ところが、より情報ソースに近い猪瀬副都知事のブログ記事「福島原発の放水活動で東京消防報告。今後の教訓にしたいこと。」には、次のような記述があります。
○ 本部は原発の現場より20km離れたところに前線指揮所が設置されている。当初4時間の予定であった放水が、連続7時間の放水になったと副都知事は述べているわけですが、それは20日21:30に放水を開始しながら、翌1:25、1:45、2:30、4:00とパラメータ測定を行いながら、原子炉圧力計(A)がほぼ正常値に戻るまで放水を続けたという私たちの想像と、ほぼ一致します。ならば、逆に言えば、放水塔車のディーゼルエンジンを破壊し、また経産大臣が直々に現場作業員に対して恫喝を行いながらも、それでもなお放水を行わねばならない深刻な事情があった、そしてそれについて、東京消防庁や東京都には知らされていない、という推測が成り立つでしょう。
(中略)
○ 現場を知らない本部の人達から、東京消防庁が現場で判断した方針を変更するよう度々要求された。
・放水は当初4時間の予定だった。その後状況を勘案し、必要に応じ再度放水することにしていた。しかし、連続して7時間放水し続けるよう執拗に要求された。結果として、7時間放水することになったが、そのため2台ある放水塔車のうち1台がディーゼルエンジンの焼き付きにより使用不能となった。
・東京消防庁にて海から放水塔車までの給水ホースの設置ルートを800メートルの最短距離で、設定していたが、遠回りにするように執拗に要求された。
・「俺たちの指示に従えないのなら、お前らやめさせてやる」の発言もあった。
○ 職員の命を預かる隊長としては、現場をわかっていない人達に職員の命を預けるわけにはいかない。
逆に、ごく常識的に考えて、東電・政府は東京消防庁の現場の職員に、今3号機のパラメータと炉心で進行していると思われる事態を説明する必要がないため、現場の作業員としては「現場をわかってない人たちに不可解で、かつ実行に無理がある指示をされた」という憤りを感じることは必然です。
ともあれ、この、おそらくは確度が高いと思われる推測が意味するものは、非常に大きい。なぜなら、このとき東電ばかりでなく、経産大臣をはじめとした菅政権の中枢部分が、3号機で起きていた異常事態を周知していたということを意味しているからです。
さて、3/21の14:30に、事故後初めての海水サンプリング調査を東電は実施したことは、みなさんご記憶の通りです。東電の発表によると、その調査によって基準値を大幅に上回るI-131、Cs-134、Cs-137が検出されました。
図21 東電発表 3/21 海水サンプリング核種分析
なぜ、この時期になって初めて東電は海水サンプリング調査を行ったのか。それは、3号機からの放射性物質の放出を防ぐために放水した大量の水の一部が、おそらく海に流れ込んだからだ、と考えれば辻褄が合います。
また、3月27日の時事通信によると、21・22日に東電は福島第一原発敷地内の土壌を採取して、プルトニウムの検出検査を行ったことも、20日にMOX燃料を使用している3号機の格納容器内で爆発があったと考えると符合します。そして実際に、28日の東電の発表によると、プルトニウム238、239、240が検出されました(3月29日 読売新聞)。これも、3号機格納容器が爆発したことの有力な証拠になるでしょう。
3号機の話に戻ると、21日15時から灰色の煙が放出されていることが確認されました。23日の官邸資料(削除済み)から引用します。
15:55 3号機に関し、灰色の煙が噴出(調査中)
16:49 3号機の煙に関し、煙量に変更はないが、灰色から白色に変化
18:02 3号機に煙に関し、沈静化を確認
図22 3/21 3号機の煙の様子 共同通信 東京電力提供
また、この煙について、sponichiの記事では次のように書かれています。
東京電力によると、21日午後3時55分ごろ、3号機の原子炉建屋屋上の南東側から煙が上がっているとの連絡があった。煙は黒色で、時折灰色に変わりながら減少。6時ごろに収まった。煙の発生場所は使用済み燃料プールの上側。放水作業のため正門近くにいた東京消防庁の部隊は約20キロ離れた指揮本部に退避。安全が確認されるまで放水活動を中止する。東電の作業員も避難し、復旧へ向けた作業は1日程度足踏みする見通しとなった。原子炉の構造を考えれば、使用済み燃料プール上側ということは、原子炉の上側ということになります。そして、この煙がどういうものかははっきりとはわかりませんが、官邸資料にあるように、灰色から白色に変化したということは、水蒸気が混じっているであろうことは推測できます。
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