ミランは現地時間17日、セリエA第33節でサンプドリアと対戦した。クリスティアン・ブロッキ新監督にとって就任初戦となった試合だか、ミランがアウェイで1-0の勝利を収めている。この試合で、本田圭佑に出場機会は訪れなかった。システムを変更したことで戦術も変わったのだが、シニシャ・ミハイロビッチ前監督を解任して感じたのは虚無感ともいえる結果だった。
(取材・文:神尾光臣)
「ものすごく良い感触を得た。チームにはポゼッションを大事にするように説いた。もちろんいきなりは変わらないが、部分的には素晴らしいものも見せてくれた。たった数日間でこういうものを見せるということは、決して簡単ではない」
サンプドリア戦後、ミランのクリスティアン・ブロッキ監督は記者会見上で非常に満足そうな表情をしていた。就任初戦、しかも突然の監督交代劇で練習時間はあまり取れなかった中、アウェイで1対0だ。
もっとも、スタンドで観ていて監督と同じ感想は持てなかった。余計なタッチが多く、エリア前でスローダウンするパス回し、ガラ空きなサイドの守備、完全に死んだ右サイドの連携。決勝点はミランの選手のチャージをファウルだと解釈し、サンプドリアの選手が棒立ちになった隙をかろうじて突いたというものだった。
「内容は我々が勝ちに等しかったと思う。戦術的に準備したことをすべてやれた。ただ拮抗した試合は(偶発的な)エピソードが分ける。そうなって敗れたにすぎない」と語った敵将ビンチェンツォ・モンテッラ監督のコメントの方が、はるかに説得力があったように感じた。
おそらくシニシャ・ミハイロビッチ前監督なら、「やれることはまだまだやれていない」「正直勝つにふさわしい内容ではなかった」とコメントしていたであろう展開だった。
さてその試合だが、ブロッキ監督は予告通り4-3-1-2のシステムを敷いた。トップ下にはジャコモ・ボナベントゥーラが起用され、決勝点も彼がアシストしたものだった。そして試合後、ブロッキ監督はトップ下の選手にどういうプレーを求めたのかということも、コメントの中で明らかにした。
「ボールに多く触ってパスを回していくようなクラシカルなトップ下ではなく、よく動いて左右のスペースに流れていくようなプレーを求める。そしてFWと連動し、3人で前線のスペースを突くという動きが理想だ。より攻撃的に振ることになるが、守備の負担を減らすことでそれは可能になるのかなと思う」
確かにそういう動きの違いは、ミハイロビッチ前監督が4-3-1-2のシステムを使った時と比べてもはっきりしていた。当時は、本田やボナベントゥーラには中盤を補完する一人としての動きを求めており、守備の際には中盤に吸収され後方をフォローするような役割を課していた。
対してブロッキ監督のトップ下は、いわば2トップを後方からフォローするもう一人のFW的存在。2トップの動きに合わせ、流動的に前線で動くというものである。
ということで、敏捷性の高いボナベントゥーラがまずファーストチョイスとして選ばれ、彼を下げた後にはケビン・プリンス・ボアテンクを使うという選択に至ったのだろう。確かにスピード、特に瞬発力に劣る本田にとっては、戦術的にもやや不利な立場になったということを意味するのかもしれない。
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