77歳女性が急性心不全…初の震災関連死か

2016年4月19日6時0分  スポーツ報知
  • 自衛隊員から配給のおにぎりを受け取る住民

 熊本、大分両県を中心に地震が相次ぐ中、避難のため「車中泊」をしていた50~60代の女性3人が熊本市内の病院でエコノミークラス症候群と診断され、意識不明の重体となったほか、熊本県阿蘇市の避難所では市内の女性(77)が17日に死亡していたことが判明した。初の震災関連死の可能性がある。

 今後も多くの住民が避難生活を続けなければいけない中、関連死を防ぐために必要なことは何か。

 神奈川県藤沢市民病院の救命救急センター長・阿南英明さんは、居住環境が決して良いとはいえない避難生活に「通常と比べて状況が悪くなるのは当然だし、仕方のないこと。その中で、少しでも体調の悪化を防がなければいけません」と話す。手洗いによる感染症の予防を第一とした上で、さらに3つのポイントを挙げた。

 〈1〉車での生活には細心の注意を

 余震の回数や規模を考慮し、すぐに逃げられるように自家用車内で避難生活を送る人も多いが「極力控えてほしいと伝えています」。車中での生活は、2004年の新潟県中越地震で死者が出て注目されたエコノミークラス症候群を引き起こす可能性が高いという。「車中では足が低い位置にあり、同じ体勢で長時間過ごすと血管内に血栓ができやすくなる。水分をしっかり取ることと、特に足を動かしてください」

 〈2〉食べるのと同じくらいに「出す」のも大切

 慣れない生活や明かりを消せない状況は、精神的ストレスとなり、不眠や高血圧になりやすいが、とりわけ問題になるのは便秘。「避難所はトイレ環境が良くないことが多く、特に女性は水分を取るのを控えたり、(便意を)我慢して便秘が余計にひどくなるのが見られますが、体には非常に悪い。『出す』ことを優先させてください。トイレの環境を整える努力も必要だと思います」

 〈3〉自分に必要な薬を把握し、伝達する

 避難所での生活が体調を悪化させるのはもちろんだが、特に高齢者に該当するものとして「普段服用している薬が定期的に飲めない」ことが悪影響を与える。「医師は何よりも情報が必要。例えば『高血圧の薬が欲しい』などと分かれば、準備ができる。それをきちんと伝えてください。今後のことになってしまいますが、『お薬手帳』を持っていることをお勧めします」

 ◆エコノミークラス症候群 同じ姿勢で長時間座るなどして手足がうっ血し、静脈に血の塊(血栓)ができる症状。血栓が肺の血管を詰まらせると呼吸困難に陥り突然死する恐れがある。薬で血栓を溶かす治療法が一般的。飛行機の狭い座席を利用した旅行者に多く見られたことで知られるようになった。

 2011年3月11日に発生した東日本大震災の「震災関連死」は、震災から1週間後の時点で469人。最新の統計である昨年9月末まででは計3407人に上る。最も人数が多いのは、福島県の1979人。宮城県が918人で続く。福島県が突出しているのは福島第1原発の事故による避難者数が多く、また帰還が困難であることが要因とみられる(数字はいずれも復興庁調べ)。

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