水がない。食べ物がない。着替えがない。

 熊本や大分の被災者たちから悲鳴があがっている。16日未明に被害を一気に広げたマグニチュード(M)7・3の地震から、きょうで丸3日が経つ。

 不測の災害に備えた家庭でも備蓄が尽きてしまう頃だろう。震災後の劣悪な生活で犠牲者を増やすような事態は何としても防がねばならない。

 捜索救難作業を続けるとともに、ここは官民あげて、一刻も早い物資の供給と生活環境の改善に全力をあげるときだ。

 救援物資そのものは、被災地の近くに集まり始めている。だが肝心なのは、被災者一人ひとりの手元に届けることだ。

 官の力だけでは限界がある。ノウハウのある民間団体や企業と連携し、きめ細かい対応のネットワークづくりが急務だ。

 いま起きている問題の一つは「ミスマッチ」だ。熊本県庁には、企業や自治体からの物資が山積みになっている。過去の災害でも繰り返された光景だ。

 被災者に届けたいが、各市町村の事情がわからない。やみくもに送るわけにもいかない――と県は言う。一方、市町村は、一気に膨らんだ避難者への対応などで精いっぱいで、個々の避難所ごとの被災者ニーズの把握まで手が回らない。

 どこにどんな物資がどれだけ届いているのか、県全体での情報共有も十分でない。こうした混乱は、道路が寸断され、通信環境が悪い状況下では避けられない面もある。

 だが、いまも9万人以上が避難生活をしており、車中泊をしている人びとも多い。エコノミークラス症候群も含め、心身の状態悪化が心配される。

 被害が大きな自治体ほど正確な情報をつかみにくいのは、東日本大震災の教訓でもある。

 そのため政府は今回、自治体からの要請を待たずに物資を送り込む「プッシュ型支援」に乗り出している。福岡や佐賀などに集積拠点を置き、そこから被災地に運ぶという。

 被災地から離れた場所に拠点を置く方法は、07年の新潟県中越沖地震で効果を発揮した。運送会社の倉庫などを使い、民間のノウハウに頼ることが出来たのが成功の鍵だったと、当時の担当者は話す。

 その教訓を生かすべきだ。今回の震災現場には、全国から被災地経験のある行政マンや、ボランティア活動に詳しいNPO関係者らが集まりつつある。彼らの知恵と手を借りて、効率的で機動性のある支援体制づくりを急ぎたい。