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zoom RSS 熊本の地震における原子炉の緊急停止のメリット・デメリット

<<   作成日時 : 2016/04/18 22:36  

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「原子炉の緊急停止」=「即安全状態」と勘違いしている人が多すぎる(´・ω・`)
原子炉の緊急停止が作動して温態停止状態に至るまで継続した冷却が必要ですし、その後も崩壊熱があるので継続した冷却が必要です。


結論から言えば…

原子力規制委員会が今回の地震で現時点では緊急停止の指示を出していない事
は理に適っているのである。

「餅は餅屋」「山の事は樵に聞け」
そんなに原発行政に物申したいなら勉強しろ!


…なのである。


緊急停止とは
おおまかに言えば、制御棒を突っ込んでホウ酸水を注入し中性子を吸収し核反応を抑制、あとはひたすら冷却して一次冷却水の温度が約286℃に維持され、一定以下の未臨界状態を迎えてやっと温態停止状態。これが原子炉の緊急停止。
(詳しくはPWRの原子炉スクラムでも調べてくれ)

画像


福島第一(BWR)の事故は原子炉緊急停止後の事故
福島第一原発事故は地震後も運転し続けて過酷事故に陥ったわけではなく、地震による緊急停止(原子炉スクラム)後、地震による外部電源喪失と津波による非常電源喪失で、冷却継続が出来なくなったから炉心損傷・炉心溶融に至った事故なので、状態としては『九州なり四国なりの原発を緊急停止する事で福島第一に一歩近づく』のである。
(細かい事は事故調でも読んでくれ)

緊急停止が危険とは言わんが、『この状況』に於いては、それほど安全性が向上した状態になる訳じゃないよって話


『この状況』
南九州の送電網がどうなるか不安な状態。
震源が九州を南北に分断する様な形で移動しているので、送電網が南北で切れる可能性だって高い。
黒川第1発電所(水力)は崩壊、地熱発電所も被害を受ける(そもそも震源になりうる場所に出来るだけ近づける発電所なので当たり前)、幸い火力発電は熊本県にはないので、送電網次第。
電力供給が需要を下回れば、一気に広域停電になる。
つまり原発では「外部電源喪失」状態になる。
そうなると非常用ディーゼルで冷やすしかないわけで、どんどん福島第一に近い状況を作ってしまう訳である。


画像

九州の火力発電MAP(九州電力HPより)

上図を見ても、現状南九州の電力供給は余震による送電網南北分断のリスクを考えると非常に心もとないのである。


ちなみに規定を超える揺れを検知したら、僅か数秒で原子炉スクラムが行われるので、今止めても揺れてから止めてもさして変わりませんよと。(´・ω・`)

それに、原子炉の停止状態には2種類あって、緊急停止で至るのは温態停止状態(一次冷却材の温度が約286℃に維持されている状態)で冷態停止状態(一次冷却材の温度が約90℃以下)ではない。

動いていようが停止していようが冷却が途絶えれば事故に至りますよと。(´・ω・`) 

核燃料の崩壊熱の他に核分裂生成物の崩壊熱があるので、制御棒やホウ酸をぶち込んでも冷却継続は必須。
(福島第一原発の燃料プールが冷却不全が続いて、自衛隊がヘリで水を撒いたり、いろいろあったの覚えているでしょ)

つまり…

仮に『念のために原子炉を緊急停止』させて得られる安全上のゲインは、「全電源喪失に陥った場合、炉心損傷や炉心溶融に至る時間が、ほんの少し長くなる」だけ。

温態停止状態から冷態停止状態まで持って行くには、減圧処理など長期間の作業が必要で、そこまでやって初めてこのゲインとなる時間が「数日」に伸びる。
(もっと冷やして60℃とか40℃まで持って行くと、更に伸びる。ちなみにすげぇ時間がかかる。その辺りは福島第一原発の事故後の冷却の様を見ていればわかると思う)


大きく変わるのは、安全性ではなく南九州や被災地への給電能力が著しく低下すること。
結果として避難生活が苦しくなること。
外部電源喪失のリスクを高める事。

つまり、、「全電源喪失に陥った場合、炉心損傷や炉心溶融に至る時間が、ほんの少し長くなる」というゲインを得るために、「外部電源喪失のリスクを高め」「震災被災者の救助や避難生活に影響を及ぼす」選択肢は取れないのである。


もちろん、このゲインは過酷事故を防ぐ緊急時に於いては貴重な一瞬なので、全電源喪失になってしまった状況下では貴重な作業時間となるのだが…その一瞬を稼ぐために外部電源喪失のリスクを高めちゃ本末転倒なのである。



原発が直接地震に襲われなくても、地震による送電網の喪失で外部電源喪失になれば否応なく原子炉緊急停止になるのだし、そうなったら非常用電源(主にディーゼル発電)で冷やしていく訳だし、規定以上の揺れを喰らっても緊急停止が行われて、外部電源が生きていれば外部電源で、死んでいれば非常用電源で冷やしていくだけ。


だからもし万一に備えた安全を求めた行動がしたいなら、原子炉の冷却手段の多様化に尽きるので、「念のため」やることは被災地への給電能力を著しく落としてでも原発を止める事じゃなく、非常用発電機の増設と分散配置などの冗長化だと思うの(´・ω・`)

あと、西日本の原発はほとんどがPWR(加圧水型軽水炉)なので、福島第一のBWR(沸騰水型軽水炉)とは違う事も念頭に入れるべき。

画像


つまり、冷却系党に「二次冷却水」が存在し、そちらの制御は高温高圧で放射線が混じる一次冷却水ほど困難ではないので、二次冷却系統のベントによる冷却系の復旧方法が取れる分、厳しい環境に於いては取れる手段が増える分、優位性があると言えるのである。
(よく海外のPWRで異常な爆発音って煽りニュースがあるけど、アレは放射線を含まない二次冷却系をベントする事で、一次冷却系の不具合解消をしているのである。高温になった二次冷却系をベントした時に発する爆音で騒いでいるだけ。実態は、あーこれで一安心。なのである。)


中央構造線にそって震源が移動している可能性があり、四国の原発止めろ−という話もあるけど…

まず、誘発地震の可能性の有無に関して
学者でも意見が割れている話だし、そもそも地球を割って調べた地震構造でもないので、かなり不正確な要因として捉えるべきだろう。間違っても「盲信してそれを根拠に大騒ぎ」ってのは有り得ない話。

今朝地震速報が震源の深さ10kmを100kmと誤って流しちゃったんだけど、その数値見て即座に「どっひゃー」って地学的に驚けない人間が、中央構造線ガーとか言って誘発地震の危機を煽っても、説得力皆無です(´・ω・`)
そんなに地震が心配なら地学をちゃんと学べよ(´・ω・`)
国立大学の入試問題を解くレベルまで学べば、話半分に聞くべき学説と、深刻に受け止めるべき学説の見極め位は出来るようになると思うよ…(´Д`)

次に、原子炉が設計以上の揺れを喰らって破断するリスク
これは2つの論点がある。
一つは緊急時の今、もう一つは平時のそもそも論。

緊急時の話からすると…
「最大1580ガルの揺れを熊本でマークした。原発直下で起きたら設計上750ガルが限度の川内は保たない、止めろー」
これは、そもそも地学を理解していない話。
地震の震度は、マグニチュード震源からの距離観測値の地盤の強度に依存する。
だから、一番揺れが激しかった場所が最大1580ガルの揺れを記録しても、震源から離れ強固な地盤の上に建設された川内原発敷地内の地震計は最大12.6ガルしか記録していない。

逆に言えば、1580ガルをマークするには、震源に限りなく近い事と地盤が弱い事が必要になる。

「震源に限りなく近い原発」を実現させたくないから、志賀原発では見つかった断層が活断層かどうかで大騒ぎしている訳(地学を学んだ俺の私見では、絶対年代測定法が変わって活断層の定義を変えられた話だし、規制庁の主張が科学的から程遠い話なので、馬鹿馬鹿しいとは思っている)で、この疑いすら発生していない原発に於いて、その心配をするのはいささか根拠が薄すぎる。

「脆弱な地盤で震度は上がる」を実現させたくないから、古く固い岩盤の上にコンクリートの塊として原発を建築し地震に強い構造を保っている訳である。

ここでガルと震度の関係を見てみよう
画像


12.6ガルって事は概ね震度3に相当する。
川内原発周辺の地震計は震度4だったから、いかに原発という建築物が強固な地盤の上に建てられているか良く分かる話である。


で、そもそも論の方だけど
これは平時に行う論議。つまり地震の多い我が国で原発はどうだろうか?という話。
賛成こそしないが大事な議論だと思う。だからこそ、こういう気持ちが不安定で理性的な判断が難しい緊急時に行う議論ではないし、そもそもその議論に必要な地学をキチンと履修してないだろお前!的な奴が多すぎ。

平時にやれ!
そして、緊急時こそ平時に定めたルールや規則を可能な限り順守する事が大事。

「万が一に備え、法の定めがなくとも総理大臣の超法規的措置で原発を止めろ」と、
普段「政府は憲法・法律を守れ」「独裁ガー」「緊急事態条項ハンタイ」と叫んでいる方々が叫んでいる様にしか見えん(´・ω・`)
それも、安全確保なんてそっちのけで…


つまり、非理系・非技術系による政局騒ぎだよね。


将来的に原発をなくそうという話は賛成こそ出来ないが、一つの意見だとは思う。

その根拠の一つに地震リスクがあっても良い。

だけど、余震が続き送電網に不安を抱える中「川内や玄海や伊方を今すぐ止めろ」ってのは、原子炉の構造や特徴や地理や地学や被災者を完全に無視したヒステリーに過ぎない

発言者の教養が低い事が伺える。



ここから恨み辛み…

東日本大震災の時にも書いたが…チェルノブイリ事故で何を学んだんだ?
そして5年経って、東日本大震災で何を学んだんだ?

当時、福島第一に状況をリアルタイムに入手出来た情報だけで説明した記事、その後判明した事実や事故調の内容と照らしあわせても、それほど大きな過ちは見られない。当たり前である。マスコミの記事に含まれる記者の思い込みを排除した純粋な『事象』を原子炉の仕組みに照らしあわせただけなのだから。


そして、その記事は多くの好評価だけでなく、ひどい罵詈雑言も喰らった。
ブログのコメントでは、反論になっていないような誹謗中傷コメントは排除しているが、はてなブックマークなんかを見れば、その痕跡は残っている。
そいつらは今も変わらずデマをばらまいているし、風評被害拡大したり、ロクでもない奴等ばかり。困ったものである。

「観測された事象」を「仕組み」に当てはめ、ブレが疑われる学説や推論は「変数」として暫定的に代入する。
変数が元となる話は、結論も変化する可能性があるから推論のままにする。

たったそれだけの話なのである。(´・ω・`)


さて、緊急時の原発停止判断根拠として中央構造線に沿った誘発地震に疑念を呈したが、防災の為の注意喚起としての誘発地震の可能性を否定した訳ではないし、充分有益なので、地震でライフラインが絶たれた状況に陥っても大丈夫な備えをしておこう。充分な救助が得られるまで時間は必要で、その間の備えは大事なのである。
(はい、最後の一文は宣伝ですw)










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