今回の熊本地震で愕然とするのが、気象庁の無能ぶりだ。前震、本震、余震の呼び名がクルクル変わり、取り消されたりしている。

 気象庁は当初、14日夜に熊本県益城町で発生したM6.5の熊本地震を「本震」と呼んでいたが、16日未明に南阿蘇村でM7.3の「余震」が起きると「本震」に入れ替え、熊本地震は一転、「前震」となった。

 地震学ではマグニチュードの一番大きなものを「本震」と呼ぶ。確かに規則に従おうとしたお役所の気象庁らしいミスともいえるが、M7.3のエネルギーの大きさは阪神・淡路大震災と同規模で、M6.5の約16倍に及ぶ。全く規模が違うのだ。

「本震」が控えていることを見抜けなかったこと自体が罪なのだが、気象庁は16日の会見でこんな言い訳をした。

「ある地震が起きた時、さらに大きな地震が起きるかどうかを予測するのは、一般的に難しい」

「データの残る1885年以降、M6・5程度の地震が起きた後に、さらに大きな地震が発生した例は一度もない」

 武蔵野学院大特任教授の島村英紀氏(地震学)がこう言う。

「“過去に例がない”といっても、気象庁の説明はたかだか100年ちょっと前までの過去でしょう。本震と余震の判断を誤って発表し被災者たちを混乱に陥れた言い訳にはなりません」

 気象庁は2011年の東日本大震災でも、3.11の2日前に宮城県で起きたM7.3の「前震」を「本震」と見誤った“前科”がある。大体、“過去に例がない”というが、国立天文台が編纂する「理科年表」によると、今回の本震と同規模のM7〜7.5程度の大地震が大分県から近畿地方に向かって連鎖的に発生した「慶長豊後地震」が、1596年に起きたとされている。

 気象庁は、言い訳をする前に過去の事例を徹底的に調べるべきだ。