―――――――――――――――――

 名称:【数式神之魂改竄棍アボーガ・ムフェル
 分類:【神器/長柄武器】
 等級:【幻想】級
 能力:【数式神之魂改竄棍アボーガ・ムフェル】【数式の秘宝ヴェルド・イゼイラ
    【数式改竄アーガ・フェル】【禁断の果実アーブ・ウェル
    【儚き幻数の夢現ラ・ヴェルス・ルネッス】【神が愛した数式イルマ・ヴェル・ウース
    【数秘術の卵】【異教天罰】
    【能力増設】【不可貫通】
 備考:夜天童子が≪異教徒ヘレティック詩篇覚醒者エピック・アウェイニング主要人物メインキャスト≫との【終末論エスカトロジー征服戦争コンクエスト・ウォー】に勝利して得た幻想級の神棍。
    世界に存在する神々がとる三形態≪神器/■■/■■≫の一つである神器であり、世界樹を連想させる形状をしている。
    これに触れる事ができるのは夜天童子本人か夜天童子の許しを得た者のみであり、許しなく触れた者には想像を絶する災いが降りかかる事だろう。
    神器である為、破壊は例外を除き、絶対に不可能。

 さらに情報を閲覧しますか?
 ≪YES≫ ≪NO≫

 ―――――――――――――――――


 となっている。
 【英勇】である復讐者や水勇を打倒して手に入れた【神器】と異なり、能力欄が全開放されているのはそれだけ実力があったという証拠だろうか。

 ともかく、先程の岩に起きた現象も【儚き幻数の夢現ラ・ヴェルス・ルネッス】か【神が愛した数式イルマ・ヴェル・ウース】辺りが何かしらの数式を導き出して確率を操作した結果、岩が砂化したり消失したのだろう、という考えに至る。

 しかし何度も言うように、正直よく分からない。きっと木端難しいうんたらがあるのだろう。
 面倒なので詳細は省くとして、喰う為に口に放り込んだ。

 相変わらず【神器】は硬く、何度も何度も咀嚼を繰り返さなければならないが、ゴリゴリゴリ、と長時間楽しめる食感と歯ごたえは何だかんだ言っても癖になる。
 そしてやっと僅かに削れ、喉を通って胃に送られた欠片から吸収する【神力】が全身に通う心地良さ。身体の細胞一つ一つがまるで生まれ変わるような、新しい自分が構築されていくような不思議な感覚。
 それに樹を連想させている造形からか、基本的には“木のケーキバウムクーヘン”のような味になっている。
 両端にある宝玉の部分はリンゴっぽく、数式の部分はどこかチョコレートのようで、全体的に上品な最高級メープルシロップで整えられたような甘さがして、部位ごとに違う甘味としての特徴があって喰っていても飽きはこない。

 正直、この世界で喰った甘味の中で言えば、【数式神之魂改竄棍】は飛び抜けていた。

 『あああああ~~~~~』と脳内は甘味と幸福感で爆発してしまいそうで、心身共に充実した時を過ごせるこの一時は言葉では表現し難いものがある。
 合間合間に鬼酒を嗜むと、これまた双方の良さを引き出すので止められそうにない。

 本当に凄いよな、【数式神之魂改竄棍】は最初から最後までギッシリと旨みが詰まってるんだから。

 ……まあ、しかし欠点があるとすれば、その長さだろうか。
 流石に三メートル程の棍を喰うのは、絵面的にとてもシュールだと思うのだ。


 “三百五十二日目”
 もし万が一何かがあって【迷宮の種子】を狙われた時を考えて、分体を数体ほど周囲の地面に潜まる。
 【鬼神オーバーロード】となった現在の俺の分体で、かつ竜肉も使って成長させたので、帝王類が来ても防衛出来るのではないだろうか。

 そこまですると、拠点の設定を弄るのは、今のところ全て終わってしまった。
 というか、使えるエネルギーが少な過ぎてやれる事が限られているだけだが。

 まあ、拠点の改造はこれまで通り団員達によって行われるのだから、焦って弄る問題ではない。
 全ては時間が解決してくれるだろう。

 一先ずやるべき事を終えて、今日は平和に、ブラックスケルトンを代表とする生成体を使った【蠱毒】の探究に力を入れる事にした。

 というのも、これまではあまり落ち着いてできず、生成能力を持つアンデッド達に長期間任せていたのだが、そのパターンはだいたいやり尽くしてしまい、少し停滞していたからだ。

 もちろん、悪い事ばかりではない。
 試行錯誤を繰り返し、数をこなすのは大事だ。その成果でもある強化個体だって増産され、戦力が増えているのもまた事実である。
 だが以前よりも生成できる幅が増えているので、試行錯誤しなければならない組み合わせが増えていた。

 せっかく時間ができたのだから、少し本格的にしてみる事にした訳である。
 生成体は【存在進化】――普通よりも困難なようだが――すれば生成体特有の時間制限も無くなる事は判明しているので、戦力確保としては、結構効率が良い手法なので理解を深めておきたかった。

 と言いつつ、カナ美ちゃんと一緒に大量に【生成】し、大穴の中で繰り広げられる生成体達の戦いをずっと観戦するばかりだったのだが。

 それにしても、偶にはこうしてジックリと酒を楽しみつつ過ごすのはいいもんだ。
 最近は【聖戦】関係で忙しかったからね。
 後処理も済ませて一段落したんだから、ゆったりとした時間を楽しみたいものである。


 【能力名アビリティ数式神之魂改竄棍アボーガ・ムフェル】のラーニング完了】
 【能力名【数式の秘宝ヴェルド・イゼイラ】のラーニング完了】
 【能力名【数式改竄アーガ・フェル】のラーニング完了】
 【能力名【禁断の果実アーブ・ウェル】のラーニング完了】
 【能力名【儚き幻数の夢現ラ・ヴェルス・ルネッス】のラーニング完了】
 【能力名【神が愛した数式イルマ・ヴェル・ウース】のラーニング完了】
 【能力名【数秘術の卵】のラーニング完了】


 ゴリゴリと食べ続けた結果、無事にラーニング出来た。
 神力もアビリティも増え、リラックスもできた。
 こうした一日をもっと過ごしたいモノである。


 “三百五十三日目”
 昨日に引き続き、【蠱毒】を使った実験に取り組む事にした。

 現在、拠点の中でも奥の方の専用スペースにある【蠱毒】用の大穴には、黒く染まったアンデッド系だけでなく、異形の悪魔や多種多彩な鬼種、小型の竜種や巨人種などがどんどん投入されている。

 【下位アンデッド生成】と【下位巨人生成】によって生成された個体は本能のままに、命果てるまでただ目の前の敵を殺す為に全力で動き。
 【上位鬼種生成】と【大悪魔精製】と【真竜精製】によって生成された個体は備わった知能の高さを生かし、柔軟に戦況を判断しつつ、同じく目の前の敵を殺す為に全力で動いている。

 結局自分以外を殺す為だけに動いている訳だが、やはり殺し合う種族が増えている分、色々とドラマが起こる。

 ブラックスケルトンの黒骨を拾って戦っていた黒小鬼ブラックゴブリンは、背後から近づいてきた黒豚鬼ブラックオークが振り下ろした斧の一撃を頭部に受けて即死。
 眼球は勢いよく飛び出し、脳漿が周囲に散った。カラン、と黒骨が地に落ちる音が周囲の戦闘音にかき消される。
 黒小鬼を殺した黒豚鬼は即座に斧を引き抜こうとするものの、深くめり込んだのか引き抜くのに手間取り、その隙を突かれて灰色のレッサーデビルが手に持つ三つ叉の生体槍によって心臓を突き刺された。

 その近くでは、腐りかけで眼球や内臓をこぼしながらも切れ味鋭い刃尾や刃爪は健在な首狩り屍兎ヴォーパル・アンデッドバニーが死角から繰り出した恐るべき一撃を、盾剣装備の首無し騎士デュラハンが迎え撃ち、逆に呆気なく粉砕していた。
 アンデッドバニーの屍肉が勢いよく散らばり、周囲に飛散する中、間髪入れずに切り込むのは黄色い鬼人ロードだ。
 その手に持つのは稲妻を連想させるジグザグした形状の生体剣。血剣鬼ブラッディロードとよく似た雷剣鬼サンダーロードで、雷撃と剣技に優れた剣鬼の一種だ。
 そんなサンダーロードの雷撃剣を、デュラハンは盾で防いだ。剣と盾が接触した瞬間激しい雷撃がデュラハンを襲うが、特に効いた様子もなく、即座に反撃する。
 相対したデュラハンとサンダーロードが瞬きの間に数十と繰り広げる駆け引き。両者譲らず、息を飲む緊迫感に満ちた斬撃の応酬。
 見ていて素直に面白いので鬼酒を片手に盛り上がっていると、結局最後は疲弊した両者ともに小型火竜のブレスによって薙ぎ払われた。

 ブレスの範囲は広く、六メートル程の背丈がある洞窟巨人ケイブジャイアントに群がっていたゴブリン・パンクなども纏めて灰にし、大穴の底はまるで灼熱地獄のような光景となった。
 高温の火で焼かれて焼死する者はもちろん、酸素を求めて苦しそうに喘ぐ者達も多い。

 周囲を壁で覆われた空間で放てば、まあ、当然の結果だとも言えるだろう。
 耐え難い火力に負けて大穴で生き残っていた生成体は一体、また一体と倒れ伏し、その中でも健在だった小型火竜が勝利の咆吼を発した。
 動く者は他に居なかったのだから、小型火竜が勝ったと思っても仕方ないだろう。

 しかし、小型火竜は突如自分の影から突き出た鋭い爪を持つ無数の触手に貫かれ、必死に暴れるが全身を蛸に絡みつかれるように拘束され、呆気なく圧殺される。
 勝ったという油断が、最後の最後で死を招いた結果である。

 今回生き残ったのは、“祭壇の悪魔オルターデビル”のようだ。

 生者の影に潜む能力を持ち、背中から異形の蛸の触手を生やした、黒い聖職者のような外見を持つオルターデビルは、殺した者の魂を使役する能力を持つ。
 物理的な戦闘能力はそこまで高くないが、多彩な魔法や特殊能力により、厄介な部類の悪魔である。

 勝ち残ったオルターデビルを一旦外に出し、労いながら暫く休むように命令し、次の生成体を大穴に投入していく。
 その際にはカナ美ちゃんも手伝ってくれるのだが、カナ美ちゃんはアンデッドしか生成できないので、それ以外の生成体を俺が生成した。

 その後は日が暮れるまで殆ど同じ事の繰り返しだ。
 オーロやアルジェントなど子供達の相手もしたが、基本的には【蠱毒】にかかりきりだったなぁ。


 “三百五十四日目”
 ミノ吉くん達は道中見つけた山賊や盗賊の集団を潰したり、派生ダンジョンなどを様子見しつつではあるが、順調に進んでいるようだ。
 後数日もすれば出会う事になるだろう。

 それは良いとして、今回は各国の情勢にちょっとだけ触れる事にしよう。
 というか、今日は特に語る事がないだけであるが。

 ともかく、まずは王国について。
 コチラは特に問題は無い。
 聖王国から使者がやってきて、先の【聖戦】についてあれこれ言われたそうだが、それくらいだろうか。

 次は帝国について。
 コチラは多数の【英勇】を失った事で騒動は起きたものの、序列第一位がまだ残っているし、失った六名の内、四名が【運命略奪フェイト・プランダー】によって取り込んだ【英勇】だ。
 つまり元々敵だった戦力を失った訳であり、手痛い事は手痛いが、帝国内で生まれ育った【英勇】は二名しか失わなかっただけ、まだいい方だろう。
 政治ではあれこれあるようだが、そこら辺は大きく関係してはこないだろう。

 次は魔帝国について。
 魔帝国では、順調に新【魔帝】ヴァスキアが実権を握っている、という訳ではない。
 まあ、色々ゴタゴタがある。
 詳しく語れば長くなるし、面倒なので省くとして、最終的にはヴァスキアが治めるだろうが少し時間が必要だろうさ。

 次は獣王国について。
 コチラは、既に安定し始めている。
 騒ぎがあれば新【獣王】アースティが即座に出向いて鉄拳交渉、それの繰り返しで納まってしまった。
 予想以上の脳筋ぶりである。
 力を持つ者こそ全てを決し、手に入れると言わんばかりの荒技だ。

 次は遠方の国々について。
 現在の国の立地的に、上記の四国以外の国々は、大半が聖王国を挟んだ向こう側にある。
 王国とは大森林を挟んで反対方向にある小国などもあったりするが、そこら辺はまた今度にするとして。
 遠方の国々は、強大な聖王国に対して怯えがあった。【英勇】の数だけでなく質まで劣っていたし、単純な国力や一般兵士達の平均的な質の差から、そうなるのも仕方ないだろう。

 頭を垂れて属国になる場合もあれば、聖王国と対抗べく立ち上げられた国際連合――亜人主体の≪ハイゼクス同盟≫や軍事国家による≪ハーレンディア連邦≫――などゴチャゴチャあったりするが、ともかく、【聖戦】の結末を知り、色々と動き始めている。
 とはいえ、実際に動くとなるとまだ先だ。
 それに動くとしたら、聖王国が真っ先に標的になるだろう。

 最後は聖王国について。
 既に俺が送った黒竜達によって、今回の【聖戦】の結末は大半の国民に知れ渡っている。
 その為、各地で混乱が起きている。国土が広い事もあり、その規模は周辺各国よりも遥かに大きい。
 統治している貴族達や精神的支柱でもある教会関係者にも動揺は大きく、今はまだ各地に配属された兵士達の働きで表面は大人しいが、裏では戦争に負けて併合された者達の動きが出始めている。
 それを察知した聖王は、信用できる配下を即座に各地へと派遣した。
 【英勇】を多数失ったとしても聖王国は大国だ。
 次代の【英勇】となる可能性を持つ【加護持ち】の数もやはり多く、戦力となる兵士の数も多い。
 危険な兆候が見られる、あるいは今後何かが起こる可能性が高い街などに優先的に配備する事で、国を焼く大火となる前に抑え込もうとしているようだ。
 それだけしても溢れ出てくるだろうが、聖王の有能さからして、予想よりも騒乱は小さいかもしれない。

 まあ、世界は徐々に動き始めていると思えばいいだろう。
 個人の意思や希望に関係なく、世界は動き続けるだけなのだから。


 “三百五十五日目”
 今日は朝の訓練を終えた後、エルフ達が≪アーレバスラ≫と呼ぶ大森林の中では三番目くらいに大きな湖で釣りをする事にした。
 アーレバスラは大森林の各地を流れる川が四つ交わる場所にあり、そこそこの大きさと深さがある。
 水は適度に澄み、水中を泳ぐ大小様々な魚影を視認できた。魚以外にも小型の蟹系モンスターや水棲の蛇系モンスターも確認できたので、そこら辺を狙って釣るのも面白いかも知れない。

 青く澄み渡った空の下、頭上に広がる樹の枝が作る影に入り、湖畔に設置した椅子に座って迷宮産の釣り竿で獲物がかかるのをジッと待つ。
 遠くで鳴いた鳥の声や虫の羽音を聞きながら、かなりノンビリとした時間が過ぎていく。平和そのもので、こんな一時も悪くは無い。

 それに餌に食いつく獲物の気配は手に取る様に分かってしまうので、ほぼ百発百中で釣り上げてしまう釣果は、その場で姉妹さん達が捌いてくれる。
 四十センチはありそうな川魚“レンボーマス”は内臓を綺麗に取り除かれ、鉄串に刺されて炭火の前に並べられた。
 味付けは塩のみだが、タップリとのった脂、プクリと鍛えられた身。炭火でジュワリと焼かれたレインボーマスから漂う匂いは、強烈なまでに食欲をそそった。
 ゴクリ、と思わず唾を飲んでしまうほどだ。

 食欲を掻き立てられたのか、次々と釣り上げる俺に続くように、カナ美ちゃんや鍛冶師さん、女騎士やドリアーヌさん、オーロとアルジェントに鬼若とオプシー達も気合を入れていた。
 錬金術師さんも来ているが、錬金術師さんはニコラを抱いて野外用の長椅子に腰かけている。

 そう、今日はある種の家族サービスも兼ねているのである。

 そんな訳で、今日は釣りしたりバーベキューを堪能して過ごした。


 “三百五十六日目”
 ボリボリボリ、と【英勇】クローンのツマミを喰いながら、二本の訓練用合金棍で眼前から決死の覚悟で突っ込んでくる【将軍コボルド】の秋田犬と、【雷竜人】のラムラさんを相手にする。

 秋田犬が手にするのは、以前与えた大太刀型マジックアイテム【月天闘狼】。切れ味鋭く、美しい月のような刀身から闘狼のような斬撃を発生させる能力がある。
 ラムラさんが手にするのは、薙刀のような形状の生体槍。紫電を纏い、触れれば感電して内部から焼き尽くされかねない、大半の生物にとって致命的な雷槍の一種だ。

 どちらも本気であり、手にする得物は俺が持つ訓練用合金棍を両断するだけの切れ味がある。

 その為直接受ける事はせず、常に側面を叩き落として対処した。
 正面から迫る両者の激しい攻撃を前に、最初の位置から微動だにせずドンと構えながら、背後から迫って来た熱鬼くんと風鬼さんの二鬼にも対処する。

 使うのは二本の合金棍だけだ。使っていない残りの二本の銀腕も、アビリティや他の能力も使わず、三メートル少々と少し長い合金棍だけで対処する。
 逸らす。弾く。絡め取る。
 四方から攻められ、それでも一撃も負わずに続く攻防。
 隙があれば秋田犬の顎を下から打ち上げ、ラムラさんの足を引っ掛けて転ばせ、熱鬼くんの鳩尾に突きを入れ、風鬼さんの尻を叩いて吹き飛ばす。

 最近弛んでいたので、今日は幹部級のメンバーを相手にした訓練をしているのだが、以前と比べて皆のレベルが上がっているのが実感できた。
 以前なら木製の棍で十分だったのだが、今では合金製を使う必要があるからだ。
 まだまだ直すべき点は多々あれど、使う得物を変えなければならなくなっただけ、以前とは比べ物にならないだろう。

 その後は暫く赤髪ショートやら女騎士やらクマ次郎やらクロ三郎やら、剣闘王やらボス猿やら蟷螂型甲蟲人のイス・ハーさんやら首なし騎士デュラハンのリンボーさんやら、とにかく一定水準以上の団員達を纏めて相手していった。
 それだけで一日が潰れてしまったが、うむうむと成長を実感しつつ、疲れ果てた皆の亡骸――当然死んでいないが――を越えていく。
 今度はもっと厳しくしても、これならいけるだろう。
 多分。恐らく。きっと。


 “三百五十七日目”
 昨日の続きとして朝の訓練は厳しくした後、貯め込んだ財宝に関する作業に取り掛かる事にした。
 丁度手が開いているという事で、助手には鍛冶師さんと錬金術師さん、そして姉妹さんが名乗りを上げてくれた。

 以前は行商人をしていた経験がある分、四人の手助けは正直ありがたい。
 それに鍛冶師さんなら武具や鉱石など、錬金術師さんなら魔法薬や調合素材など、姉妹さんなら食材や繊維素材など、それぞれ特定分野が分かれているので、分担がスムーズだ。
 感謝し、実際に行動してその思いを表現しつつ、ダンジョンボスやら階層ボスやらを倒してドロップした宝箱から得たアイテムを筆頭に、数多い財宝を全て帳簿に記入していく。
 まあ、これまでも大雑把にだが分類していたので、今回はそれをより細かく、より詳細にしてく予定だ。

 本当はもっとこまめにしておけばいいのだが、数が数だけに面倒臭く、大雑把にしていたツケが今こうしてやってきた訳である。
 因果応報と言えばいいのだろうか。

 ともかく、アイテムボックスから取り出しては整理して、またアイテムボックスの中に収納するを繰り返した。

 魔法薬や素材の類は種類も数も一際多く、使用頻度が高いので優先的に選別する。
 武具の類は団員に与えるのはまだ早いと思うレベルの品も多く、放出しても問題ないのはさっさと放出する事に決めた。

 その他にも内容が細々とし過ぎて、そこまで詳細に語ると長くなり過ぎる。
 強いて言えば神代ダンジョンのダンジョンボスや階層ボスから得た宝箱の中身になるが、数が多過ぎるのでまた今度、必要になった時にでも語る事にしよう。

 今日一日はアッと言う間に過ぎ去り、温泉に浸かって疲れを落とす。
 今度からは、もう少しこまめにしようと思う。


 “三百五十八日目”
 今日の朝、まだ太陽も昇らない時間帯。
 ミノ吉くんは無事に新【獣王】アースティと出会い、そして戦闘に発展して完膚なきまでに打ちのめし、やる事をやったので帰路についたそうだ。

 朝起きてほぼ同時に聞いた報告に、俺は少し驚き、また納得してしまった。
 詳しい話を聞いてみた所、どうやらミノ吉くんは前【獣王】ライオネルから『娘に一度会ってくれねぇか。んでよぉ、ちょいと上を見せてやってくれ。できれば殺さず、見逃してくれるとありがてぇがな』的な事を言われたらしい。

 どうやらライオネルは愛娘アースティがより強くなれるように願い、また慢心しないように、ミノ吉くんという強敵をぶつけるように仕向けたようだ。
 普通自分を殺す程の存在を差し向けるかとも思うのだが、力こそ正義、という信念がありそうなライオネルはただ純粋に自分よりも強い存在を知ってもらいたかったのかもしれない。

 死んでしまうのならそれまでの事。生き残ればその経験は今後の力となってくれる。
 そう思い、ライオネルなりに最後までアースティの事を思って考えた事なのだろうか。

 そんな気持ちを知ってか知らずか、ともかくミノ吉くんは戦い、勝利した。

 分体で確認したところ、アースティの全身の骨は砕けるかヒビが入り、内臓は破裂したり捻じれたりと酷い有様で、筋肉や皮膚は断裂したり裂けたりして、内外問わず大量出血した半死半生の重体となったようだ。
 凄まじい生命力によって命は繋ぎ止めていたが、そのまま放置すれば命は確実に無かった程の怪我。

 だがミノ吉くんが終わった後に迷宮産の秘薬で回復させたので、しばらく安静にしておけば後遺症もなく完治し、むしろ元気になる筈だ。

 もっとも、治ったと言ってもすぐに動けるようなレベルの怪我ではない。
 全身はしばらくまともに動かせず、ただ意識だけはミノ吉くんに向けられたらしい。

 地面に転がり、ミノ吉くんを見上げるアースティに対し、ミノ吉くんはライオネルを自身が殺し、またライオネルの【神器】――【獣神之魂剛躯ビルスフォルガ】は自分が持っているので、欲しければまた挑んでこい、といった事を言ったそうだ。

 ミノ吉くんの意図は大凡推察できるが、あえて聞く事はしなかった。
 ミノ吉くんなりの考えがあるのだろうから、その判断を信じる事にしただけだ。

 朝からショッキングな報告があったものの、他は特に変わった事は無い。

 一日は訓練に費やす事にしたので、団員達に本気で挑んで来させる事にしよう。

 そういう事で始まった訓練は、≪外部訓練場≫にて執り行われた。
 今回の俺の武装は右手にハルバード、左手に呪槍。左右の副腕には何も持っていないので、基本的にはこの二本だけである。
 他の皆は、それぞれ本気装備だ。
 今回はかなり本格的なモノになるので、セイ冶くんには何時でも治療できるようにスタンバイしてもらっている。
 準備が整えば、さっさと開始する事にした。



 〓 〒 〓



 全身にのし掛かる重圧感によって、自然と呼吸が浅く、早くなる。
 背中と言わず掌と言わず、全身から噴出する冷や汗はツツと流れ落ちていく。

 ≪外部訓練場≫に集いし無数の猛者達は、オバ朗ただ一鬼を厚く包囲しながらも、自身の終わりを幻視していた。
 突けば貫かれ、薙げば薙ぎ払われ、突進すれば叩き潰される。
 経験値を積んでレベルを上げ、血反吐を吐き出しながら訓練し、命を賭して戦ってきたが故に対峙しただけで感じてしまう彼我の差は、鍛えれば鍛えるほど明確に分かってしまう。

 しかし、それでも、だからこそ猛者達は得物を握る。
 恐怖をねじ伏せ、幾度となく敗北を積み重ねてきた彼等の長へと駆けだした。

「シィアアアアア!」

 何処か獣染みた咆吼を上げ、白金に輝く【将軍ジェネラル】シリーズを装備した赤髪ショートは単独で先行する。
 赤髪ショートとオバ朗の距離は瞬く間に詰められ、疾走の勢いを乗せて振り下ろされる右手の【将軍大包丁ジェネラルチョッパー】には赤い燐光が宿る。

 ――戦技アーツ聖獣血断スティルマ・ブライネス

 【職業・聖獣喰い】を持つ者だけが放つ事が出来る戦技の一つであり、全力を一撃に込めるという性質からその破壊力は絶大で、直撃すれば例え竜種などでも一撃で屠る事が可能だ。
 ただ攻撃に意識が集中してしまう分、どうしても防御が疎かになってしまうという欠点があった。
 赤髪ショートは左手で【将軍凧盾ジェネラルシールド】を構える事で隙を少なくしているものの、それでも今回の選択はほぼ捨て身の特攻と言えるだろう。
 それを分かりつつも、オバ朗は僅かに微笑む。それを見て、赤髪ショートも微笑みながら音を置き去りにする程の斬撃で首を狙った。

 斬首を狙う斬撃に対し、オバ朗は左手の呪槍を振った。
 その穂先は【将軍大包丁】と衝突、するかと思われた瞬間力を僅かに別方向に逸らすように動き、衝突した際にあると思っていた衝撃が無かった分、赤髪ショートの身体が僅かに流れる。
 ほんの僅かな隙がそこに生じ、オバ朗はそれを逃さず右手のハルバードで【足払い】を繰り出し、赤髪ショートの足を引っ掛けた。
 全く意識していなかった攻撃に対応が遅れて赤髪ショートは転倒し、前回り受け身を即座にとるが、追撃であるオバ朗の踏みつけが迫る。

「――クヌッ。ノッ。ウノッ。ちょまッ!」

 連続して転がる事でギリギリ回避するが、巨人の鉄槌のような破壊と小さな地震を発生させる【地揺れの鉄槌】や【棍砕震地】を重複発動させた状態の踏みつけが執拗に繰り返された。
 踏みつけられればただではすまないと分かっているだけに、赤髪ショートは泥まみれになりながらも必死だ。
 しかし地面が揺れているため動き難く、あと少しで捉えられてしまいそうになる。

「殿、御覚悟ッ」

 赤髪ショートを狙うオバ朗の右側面から、今度は秋田犬が突撃してくる。
 その隙に赤髪ショートは退避して、秋田犬が振るう【月天闘狼】の刀身が胴を狙って弧を描く。
 先程の赤髪ショートの一撃よりも僅かに速く、鋭い一撃だったが、オバ朗はハルバードを振って生じさせた巨水刃でその勢いを殺し、そのまま刀身を弾いた。
 そして生じた僅かな遅延を逃さず繰り出されたオバ朗の前蹴り。
 秋田犬は咄嗟に回避しようと身を捩ったが、オバ朗の足の爪先から噴出した黄金糸が全身を拘束した事で回避できない。

「ぬぐおッ! これはまさッフンッ!」

 全身に絡まる黄金糸を認識し、避けられないと覚悟を決め、まず秋田犬は兜のようにして装備していた【仮面之魂封面ペルディオス・マスクレイド】の能力の一つ――【仮面舞踏会マスカレイド】を使い、自身の身体を軟化させた。

 そもそも仮面とは、別の何かに成るための道具である。

 【仮面の神】の【神器】である【仮面之魂封面】を使いこなす事が出来れば別の生物に成るだけでなく、砂化や液化する事も可能であり、そうすれば糸の拘束から抜け出す事も容易だっただろう。
 秋田犬はまだ使いこなせていないのでそこまでは出来ないが、スライムのような柔軟性のある肉体になるくらいは何とか出来た。

 そうして軟化した秋田犬は、前蹴りの軌道上に腹部を移動させた。
 軟化した肉体だけでなく、甲冑のような生体防具で覆われている胴体なら他の部位で受けるよりもダメージは少ないと判断したようだ。

 強力無比な前蹴りを硬い生体防具で受け止め、衝撃は軟化した肉体全部を使って受け流す。

 そして一撃ならば耐えてみせる、と秋田犬は決死の覚悟で脱力しながら攻撃を受け入れた。
 しかし黄金糸によって吹き飛ばされる事も許されず、また内部に衝撃が浸透するように繰り出されたオバ朗の前蹴りの威力は想像を超えていた。

 生体防具は大きく変形し、軟化していた秋田犬の身体は“く”の字に折れ曲がり、今にも千切れそうになるほど伸びる。
 全身の骨が砕け、全身の皮膚が手切れ、五臓六腑をミキサーでかき混ぜられるような激痛と衝撃に襲われれば、普通なら死に、生きていても悶絶し蹲ってしまうだろ。

 現に秋田犬も、白眼を剥いて崩れ落ちそうになった。

「グフッゲボォ! ――だ、だが、まだまガヒュッ!」

 だが気合で意識を引き戻した秋田犬は口から激しく嘔吐しつつも動きを止めず、再び【月天闘狼】を振ろうとした。
 軟化さたままの腕は鞭のようにしなり、その先端は音速を軽く超えていた。
 だがその手をオバ朗の右副腕によって掴まれ、次の瞬間には秋田犬の姿がブレた。
 オバ朗によって反応する間も無く【投擲】されたのだ。

 石礫めいて地面と平行に飛んでいく秋田犬の先には、薙刀のような生体槍を持って駆け寄ってきていたラムラさんがいる。

「ちょ、ッツ」

 生体防具なども含めた秋田犬の総重量は百キロを軽く超え、それが地面と水平に飛んでいく程の勢いで向かってくる。
 直撃すれば流石に屈強な雷竜人だとしても、女性であるラムラさんでは一溜まりも無いだろう。
 その為、ラムラさんは最初から秋田犬を受け止める、という事はしなかった。

 まるで地に這うように伏せる事で回避する。

 秋田犬が頭上を通り過ぎる際に巻き起こる風でラムラさんの髪が揺らめき、遥か後方でスライムが地面に叩きつけられたような奇妙な音が響いた。

「ふぅ……しま――グツッ!」

 【投擲】された秋田犬を見事回避して見せたラムラさんだったが、頭上を通り過ぎた秋田犬の体躯に遮られ、目を離すまいとしていたオバ朗を見失っていた。
 再び視界が開けた時には既に姿は無く、気配もない。しかしラムラさんは本能のままに、前方へ咄嗟に身を投げ出した。
 だが僅かに遅く、ラムラさんの背中で紫電が激しく撒き散らされたかと思えば、砲弾の直撃を受けたかのようにラムラさんの身体は前方へと吹き飛ばされ、ラムラさんの華奢な体躯はゴロゴロと地面を転がって行く。

 姿を見失った一瞬を逃さず、ラムラさんの背後に移動したオバ朗が左副腕の裏拳を叩きこんだのだ。

「うん? これは、ああ、なるほど。放電で勢いを削いだのか」

 オバ朗の裏拳は、直撃すれば脊椎と肋骨を砕くか、最低でも罅が入るだけの威力はあっただろう。
 だが激しく転がっていた筈のラムラさんは勢いを利用して即座に立ち上がり、かなり痛そうに顔をしかめつつも動きを止めていない。
 それに一瞬だけ疑問を浮かべたオバ朗だったが、裏拳が入った瞬間、ラムラさんの背面で発生した紫電が勢いを削ったのだと理解し、『よくやった。良い判断だ』と感心した様な笑みを浮かべた。

「ハアアアアアアアアアアアッ!」

「ウオオオオオオオオオオオッ!」

 そんなオバ朗の左右から迫る女騎士と鈍鉄騎士は、どちらも戦技アーツを使用した攻撃を繰り出した。

 ――戦技【憐輝士の桜嵐ハイマスト・レーゲフ
 ――戦技【戦鉄獣の牙爪撃マーブレイズ・ファロ

 触れた者の力を奪う、【憐気】を宿した連続刺突。
 四足獣の牙爪が間断なく襲いかかってくるような連続斬撃。

 どちらも高威力の攻撃を連続で繰り返す強力な戦技だが、その悉くが高速で動き続けるハルバードと呪槍によって防がれ、オバ朗の身にまで届かない。
 だが女騎士と鈍鉄騎士の攻撃の手は止まらなかった。
 以前と比べモノにならないほど剣技自体上達している両名の狙いは、オバ朗の武器を封じ込める事にある。
 肉体そのものが既に凶器であるオバ朗に武器まで加わると手がつけられない。それを封じる事ができるかどうかが、オバ朗攻略にはまず大事になってくるからだ。

 狙いを武器に絞っていたからか、最初は怒涛の攻めで女騎士と鈍鉄騎士が押していた。だが気がつけば形勢は覆され、四肢には徐々に傷が増えていく。

「ッツ! クウゥウウウ!」

「グウヌウオオオオオオッ」

 女騎士と鈍鉄騎士の呻き声。
 必死に耐えていたが、オバ朗が攻撃の速度を上げ、まるで濁流のような連撃が繰り出されると僅かに防御が綻んでしまい、その瞬間、それぞれ下から跳ね上がった【切り上げアッパーカット】を受けて空に打ち上げられた。
 それぞれ得物と盾で直撃こそ防いだものの、空中ではどうする事も出来ずに遠くへ飛ばされる。

「ウキィオオオオオオッ」

 その瞬間、オバ朗の背後からボス猿が躍りかかった。
 無手で迫るボス猿の狙いはただ一つ。背後からオバ朗にしがみ付いて、僅かにでも拘束する事だけだった。
 赤髪ショートに続く、捨て身第二弾である。

「いっけえええええ!」

「オーロ姉、撃ち続けてッ」

 とはいえ、普通ならボス猿の捨て身は無駄死に終わっていただろう。
 まだ空いている左右の副腕があったし、何より背後でもオバ朗には見えている。掴みかかって来るボス猿を捕らえる事など造作もなかったのだ。
 しかしそれを邪魔する為に、副腕だけを狙って放たれたオーロの魔砲とアルジェントの白銀のパルチザンが炸裂する。

「おお、射撃の腕も上げているな。しかしまだまだ、甘い甘い」

 子供の成長を素直に喜ぶオバ朗であるが、何もせず攻撃を受ける程甘くはない。
 副腕の指先から普段は滅多に使う事の無い黒い呪弾――【呪詛射ちカーズ・シュート】を撃ち出し、迫る魔砲弾とパルチザンを迎撃する。
 黒い弾丸のような【呪詛射ち】と魔砲弾は空中で花火めいて炸裂し、色鮮やかな閃光を撒き散らした。
 弾き飛ばされたパルチザンが、流星めいて飛んでいく。

「キキキ!」

 爆風の煽りを受けながら、ボス猿は悲鳴を上げた。
 仲間の為に捨て身で突撃し、それを援護する仲間の攻撃は呆気なく無力化されてしまった。
 つまりボス猿を待ち構えるのは、体勢を整えたオバ朗という事になる。

 それはある種の自殺と同じである。

「ふんッ」

 オバ朗は副腕の形状を盾に変化させ、【盾壁シールド・ウォール】で強度を増し、【背撃バックアタック】と【盾打シールドバッシュ】を重複発動させてボス猿に“貼山靠てんざんこう”――別名“鉄山靠テツザンコウ”を繰り出した。
 ボス猿はその太い両腕で防御を試みるが、意味は無い。
 両腕は圧し折られ、全身を拉げながら吹き飛んだ。その勢いは誰よりも強く、飛び散る鮮血が血煙のようになって軌道を残す。

 ボス猿の死――当然死んではいない――を無駄にするものか、という様に残る猛者達も攻撃を仕掛けるが、ある意味当然のようにオバ朗の優勢は崩れなかった。

 両腕を鎌にしたイス・ハーさんと【狼之魂牙剣ウルファロス】を装備した熱鬼くんが突っ込むが、何かの繰り返しのようにハルバードと呪槍で薙ぎ払われた。
 復活した秋田犬と共に女武者が仲間の陰から鋭い斬撃を繰り出すも、オバ朗に見切られて当たらない。
 気合と共に繰り出された鬼若の一撃をオバ朗は指一本で押さえこみ、オプシーが放った二頭の宝石冥獣は踏みつけられて地面にめり込んだ。
 【砂牛之魂角斧ヌストゥフ・ラビュス】を振り下ろすトロ重の顎にアッパーを決めてその巨躯を浮かべ、恐るべき強化・改良が施されたはずのスカーフェイスの骨体を殴り飛ばす。
 じゃれつく様に、しかし普通なら致命的な突進を繰り出したクマ次郎を巴投げし、四方八方から配下と共に襲いかかって来るクロ三郎の三つの頭を撫でながら脳を揺らした。

 オバ朗を倒す為に各員総力を挙げて挑んで行くが、壁は果てしなく高く分厚い事を実感するのだった。



 Φ Δ Φ




 延々と繰り返される訓練は、次第に熱を帯びていく。
 最初の方はまだ余裕があったのだが、後半のカナ美ちゃんとブラ里さんとスペ星さんが参戦した辺りからは、生死的な意味で結構ギリギリだった。
 あの三鬼は俺を殺す気だったに違いない。俺じゃなかったら間違いなく死んでいただろう。

 ともあれ、かなりやり過ぎた感のある訓練は、最初は一部の上位陣だけのつもりだった。
 だがせっかくなので手加減に手加減を重ね、五人長やら十人長といった下の方の団員とも実際に戦ってみる事にした。
 まあ、戦うというよりは、軽く遊んでやったという方が正確だろう。手の一薙ぎで生じる烈風で転び、まともに近づく事もできないのだから。
 それでも上の実力を肌で実感できたからか、評判は上々だ。
 百単位で相手にできるので手間も少なく、誕生祭――せっかくなので、迫る誕生日は祭りにする予定だ――前の余興としてはいいのではないだろうか。


 本日の合成結果。
 【忌避すべき黒の蛸墨】+【アシッド・バブルブレス】=【忌避すべき黒酸の蛸泡】
 【耐火粘液分泌】+【菫青流体アイオライト・リキッド】=【耐火粘青流体】
 【黒き不死族の騎士衣ブラックアンデッド・ナイトクロス】+【青海老鋼殻】+【多重甲羅】+【不破の鎧城殻】=【不壊なる鬼神の鎧纏城殻】


 “三百五十九日目”
 今日は朝から錬金術師さんのところに入り浸っている。

 何をしているかと言えば、思い出の味を再現するための実験だ。
 料理の味を再現するのなら姉妹さんと、今なら飯勇達も巻き込んだ方が確実だ。
 しかし今回は錬金術師さんの方が適役である。

 ――唐突だが、転生してから俺が初めて喰ったのは何か覚えているだろうか。
 白くぶよぶよで丸々と太った、栄養たっぷりの食材。

 そう、芋虫だ。
 かつて住んでいた洞窟だと、壁を掘れば比較的簡単に得る事の出来た芋虫である。

 ふとのあの味が懐かしくなり、芋虫を見つけて喰ったのだが、何というか、薄いというか、味に深みが無かったのだ。
 なぜ味が違っているのか? と小首を傾げる。
 だがよくよく思い返してみれば、以前自分で捕まえた芋虫もこんな感じだった様な気がする。あの時はそこまで深く考えなかったし、今みたいに他に喰うモノも多くなかったので特に気にしていなかったが、舌が肥えた今なら違いが明確に分かった。

 ――これはどういう事だろうか。

 そう疑問に思ってゴブ爺を喰って手に入れた【老鬼の知恵袋】を使ってみると、どうもゴブ爺が【ゴブリンの矢毒】という特製の毒薬を薄めて芋虫に与えていたらしい事を知った。
 そうする事で芋虫の味がまろやかになり、濃厚でトロトロに美味しくなるらしい。
 つまりあの時に喰っていたのは、普通の芋虫ではなかったのだ。

 毒薬が必要になるとすると、姉妹さんや飯勇達では専門外になる。
 薬膳ならば飯勇も作れるが、流石に毒は無理だ。
 そういう訳で、毒薬などの製法に長けた錬金術師さんに白羽の矢が立ったのである。

 そんなこんなであの味を再現の為に、俺は意外と長い歴史のある【薬効上昇】効果があるレンバラ石製の臼と、“インディア”という木で作られた竪杵たてきねを使い、ゴリゴリと大森林ではそこら辺に自生している数日天日干しした数種の有毒植物――“鬼酔樹アンセビ”の葉、“棘麻草イグラシサ”の根、“一死実イッシミ”の果実など――を磨り潰していた。

 これ等は俺達が生まれた【小鬼の集落ゴブリン・コミュニティ】にて、長年氏族の最年長者が引き継いできた伝統あるマジックアイテムである。

 以前はゴブ爺が愛用していた品だが、ゴブ爺が死んでからは誰も使わず倉庫に安置されていた。
 効果だけで見れば他のもっと良いのが沢山あるので、倉庫に仕舞われていても仕方あるまい。

 今回は再現という事で道具も同じモノを用意しようと思い、倉庫から引っ張りだして使っている。
 次回があれば手法も分かっているだろうから使わないかもしれないが、せっかくなので今後何かに使えないか模索する事にしよう。

 ともかく、錬金術師さんに助言され、時折手助けしてもらいながら作業を続ける。
 毒は俺に効果は無いので気楽に作業できるが、ゴブ爺、一歩間違えれば自滅するような結構難しい調合をよくやっていたな、と実際にしてみて思う。

 ともあれ、水を注いだりして量を調整しながら悪戦苦闘する事数時間。
 経験不足もあって失敗作は多く、やり直しは幾度かあった。
 出来損ないの毒薬はそれはそれで使い道があるらしく錬金術師さんが処理を快く請け負ってくれたが、申し訳なさと同時に必ず成功させると心に誓った。

 失敗で終わるのは嫌だった。

 慣れてきて、ようやくそれっぽいのが出来たので臼の中にある毒薬――【ゴブリンの矢毒】と呼ばれているらしい――を採取し、ある程度量を少なくする。
 【ゴブリンの矢毒】はまた後で使う事にして、中身が少なくなった臼に解毒効果の高い“バッテラ”の樹液を注ぐ。
 するとシュワシュワと音を出しながら白煙が上がった。
 白煙は有毒なので周囲に被害が出ないように【森羅万象】を使って一ヶ所に集めつつ、臼の中に水を追加。
 すると白煙はより勢いを増した。

 しばらくすると少し減った、青から水色に薄まった毒が残る。ここまでくると毒性も弱く、あまり使い道がない毒薬になる。
 そんな中に、芋虫を数十匹ほど投下した。

 臼の中の毒薬を啜り、急激に成長していく芋虫達が蠢く。
 毒薬が殆ど無くなると、芋虫を取り出して【森羅万象】を使ってサッと水洗いしてから、パクリと喰う。
 ぷよぷよとした胴体はエビなどのようにプリプリとしたほどよい弾力を備え、ジューシーで濃厚な体液が口内を満たす。
 竜肉には劣るだろう。その他の迷宮食材にも勝てはしない。

 しかし何か昔を思い出させるような、懐かしい味だ。
 取りあえず手順は分かったので、量産して皆に配ってみようと思う。量産には錬金術師さんが手助けしてくれるそうなので、簡単にできるだろう。

 ああ、しかし、本当に懐かしい味だ。


 “三百六十日目”
 今日は姉妹さんのところで包丁を振るっている。
 隣にはエプロン姿の姉妹さん達の姿があり、調理台を挟んで飯勇パーティが居る。

 飯勇パーティは主に食事の用意と、時間がある時には姉妹さん達に料理を教えるように命令している。
 今回はそれに俺がお邪魔している、という訳だ。

 【海藻神之調理鍋タングレア・ポッター】を始め、【料理之調理具クッキング・オーゼル】といった【神器】級の調理器具はあるし、【海藻料理免許皆伝】や【特級海鮮調理術】などを持っている。
 料理は今までもしてきたのだから、そこそこの料理なら、教えてくれればモノにできる。

 などと思っていた時期が俺にもありました。

 好きでそれなりに料理してきたし、これまでも手伝いはしてきた。
 だがトップレベルともなると勝手が違い過ぎるらしい。

 目まぐるしく流れる工程。秒刻みで動く現場。僅かな違いで出てくる味のあまりにハッキリとした差。
 食材を鮮やかに解体する技術。食材の良さを最大限発揮する仕込み。食材を美味しそうに見せる盛り付け。

 その他にも色々とあり、想像していたが、それを越えるモノがここにあった。
 しかも姉妹さん達はそこまでのレベルに何時の間にか到達してしまったようだ。

 今後は気軽に手伝いするのは止した方がいいかもしれない。
 ちょっとした料理なら和気あいあいと出来るが、飯時では邪魔にしかならないに違いない。

 色々と思う事はあるが、それでも美味しく出来た料理を堪能する。
 うん、やっぱり姉妹さん達の手作りってのはいいもんだ。
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転生したらスライムだった件

突然路上で通り魔に刺されて死んでしまった、37歳のナイスガイ。意識が戻って自分の身体を確かめたら、スライムになっていた! え?…え?何でスライムなんだよ!!!な//

  • ファンタジー
  • 完結済(全303部)
  • 9285 user
  • 最終掲載日:2016/01/01 00:00
Only Sense Online

 センスと呼ばれる技能を成長させ、派生させ、ただ唯一のプレイをしろ。  夏休みに半強制的に始める初めてのVRMMOを体験する峻は、自分だけの冒険を始める。 【富//

  • SF
  • 連載(全316部)
  • 7110 user
  • 最終掲載日:2016/01/21 21:11
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