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リーダーのマネジメント論

成果さえ出せば「午後2時でも家に帰ればいい」 カルビー会長 松本晃氏

 

2016/4/19

 スナック菓子国内首位のカルビー。2016年3月期は7期連続で純利益最高を見込む。高コスト体質だった同社を高収益企業に生まれ変わらせたのが09年に最高経営責任者(CEO)兼会長に就任した松本晃氏だ。商社出身で「プロ経営者」と評される松本氏は老舗企業をどう変えたのか。リーダーシップ論を聞いた。

 スナック菓子国内首位のカルビー。2016年3月期は7期連続で純利益最高を見込む。高コスト体質だった同社を高収益企業に生まれ変わらせたのが09年に最高経営責任者(CEO)兼会長に就任した松本晃氏だ。商社出身で「プロ経営者」と評される松本氏は老舗企業をどう変えたのか。リーダーシップ論を聞いた。

 CEO兼会長就任から増収増益を6期続けています。

 「私が経営で大切にしているのは成果や結果です。成果を出すためにカルビーの従業員の働き方を変えました。その一つに、カルビーでは従業員が1年に1回、所属する部署の上長とC&A(コミットメント&アカウンタビリティ)とよばれる契約をします。その契約にもとづいて報酬が決まります」

 営業部門のように成果の見えやすい仕事とそうでない仕事があります。

 「総務や経理など成果を数値にしにくい部署もありますが、出来る限り数値化した上で契約に沿って成果を出せたのかを客観的にチェックします。基本的な考え方として、仕事が違えば給与体系が違うのは当たり前です。野球で言えば選手とフロントは給料体系が全く違う。しかし日本の企業は営業でも総務でも給与体系は同じです。これを変えないといけない。稼ぎたい人間は青天井の給与体系の部署を志望してどんどん稼げばいいと思っています」

 給与体系も見直しました。

 「カルビーの給与は基本給を7とすると成果給は3です。これでもまだ日本的経営です。カルビーに来たときには成果給の部分はほとんどありませんでした。徐々に成果給の割合を高めています」

 社内に成果主義への抵抗はありませんでしたか。

 「成果主義だからといって給料を下げろといっているのではありません。できる人間の給料を上げるようにいっています。人件費を抑えることが目的ではないからです。『我々の仕事は人の仕事』というのが私の信条です。人に投資すれば、その人が考えて何かを創造します。設備投資をするかしないかを決めるのも人間です。最初から設備ありきで投資をするのではありません。人に投資をすることがすべての事業につながります」

 早い時期から成果主義を重視してきました。

 「伊藤忠商事の子会社で経営に携わっていた1988年1月に日本で初めてフルコミッション(完全歩合制)の営業社員を雇いました。基本給はほとんどないかわりに青天井で稼げる。すると彼らは圧倒的に成果を出しました。金を稼ぎたい人たちが集まってくるから当たり前のことです。日本式の年功序列の賃金体系が嫌いな人たちですから。その後、ジョンソン・エンド・ジョンソンの社長になったときには2つの賃金体系を用意しました。もともとの賃金制度だった日本式と新たに成果給を厚くした賃金制度です」

 成果主義にこだわる理由は何ですか。

 「成果主義の軸は変わりません。成果を出さなければ何もできません。給与も上げられない、税金も払えない、配当も払えない。ただ、成果を求めるといってもルールは絶対に守らなければいけません。その点は強調しています。スポーツだってルールの中で競い合います。プロレスなら殴ってもいいかもしれませんが、相撲では反則負け。仕事のルールを守る、それは倫理だと私は思っています。倫理感をもって行動している限り、変なことは起きない。一方、不可抗力で起こる問題があります。それは危機管理の次元の話です」

 カルビーでは人材のダイバーシティー(多様化)も進めています。

 「ダイバーシティーを進めるのもそれが成果につながるからです。とはいえ、カルビーでは外国籍の社員はまだまだ少ない。これから増やしていきたいと思っていますが、採用人数は人事担当に任せています。私からは男女比は半々、理系と文系、院卒と大卒も半々、日本人と外国人は2対1の割合で採用してほしいと伝えています。外国人を増やすにも今の日本の会社は仕組みが悪い。10年働かないと役職につけない、給料も増えないということであれば魅力がありません」

 社員一人ひとりの席を固定しない「フリーアドレス制」も導入しています。

 「職場は考える場所です。考える場所はきれいにしようというのがフリーアドレス制を始めた理由です。座席を固定すると書類がたまる。それを防ぐため、午前と午後で1日に2回、席を入れ替えます。個人の荷物の保管スペースもほとんどありません。結果的に無駄な書類が減り、ペーパーレス化も進んでいます」

 経営にあたり最も重視するポイントは何ですか

 「会社はもうけないといけないというのが私の基本的な考えです。利益がまずあって、次に売り上げです。重視しているのは営業利益率、利益の伸び、1株あたりの利益。営業利益率は15年3月期が約11%。これを早い段階で15%に引き上げたいと考えています。利益率を上げるために進めてきたのが製造コストの削減です」

 「カルビーの製造コストが高かった理由は工場の稼働率の低さ、そこが弱みでした。カルビーは全国に14の工場があります。多くの工場を作ってきた理由は理解できます。スナック菓子は空気を運ぶようなものなので、運賃が高くなります。商品の鮮度もありますので、消費地に近いところに工場を作ってきました。その結果工場が多くなっています。09年の就任時には工場の稼働率が約6割でしたが今は平均すると約9割になっています。現況の問題は稼働率に工場間でばらつきがあることです」

 一段の成長へ向けた課題は何でしょう。

 「コスト削減には限界があります。成長の次の段階として、新しい付加価値をつくっていかなければいけません。スナック菓子とシリアル『フルグラ』だけでは限界があります。第3の柱をつくりたいと考えています」

 「食品業界は本来もうかる産業です。食べずに生きている人はいません。しかし国内の食品メーカーは利益率が低い。それは日本村の中だけの話です。いままでの日本の食品メーカーは売上高が増えていても利益は増えない。それは成長ではなく膨張です。国内だけでは人口が増えない。ならば世界に出て行けばいい。足元のカルビーの海外売上高比率は約12%ですが、遠くない将来には国内と海外で半々にします」

 経営者として日々心がけていることはありますか。

「私は毎週日曜日に3時間散歩をします。半分は純粋な散歩、もう半分がスーパーやコンビニエンスストアの定点観測です。スーパー4軒、コンビニ6軒を回ります。私の考えの基本は現場主義です。現場を見なければ何もわかりません。じっくりと観察します。店頭にカルビーの商品が置いてあるかを見るのではなく、どういう売り場ができているのか、お客さんは何を手に取るのか。コンビニは特に1週間単位で売り場が変わります。今週は何が置いてあるのか、それはなぜなのかをじっくりと考えるようにしています」

 社員にはどのような働き方を期待していますか。

 「私は午後4時には仕事を切り上げます。遅くまで残ることはありません。社員にも意味のない長時間労働はやめるように言っています。社員も仕事が終わったのならばたとえば午後2時でも帰ればいい。遅くまで残業して仲間内で飲みに行き、安い酒を飲んで上司の愚痴を言う。そんな人間が翌日いい仕事ができますか。魅力的な人間でしょうか。魅力のない人間は仕事ができない。早く帰って、英会話やビジネススクールで学んだり、ミュージカルやコンサートに行ったり、ジムで体を鍛えたり、子供と過ごす時間を作りなさいといっています」

 松本晃(まつもと・あきら) 1972年京都大学大学院農学研究科修士課程修了、伊藤忠商事入社。93年ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル(現ジョンソン・エンド・ジョンソン)入社、社長、最高顧問を歴任。2009年6月から現職。京都府出身。

(今井拓也 代慶達也)

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