避難者のケア 医療不足をどう補うか
熊本県などの被災地では相次ぐ地震や避難所でのストレスで人々は疲労を募らせている。阿蘇市の避難所では高齢の女性が死亡した。現在も9万人以上が避難しているが、高齢者や持病を抱えた人も多い。長期化を見据えて避難者の体と心のケアに全力を挙げなければならない。
現在、熊本県外から災害派遣医療チーム(DMAT)や保健師らが続々と現地に入っているが、問題は救済の拠点となるべき地元の病院が地震で機能不全に陥っていることだ。
熊本市と周辺の救急患者を受け入れる役割を担っている熊本市民病院をはじめ4施設が建物損壊の危険があり、電気や水道、ガスの供給が困難になっている病院も多い。地震のショックで狭心症の発作を起こした人もおり、入院患者700人以上を他の病院へ移した。
現在は避難所や自宅にいる人も体調を崩して病院搬送を必要とするケースが続出する可能性がある。阿蘇市の避難所では77歳の女性が倒れているのが見つかり、急性心不全で死亡したことが確認された。医療ケアとともに近隣地域の医療機関の支援も急がねばならない。
特に人工透析の患者への手当ては緊急を要する。熊本県内の医療機関の多くで透析ができなくなり、患者約2000人が他施設に通うことになったといわれる。人工透析は大量の水が必要なため、厚生労働省は同県や自衛隊に透析施設へ優先的に給水車を回すよう要望している。
過密状態の避難所ではかぜやインフルエンザなどの感染症が流行しやすく、体が衰弱していると重い症状につながる危険がある。マスクの着用や手洗いを徹底し、感染した場合には早めの対応が必要だ。
これまでの大地震では、てんかんなどの精神疾患のある人が薬の不足を心配して避難所に行かず、倒壊の危険のある自宅で孤立し、避難所で静かにしているのが苦手な発達障害の子を抱えた家族が車で何泊も過ごす例があった。避難所で目や耳の不自由な人に情報が届かず、補給の食糧を得られなかったこともある。自らSOSを言いにくい災害弱者へのきめ細かい配慮が必要だ。
多くの医学会や患者団体がホットラインやメールで相談を受け付け、災害支援マニュアルをネットで公開している。医療スタッフでも専門外の疾患・障害特性については知らないことがよくある。十分に連携を取って避難者の命を守ってほしい。
続発する地震の危険のため一般ボランティアが現地に入れない中で、派遣された医師や保健師の活動は極めて重要だ。国も被災地での医療スタッフの活動を全面的にバックアップすべきだ。